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学芸員レポート
<新執筆陣>
札幌/鎌田享青森/立木祥一郎福島/伊藤匡東京/住友文彦豊田/能勢陽子大阪/中井康之
山口/阿部一直
<旧執筆陣>
札幌/吉崎元章福島/木戸英行|東京/増田玲|東京/南雄介神戸/木ノ下智恵子高松/毛利義嗣
福岡/川浪千鶴
ドイツ現代写真展/「森山・新宿・荒木」展/「サイト・グラフィックス―風景写真の変貌」展
東京/東京国立近代美術館 増田玲
2005年担当の企画および抱負
 2005年と2006年は「日本におけるドイツ年」ということで、さまざまなドイツ関連の催しが予定されていますが、その一環として、ドイツの現代写真を紹介する展覧会を、東京国立近代美術館で開催することとなりました。この展覧会はミュンヘン、ピナコテーク・デア・モデルネ写真・ニューメディア部門のキュレーター、インカ・グレーヴェ・インゲルマン氏が中心になって企画、受け入れ側の担当として、現在連絡を取り合いながら準備を進めているところです。
 ドイツの現代写真といえば、デュッセルドルフ美術アカデミーのベッヒャー教室に学んだ写真家たちの活躍が90年代以降、写真のみならず現代美術の分野で注目を集めてきたことは周知の通りです。今回の展覧会では、ベッヒャー夫妻やアンドレアス・グルスキーといったいわゆるベッヒャー派の仕事を紹介する一方で、それ以外のドイツの写真家の仕事にも注目していきたいと考えています。ベッヒャー派の写真家たちは、その洗練された方法論により、国際的な評価を受けたわけですが、考えてみれば、90年代とはドイツにとって東西の再統一という激動の時代でもありました。その社会的変動、歴史的転期においてドイツ社会が経験したさまざまな問題は、冷戦構造が崩壊しグローバル化が進展した今日、ドイツに限らず世界中が直面する問題と同質のものであったとも言えます。そうした意味でも、今、ドイツの写真家たちの仕事に注目する意味はあるのではないかと思います。
 今回はほとんど日本では紹介されていない若手の写真家たちも含め、8人から9人の写真家の仕事を紹介する予定です。10月から12月にかけて東京で開催した後、2006年に入って京都国立近代美術館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館にも巡回しますので、お近くの方はどうぞご覧ください。なお東京展の会期中には、もうひとつドイツ写真関連の小企画を予定しているのですが、まだ未確定要素がありここでは書けません。乞うご期待!
 
2005年の気になる展覧会、動向
 2004年は、奈良原一高(東京都写真美術館)、宮本隆司(世田谷美術館)、牛腸茂雄(新潟市美術館他)、安井仲治(渋谷区立松涛美術館)、ヴォルフガング・ティルマンス(東京オペラシティアートギャラリー)、ラリー・クラーク(ワタリウム美術館)、そして僭越ながら僕の担当した木村伊兵衛(東京国立近代美術館)と、思いつくままにあげてみても新旧、内外とりまぜて多くの写真家の個展が開催された年でした。いずれも見応えのある充実した内容の企画で大いに勉強になり、また刺激も受けましたが、2005年にも注目すべき写真展が準備されているようです。
 まずは年明け15日、オペラシティで始まる「森山・新宿・荒木」展、森山大道と荒木経惟の仕事を、そのホームグランドともいうべき新宿をテーマに紹介する(対決させる?)展覧会で、これは写真に関心のある人にとってはまず見逃せないものと注目しています。おおむね60年代末から70年代の初頭あたりが、今日まで続く現代の写真表現への画期となったとすれば、二人ともそれ以降今日に至るまで、同時代の日本の写真界に大きな影響を及ぼしてきたことは間違いないところですが、それ以前の世代の写真家が銀座を「根城」としていたのに対して、70年代以降、写真家たちの「根城」が新宿に移り、自主ギャラリーなど写真をめぐるいろいろな出来事が新宿周辺で起きてきたということを考えると、二人の写真家の名前の間に「新宿」という地名を挿入するのは、これがひとつの写真史的視点を備えた展覧会でもあることを示唆しています。
 また翌週には川崎市市民ミュージアムで「サイト・グラフィックス―風景写真の変貌」展が始まります。こちらはデジタルテクノロジー時代の写真家たちの風景へのアプローチに新たな視点を拓こうとする、同館の写真キュレーター深川雅文氏による意欲的な企画。「サイト・グラフィックス」は深川氏による造語で、すでにいくつかの機会でこのタームを手がかりにした論考が発表されています。ここでいう「サイト」とは、「歴史的な意味をはぎ取られた『中世的で無差別的な』場」であり、そうした「場」へのアプローチに、写真表現の転換の兆候を読み取ろうという深川氏の試論が、今回は展覧会というかたちで呈示されることになります。
 この二つの展覧会は、60年代末から70年代初頭に始まったひとつの流れが、21世紀を迎えた今日、次の局面に移行しつつあることを、多くの意味を孕んだ「新宿」という地名を巡る二人のベテラン写真家の仕事と、「『中世的で無差別的』な場」を巡る若手の写真家たちの仕事という対照的なアプローチによって浮き彫りにすることになるのではないかと期待しています。
[ますだ れい]
<新執筆陣>
札幌/鎌田享青森/立木祥一郎福島/伊藤匡東京/住友文彦豊田/能勢陽子大阪/中井康之
山口/阿部一直
<旧執筆陣>
札幌/吉崎元章福島/木戸英行|東京/増田玲|東京/南雄介神戸/木ノ下智恵子高松/毛利義嗣
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