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デジタルアーカイブ百景
宮崎──神話とアートの間
笠羽晴夫
 今回の宮崎県では、アートスケープの全国ミュージアムデータベース全館一覧には掲載されてない「高千穂町コミュニティセンター 高千穂町歴史民俗資料館」から入ってみることにする。
 
宮崎県で、その地域ならではのもの、それもある程度古いものを背景にしたものとなると、この高千穂が豊富なようである。細かいところの見栄えはともかく、宮崎県のある地域をいきいきと物語るといえばやはりここの「インターネット仮想展示室」をあげておくべきだろう。
 
時代、神話、宗教、祭り、伝統芸能、民話、伝承、建物、自然など、全体の枠組みと記述がひととおりしっかりとできているから、そこにはめ込まれた画像は今後も意味を持つであろうし、これから追加されるものの位置取りも決まってくるから、それも促進されるだろう。祭りや伝統芸能などは、年毎の模様が記録・追加されている。この地の教育委員会に所属する一人の学芸員が作り運営しているものであるが、ほかのところでもこのような動きが出てこないだろうか。
 
町内の指定文化財という区分で見ると、こういうひとつの地域にかくも多くのものがあるということがわかり、そこからまたさらなる記録、保存という動きにつながることも期待される。より上位の行政機関はこういうところにこそ、画像の高精細化をはじめとするブラッシュアップ予算をつけるべきだろう。
宮崎県立西都原考古博物館
宮崎県立西都原考古博物館
 
県北端の高千穂町に対し、県中央には宮崎県立西都原考古博物館がある。
 
ここでは過去の企画展のポスターが拡大表示できる以外、パンフレットレベルの情報だけかと思ったら、下の方の目立たないところに「収蔵品検索機能」があった。ここで、例えば展示品を検索する場合は、遺物名そのものを直接入れるか出土遺跡名と年代を選択することになる。この選択では「全て」とすれば全部出してもらえるわけであるが、やはりもう少しガイドというか読み物があって、そのなかの言葉をキーにして検索するようにできないものだろうか。決して大きな労力ではないはずである。なお、画像は準備中のようである。
都城市立美術館
都城市立美術館
 次にこの地域の近代美術はどうかと、都城市立美術館を見てみる。
 
カテゴリ別に収蔵品リストが公開されているが、画像は未公開である。収蔵品展の案内などから、有名なところでは瑛九(えいきゅう)(1911-1960)が地域ゆかりの画家であり、そのほか山内多門(1878-1932)などがいることはわかる。ただ、そういうことを含めた館の沿革などがないのはどういうことか。それでも過去の展覧会の記録(主にポスター)などが収録され見ることができるのはよい。あと少しの工夫があれば、この地ならではの近代美術の姿を見せることができよう。
宮崎県総合博物館
宮崎県総合博物館
 それでは県全体を代表する博物館、美術館の状況はというと、宮崎県総合博物館宮崎県立美術館、を見ることになる。
 
博物館に関しては基本的に子供向けの作りであり、自然史、歴史、民俗など展示の概要説明のレベルである。子供向けのものは他県にも多く見られるが、同時に大人向けのものも用意し、そのうえで子供と会話できるようにということを目標とすべきではないのか。ただ過去のQ&Aは整理されており、定期刊行物はダウンロードできる。こういうところから収蔵物のデジタルアーカイブにも進んでいってほしいものである。
 一方、美術館では、デジタルアーカイブとその公開という体裁ではないが、コレクション展の紹介ページから、かなり多くの作品を見ることができる。画像の大きさと品質はいまひとつであるが、瑛九などゆかりの人の作品が多いこともわかるし、この人を含め死後50年未満のものもかなりあるのは評価できる。今後は館としての組織的なデジタルアーカイブを望みたい。
みやざきデジタルミュージアム
みやざきデジタルミュージアム
 実は、ここ宮崎県に関してはネット上に「みやざきデジタルミュージアム」があり、ここで前記の総合博物館、美術館、埋蔵文化財センターなどにある資料を総合し、検索閲覧できるようになっている。
 
これまでに見たように、ある意味では個々にはできないことをまとめて事業化したものかも知れない。
 見るためにはFlash Playerが必要とのことだが、現在ほとんどのユーザーには問題ないだろう。検索画面がキーワード検索のみになっておらず、博物、美術、埋蔵文化財、文化財(建物など)に分かれた後にもう一段階カテゴリが示されているのはよい。美術で、瑛九、塩月桃甫(1886-1954)、山内多門、山田新一(1899-1991)の4人が特にそれぞれひとつのカテゴリとされており、そこから検索すると、数十から数百の項目を見ることができる。ただし、作家の説明は個々の作品解説の最後にリンクされているだけであり、そこに年譜レベルの記述がないのはアンバランスである。トップページあたりにまずこの4人の説明があれば、世の中の一般検索エンジンで作家名がキーワードに入った時にこちらに引っ張って来られるのだが、実験してみると、やはり現状ではうまくヒットしない。またこれらの作品の所在が明示されてないのもどうしたものだろうか。
 なお文書の画像は表紙のみであるが、このデジタルミュージアムはこれからも発展するとのことであり、今後に期待したい。
かごしまデジタルミュージアム
かごしまデジタルミュージアム
 さて、前にあつかった鹿児島市の「かごしまデジタルミュージアム」もこれに似ており、参加している個々の館のデジタルアーカイブは見えないなかで、全体をひとつのデジタルアーカイブ、地域のひとつの像として見せている。
 このように、分散しているものを関係付けて地域のイメージを提示できるところに、デジタルアーカイブの妙味があることは事実である。ただこれが一度できて安心してしまうと、むしろ停滞する危険も内包されている。すなわち、各館のアーカイブには追加変更があり、また収蔵品に関するさまざまな情報は変化するが、それらを反映できるかどうか。これはシステムのなりたち、つまり予算や運営にもよるわけで、関係者の理解が、またそれを促す利用者の要請が、今後ますます重要になってくる。
 宮崎県全体として、高千穂町などの豊穣な過去と近代・現代のアートは直接つながらないかもしれないが、それは今後それぞれのアーカイブ、そしてデジタルアーカイブが充実していくなかで、少しでも見えてくることはありうる。それを期待しよう。
2007年5月
[ かさば はるお ]
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掲載/笠羽晴夫
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