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学芸員レポート
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「新開地アートストリート(SAS)〜まちの土地開拓編〜」
期間限定『新開地楽座』OPEN!
神戸/神戸アートビレッジセンター 木ノ下智恵子
『新開地楽座』外観
かふぇ『ラクや!』
『かえっこ』
『イスの散歩』
『楽座講座』都築響一氏
『ザ・話会』
アイデア『ラクダバンク』
上から
『新開地楽座』外観
かふぇ『ラクや!』
『かえっこ』
『イスの散歩』(見学・撮影協力/兵庫県神戸県民局県土整備部)
『楽座講座』都築響一氏
『ザ・話会』
構造銀行『ラクダバンク』
 かつてモダンでハイカラな大衆文化で賑わう神戸文化の中心地だった新開地。神戸の礎と言っても過言ではない独自の歴史と文化が蓄積されているまちは新たに再生しようとしています。『新開地アートストリート(SAS)』は、“人・まち・アート”が出会い共生する魅力的なまちづくりの実験として、アートという非日常がエイリアンのように地域を侵略するのではなく、日常生活に潜む微細な面白いコト(アート)に気付かせてくれるアーティストや研究者などをナビゲータとして位置づけ、景観やモノではなく人々の意識に緩やかな変化をもたらす、ささやかな【アートマジック】を仕掛けています。
 2003年1月〜3月、ファーストステップ「新開地アートブックプロジェクト〜まちの地質調査〜」では、メインナビゲータ/井上明彦氏とプロジェクトチーム曙団(かつて新開地を徘徊していた輩の通称)と共に、様々なフィールドワークやワークショップを実施して『湊川新開地ガイドブック』が完成しました。
 2004年、セカンドステップとなるSASではテーマを【土地開拓】に転化し、まちに縁する様々な人々によって明らかになった魅力を掘り下げる機会となるコミュニティーや仕掛けづくりを目指しました。
 メインナビゲーターには、地域資源、適正技術、協力関係を基盤とした、カテゴリーにとらわれない活動の企画・制作を試みる美術家/藤浩志氏を迎え、【如何にして新開地をもっと楽しむか】をテーマに誰もがそれぞれの関わり方で新しいイメージが造られていく課程を楽しむことが出来る共有空間「新開地楽座」をオープン!
 男性が集う印象が強い新開地ですが、新設されたマンションなどに住まう若夫婦や子ども達など、新たな新開地人達の存在が見えてくるような手づくりの茶店、子ども遊技場、アトリエ・オフィスを設えました。
 茶店『かふぇ「ラクや!」』では、「楠公番茶」や「びりけんジュース」など新開地に縁あるネーミングのドリンクメニューに加え、かつて新開地名物だった「びっくりぜんざい」の復活をめざし、日々、お客様のお話を聞きました。また、近隣のお店から料理のデリバリーを行ったり、新たな新開地名物メニューを模索したりと、食べ歩きの似合う新開地らしく【食】にまつわるくつろぎの場を提案。
 子ども遊技場『かえっこ』と『ヌイグルミシアター』では、いらなくなたオモチャが「カエルポイント」に換算されて、地域通貨ならぬ子ども通貨として交換やオークションが出来たり、ぬいぐるみで埋められたテントで素敵なアニメーションを上映。「新開地は子どもが遊ぶところが少ない!」というリクエストにお答えした結果、平日はリピーターの子ども達、土日は若い親子さん達が訪れ、今まで見えていなかった新たな新開地の顔ぶれが見えてきました。
 『新開地楽座』の核とも言えるアトリエ・オフィス『想造銀行「ラクダバンク」』では、不況のこの世を乗り越える新たなツールとして、お金ではなくアイデアに価値を見出し、気になっていること、面白いこと、やってみたいことなど、その内容が重要かつ現実的か否かに関わらず、自由な発想による新開地をもっと楽しむためのアイデア・イメージを募りました。「子どもの遊び場/キャンプ場を作る」「新開地名物幕の内弁当」「新開地ラジオ体操」「新開地映画/プロモーションビデオ製作」「新開地デートコースの提案」など100以上のアイデアが貯蓄されました。
 さらに会期中には多彩なイベントを実施。
 晴れた日の日曜日には『イスの散歩』と題して、スケッチブックや『湊川ガイドブック』を片手にまちを散策しながら、気になったスポットでイスを構えて、新開地を楽しむためのアイデアスケッチやミーティングを繰り広げ、そのコースの一部には新開地の形成とは切っても切れない「湊川隧道」見学も加わり、先人達の偉業を生で体験しました。
