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学芸員レポート
福島/伊藤匡|東京/住友文彦豊田/能勢陽子福岡/山口洋三
街かど美術館 アート@つちざわ
福島/福島県立美術館 伊藤匡
山内宏泰《昔からの関係》
山内宏泰《昔からの関係》
林範親作品
キクヤ薬局内の林範親作品
原田拓《Resonance〜Towa2005》
原田拓《Resonance〜Towa2005》
 近代洋画の鉄人萬鉄五郎の生地であり、巨大な一木造りの成島兜跋毘沙門天立像のある岩手県東和町で、商店街を会場にした展覧会「街かど美術館 アート@つちざわ」が開かれている。東和町の中心地区土澤の商店街77カ所に130人の作家、グループが作品を展示している。倉重光則、真板雅文、高山登、百瀬寿、若江漢字、渡辺豊重の6人の招待作家以外は、プロもアマチュアも関係なく自発的な参加である。
 この展覧会の特徴は、プロとアマの垣根を意識的になくしたことだ。地元のお母さんたちの絵手紙や押し花もあれば、プロの作家のきわめて観念的な作品もみられる。「ありふれたもの」から「とんがったもの」まで何でも受け入れる、そうしないと小さな町でこの企画は受け入れられないという戦略だ。
 端から端まで、普通に歩けば15分程の小さな商店街だ。案内マップはあるものの、作品を見つけるのはなかなか難しい。商店や民家のなかに作品が隠れている。現代のアートが意外なほど違和感なく周囲にとけ込んでいるのだ。そのうえ、商店は間口は狭くても奥が深く、民家は人が住んでいるのかいないのか、外見からはわからない。通りのあちこちに異空間への入口が開いているようなものだ。子供の頃に熱中した路地裏探検と宝探しを合体させたような楽しさだ。昔は銀行だったインフォメーション・センターで借りた自転車で、この企画の仕掛け人の一人、萬鉄五郎記念美術館学芸員の平澤広さんに案内されて見て回った。平澤さんは、屋外展示を希望した作家が少ないことに不満なようだったが、空き家や廃屋、板塀や土蔵の壁に引きつけられる作家が多かったのも、わかる気がする。昭和30年代にタイムスリップしたようなこの商店街のたたずまいが魅力的に映ったのだろう。商店街の人たちは、外来の見物客を暖かく迎えてくれる。そして「どうぞ、見ていってください」と自分の家に展示されている作品を、わが家のお宝のように、やや誇らしげに披露してくれる。東北の小さな町で初めて行なわれるこのイベントが、果たして町の人たちに受け入れられているのか、余所事ながら心配だったのだが、どうやら杞憂だったらしい。初日からの3日間で千人以上の見物客が訪れ、早くも来年も開催したいという声があがっているという(町の人の反応は、同展HPと東和町役場の現役職員のブログ「さだっちょんのドンブラコ岩手生活」を見てください)。
 だが、難問もある。まず、東和町自体が来年一月に隣の花巻市と合併が決まっている。新市となっても、これまで通り独自の活動が続けられるか。そのうえ、百瀬寿のカラフルな作品や、萬鉄五郎の言葉が直に彫り込まれた木塀のある家の一帯は、展覧会終了後に取り壊され、町役場(新しい市の支所ということか)が建設される予定なのだという。中心商店街のあちらこちらに無住の家や空き地があるのは、行政としては大いに困ったことだろうが、一方この古風なたたずまいがなくなると、街の魅力も減ることになりはしないか。

会期と内容
街かど美術館 アート@つちざわ
会場:岩手県和賀郡東和町土澤地区の商店街を中心とした地域77カ所
会期:2005年10月8日(土)〜11月6日(日)
時間:9:00〜17:00
休日:会期中無休
入場料:無料
連絡先 街かど美術館実行委員会事務局
〒028-0114 岩手県和賀郡東和町土沢5-135 萬鉄五郎記念美術館内
TEL. 0198-42-4405

[いとう きょう]
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