ミュージアムIT情報:影山幸一 04年10月
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ミュージアムIT情報
掲載/歌田明弘|掲載/影山幸一
知と美のネットワークの実現へ
──データ管理のスペシャリスト「インフォコム」

影山幸一
 XMLUnicodeDublin CoreZ39.50*1。これらのアルファベットと数字を見て意味がすぐにわかる人はインターネットに関心が高い人だろう。おそらく多くの人がわからない言葉であろうし、ここからアートを連想する人はいないと思われる。目に見えないサイバー上の決め事である。これらはデータベースに関して、コンピュータ間の相互接続をするための国際標準の用語である。

インフォコムの入っているビル
インフォコムの入っているビル
 サイバー空間の案内役といえるITプロフェッショナル集団のインフォコム株式会社(以下、インフォコム)がある。デジタル情報管理・活用のコンサルティングからインテグレーション・運用までトータルサービスを提供している、データ管理の専門会社である。また、電子図書館のリーディングカンパニーでもあり、国内で唯一の総合的な電子図書館システム構築パッケージ「InfoLib」を開発・販売している。国立国会図書館、東京国立博物館、国立情報学研究所などのほか、140以上の大学がインフォコムのシステムを導入して信頼を得ているが、特に印象的なのは、特定の企業ソフトに依存せず、文頭の国際標準を活用する姿勢に、公開性と共有性を感じることである。

新須哲朗氏と内田智尚氏
新須哲朗氏と内田智尚氏
 図書館・美術館・博物館・公文書館などと、Web上に知のネットワークを構築する夢の実現に向けて動きはじめたと知り、東京・お茶の水の本社を訪ねた。美術館で画像情報を管理する際の注意点などを、ナレッジマネジメント本部の新須(しんす)哲朗氏(以下、新須氏)と内田智尚氏(以下、内田氏)にお伺いした。ナレッジマネジメント本部では、電子文書の管理や検索などにかかわるITソリューションや関連パッケージソフトの販売を官公庁や大学、図書館など、大規模なドキュメント資源を保有している機関や施設を対象に行なっている。政府のe-Japan構想に連動した電子政府、電子自治体、電子図書館 などのデジタルアーカイブを得意領域として、官民を問わない総合ナレッジマネジメント・ソリューションを提供、美術館・博物館へのアプローチが開始されている。

 新須氏はデータ管理の基礎として大事なのは、「保存用」と「公開用」にデータを分散させることであると言う。また、経年変化の少ないデータフォーマットを選択し、ベンダーが変わっても変わることがない国際標準(XML、Unicode、Dublin Core、Z39.50など)を導入することが肝要であると内田氏は指摘する。データ保存媒体については、HDD(動的保存)とDVD-ROM(静的保存)など保存媒体を2種類持つことが望ましい。OSやソフトウェア、ハードウェアの環境変化を見ながら更新する必要がある。セキュリティは、ファイヤーウォールやコピープロテクトを掛けるのは当然として、たとえ改ざんが発覚した場合でも対応できる体制を整えておくことが重要であり、データ管理の分散化が必須になると新須氏は語る。

 SGML・XML対応の超高速全文検索エンジン「OpenText7」や、完全Web対応の文書整理・保存システム「Livelink」など、インフォコムには優れた製品とサービスがある。図書館界から美術館界へ、その広がりは分類整理の歴史のある図書館とは異なる美術館の混沌が潜んでいるであろう。画像作成、著作権処理、シソーラス、メタデータの問題や、司書と学芸員の職能の違いなど、情報化の難しさは技術面ばかりではない。インフォコムのフロンティアスピリットに期待したい。「いつでも、だれでも、どこからでも」図書館・美術館・博物館・公文書館などの館種の領域を超えてデータベースを瞬時に検索し、閲覧・鑑賞できる知の共有システムを可能にするのが、メタデータ(安澤秀一[ミュージアムIT情報2003年10月15日号参照])Dublin Coreやマークアップ言語XML、文字コード体系Unicode、検索プロトコルZ39.50である。国際博物館会議(ICOM)の国際ドキュメンテーション委員会(CIDOC)CRM(Conceptual Reference Model)の動向(村田良二[ミュージアムIT情報2003年5月15日号参照 ])を見据えながら、デジタルアーカイブ画像がネットワークで結ばれていく。知と美のネットワークが誕生する。

システム構築イメージ図 情報の横断利用図
左:システム構築イメージ図/右:情報の横断利用図(*クリックで拡大します)

*1:情報検索のための国際標準プロトコル。1970年代に米国議会図書館を中心とする米国の図書館組織から考案され、現在はISO23950としてISO規格となっている。日本でも1998年に JIS規格として採用された。情報検索におけるシステム間の仕様を統一規格として謳うもの。同プロトコルを採用したデータベースサーバでは、相互間を横断的に検索利用することができる。欧米ではすでに数多くの図書館で目録共通検索に採用されているほか、各国政府の行政情報案内システムなど公共性の強い情報において、Webと同時にZ39.50で情報公開を行なっている(インフォコムホームページより)。

(資料提供:インフォコム株式会社)


■マルチメディア統合検索システムパッケージ「InfoLib」概要
カテゴリー ニーズに合わせて選択可能の5つのパッケージ。電子資料活用ソフトウェア
ラインナップ
(参考価格)
InfoLib-META(マルチメディア統合検索システム、300万円)、InfoLib-BOOK(構造化テキスト全文検索システム、350万円)、InfoLib-EDIT(メタデータ編集システム、300万円)、InfoLib-USER(利用者管理システム、200万円)、InfoLib-Global Finder(Z39.50 横断検索システム、500万円)
特長 1. あらゆる電子資料を対象、2.シンプルで使いやすい各種画面、3. 多数の導入実績、4.Dublin Coreを採用、5.XML、SGML対応、6.Unicode対応、7.超高速検索、8.WWW対応、9.Z39.50対応
動作環境 OS(Sun Solaris8以上、Red Hat Linux V7 日本語版、Miracle Linux V2.1〔2003年6月1日現在〕)、MEM(512Mbyte以上)、DISK(各パッケージ 50-100Mbyte)

■会社概要
会社名:インフォコム株式会社
設立:1983年2月
資本金:15億9,000万円
売上高:322億5,000万円(単体) 331億4,600万円(連結)
従業員数:543名(単体) 825名(連結)
代表取締役社長兼CEO:沼 惇
本社:東京都千代田区神田駿河台3-11
支社・事業所:大阪、横浜、岡山、ニューヨーク
事業:1.モバイルインターネット 2.ライフサイエンス 3.インフォコマース・サービス 4.ナレッジマネジメント 5.エンタープライズ 6.データセンター・サービス
企業理念:優れた情報技術力と創造力により、人間性豊な社会の実現に貢献すること
経営理念:CS(Customer Satisfaction)、ES(Employee Satisfaction)、FS(Frontier Spirit)、PS(Professional Spirit)
(2004年3月現在)

■参考文献
杉本重雄「Dublin Core Metadata Element Setについて──現在の状況と利用例
今門政記「デジタルアーカイブにおけるデータマネジメント」『デジタルアーカイブ白書2003』p.141-145,2003.3.デジタルアーカイブ推進協議会

2004年10月
[ かげやま こういち ]
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