 楽座の営業時間が終わった夜7:00からは『楽座講座』。山形国際ドキュメンタリー映画祭2003参加作品『川口で生きろよ!』の映画監督/村上賢司氏、ユニークな視点で「環境社会システム」を研究・実践する滋賀県立大学助教授/近藤隆二郎氏、『TOKYO STYLE』『ROADSIDE JAPAN』など独自の視点でまちを斬る編集者/都築響一氏らを日替わりでお迎えし、そのユニークな活動や目から鱗な新開地の楽しみ方を聞きだしていきました。
 また、想いを言葉にするために、アイデアを形にするために他者と語らいながら、新開地の楽しみを夢想するミーティングテーブル『ザ・話会』を随時開催。新たなコミュニティーとの出会いを求めて訪れた福祉関係の方や子どもワークショップを準備するアーティストと楽座スタッフが、今、ここに何が求められて、必要なのかについて語り、様々な人のアイデアを元に【いつ、なにを、どこで、どのように、誰と、どんな風に楽しむか】を検討していきました。また、楽座の大顧客=子ども達をクローズアップして『新開地子どもマップ』と『新開地動物園』の2種類のワークショップを実施。
 そして3/28の楽日、オープンから約一ヶ月間の間に『新開地楽座』に訪れた人々によって提案された様々なアイデアの蓄積『想造銀行「ラクダバンク」』をギャラリースペースで披露。様々な想いが展示された空間内に仮説ステージを用意したり、『新開地楽座』内を巡る宴会テーブルを設置して『びっくり大宴会』を催しました。
 椅子を囲んで楽しむ「座」。かつて新開地に多数あった劇場名称の「○○座」。何物にも規定されない自由な交流の場として機能した「楽市楽座」……多様な意味を帯びた【新開地をもっと楽しむための座】は、訪れる人々によって進化するコミュニティースペースとして、日々、楽しみが育まれてきました。人が出会い、時間を重ねることで、まちの人的財産やアイデアという知的財産が開拓・蓄積されました。
 新開地に住んでいる人やこれから住む人、訪れる人々のためのまったく新しいスタイルの「楽しみづくり」は、アイデアの想造(イメージ)からモノ・コトの創造(クリエイション)への実験が始まったばかりです。
 【子ども・シルバー・主婦層対象企画】【映画の街キャンペーン企画】【対象・視点別/まちあるき・マップ企画】などの浮上したキーワードを元に、2004年度、開拓・蓄積されたアイデアの種まきや植樹を試みます。今後の動向にご注目下さい。
会期と内容
●『新開地楽座』2/21(土)〜3/28(日)
「新開地アートストリート実行委員会」事務局(神戸アートビレッジセンター内)
〒652-0811 神戸市兵庫区新開地5-3-14
TEL 078-512-5500 FAX 078-512-5356
http://kavc.or.jp/rakuza rakuza@kavc.or.jp
学芸員レポート
 ちょうど一年前の【学芸員レポート】を読んでみると「新年から3月にかけて私は殆ど職場にいました」というコメントがありました。本年もまったく同様、『新開地楽座』に翻弄!?されておりました。そんな中、一瞬の合間をぬって期間限定で公募されていた『太陽の塔』特別公開に行って参りました。高度経済成長期の真っ直中の国を挙げての一大事業!万博のメインプロデューサーに岡本太郎氏を迎えるなんて、当時の国政はなんてアバンギャルドだったのでしょう。
 時は流れて不況の世の中で芸術文化のあり方も変化し、独立行政法人、指定管理者制度など行政主導の芸術環境にまつわる事情はあまり明るくない印象があります。
ただ、大上段に構えたマスを対象にするのではなく、本来、芸術文化が根ざすべき個々の地域や個人などのπ(パイ)に関与することを視野に入れた時、そこにある状況を好転させる知恵袋が育まれるように思います。
 【まちネタアート企画】というと、まちを舞台にした展覧会が一時期は主流でしたが、主語を【アート】ではなく【まち】に設えたとき、自ずと企画の流れは後に続いて形成されていきました。
 『SAS』は、昨年、地質調査=フィールドワーク(ガイドブック制作)、本年、土地開拓=コミュニティースペースの運営(アイデア蓄積)と、本来は企画準備に値するような様々な事項をプロジェクト・プログラム化しております。
 三人居れば文殊の知恵ではありませんが、私一人の視点ですべてを検討・決定するのではなく、まちというインフラの生態系をあらゆる角度から多視点で捉えることが最適と捉え、その為のささやかな仕掛け・仕組み・きっかけづくりをアーティストや研究者といったナビゲーターの方々と共に実践しています。
 【まちづくり】という大きなお世話!?ではなく、めまぐるしく変化するまちの様相と共に人×まち×アートの実験として様々な試みを展開すべく、新年度が始まりました。
[きのした ちえこ]
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