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学芸員レポート
札幌/鎌田享|青森/日沼禎子大阪/中井康之山口/阿部一直
二つの大学美術課程が誕生──札幌市立大学&北海道教育大学
札幌/北海道立近代美術館 鎌田享
 今春北海道に、美術を学ぶ二つの大学課程が誕生しました。今回は展覧会についてではないのですが、今後、北海道のアート・シーンに大きな影響を与えそうなこの話題についてレポートします。
 ひとつ目の大学は、札幌市内に開学した札幌市立大学。こちらは以前からあった看護師養成のための札幌市立高等看護学院とデザイン分野の教育をする札幌高等専門学校を、発展的に統合して新規開学したものです。札幌市はこれまで、全国の政令指定都市の中でも公立大学を設置していない数少ない都市のひとつ。その札幌に誕生した待望の市立大学は、前進校を継承して看護学部とデザイン学部の2学部からなります。看護とデザインという異分野をつなぐキーワードが〈人間重視〉。看護もデザインもともに、人々の日々の生活により直接的に関わっていく領域。二つの分野が相互に影響を与えることで、想像力や創造力を生かした看護と、使用者への配慮を最重要課題としたデザインを目指しています。
 このような教育理念のもとに出発した札幌市立大学ですが、当初から課題も指摘されています。ひとつは、看護とデザインの相互交流が実際にはどのような教育プログラムによって実現されていくのかという点。物理的にも、看護学部とデザイン学部は、札幌中心市街地と南部郊外という距離的に数キロ離れた二つのキャンパスに分散配置されています。専門課程に進めば進むほど両学部の学生や教員が顔を合わせる機会は、減少していくことでしょう。もうひとつの課題は、とりわけデザイン学部において、前進の札幌高等専門学校の教育成果をどう継承していくかということ。高等専門学校では、高等学校課程相当3年+短期大学課程相当2年、さらに希望者にはその上級課程として専攻科2年を設けていました。最長7年間にわたる長期間、かつ中学校卒業後の比較的早期から、デザイン教育を一貫して行なうことができたわけです。こうした市立高専の利点に対して、市立大学がどのような独自のアプローチとプログラムを実現していくのか注目されます。
 二つ目の大学は、札幌の北東約40キロの岩見沢市にある北海道教育大学岩見沢キャンパス。北海道教育大学は教員養成を主目的として開設されたもので、広大な北海道の地理的特長を反映して、札幌・旭川・函館・釧路・岩見沢の道内主要都市に5つのキャンパスを有しています。それが昨今の国公立大学再編の流れを受けて教育課程を改編。教員養成課程は札幌・旭川・釧路の3校に集約し、函館には福祉分野や環境科学・国際交流・地域計画などについて学ぶ人間地域科学課程が、そして岩見沢にはスポーツ教育課程と芸術課程が置かれることになりました。
 岩見沢キャンパスの芸術課程には、音楽、美術、芸術文化の3コースが開設。このうち美術コースは、絵画・彫刻・工芸・メディアデザイン・書に加えて先端的な美術制作を目指す実験芸術専攻が設けられました。また学内には新たな制作拠点として、大規模な工房機能を持つファクトリー棟という施設も建設されています。一方の芸術文化コースは、芸術理論・芸術教育・アートマネジメントの各専攻からなります。とりわけアートマネジメントを体系的かつ実践的に学ぶことは昨今注目されてもおり、今後道内のさまざまなアートプロジェクトや美術館との連携を含め、その教育活動に期待が持てます(私が勤める美術館との長期連携プログラムも、来年度からスタートします)。
 この春に新入生を迎えスタートしたばかりの二つの大学。どのような活動がなされ、どのような人材が生まれてくるのかはまだまだ未知数ですが、5年後10年後が楽しみです。
札幌市立大学デザイン学部 芸術の森キャンパス
札幌市南区芸術の森1丁目
Tel.011-592-2300

北海道教育大学岩見沢キャンパス
岩見沢市緑が丘2-34
Tel. 0126-32-0250
[かまた たかし]
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