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学芸員レポート
―1/15号掲載ー
札幌/鎌田享青森/日沼禎子福島/伊藤匡|東京/住友文彦|東京/南雄介豊田/能勢陽子福岡/山口洋三

―2/1号掲載―
東京/岡塚章子東京/関次和子大阪/中井康之神戸/木ノ下智恵子高松/毛利義嗣山口/阿部一直
越後妻有トリエンナーレ/美術系大学の再編/日豪交流年の国際展/AIT
東京/NTTインターコミュニケーション・センター(ICC) 住友文彦
2006年の気になる展覧会、動向
 他館の動向には疎いかもしれないので、きちんと把握したうえで選んでいるわけではないですが、越後妻有トリエンナーレが楽しみです。震災の影響も心配されているなかで、逆に土地に根ざした展覧会の真価を発揮するような気がします。作品の設置だけではなく、古い家屋の修復プロジェクトや、森の学校「キョロロ」など、トリエンナーレ開催時期以外にも行なわれているプロジェクトが重要な役割を果たしていくのではないでしょうか。そして、あの素晴らしい自然環境のなかでアートの話をゆっくりできる奇跡的な時間を持てるのが楽しみです。
 あとは、いろいろなところで耳にする美術系大学の再編の動きも気になります。自分が働いている「業界」を支えているところで何がおきているのか。私も多少は関係しているので他人事ではないのですが、少子化対策で生徒数を奪い合うために看板の架け替えや大学に来ない著名人を呼ぶなどして、学生が翻弄されているような気がします。もうやや古い話ですが、アートマネージメントを掲げるコースが目に付いたときも、仕事としては必要だが、学問として必要なのか、など疑問を感じました。むしろ、実際の作品のプロダクションや展覧会を大学で本気でやればいいのではないでしょうか。いくつかそういう事例は聞きますが、上野の大学美術館にしてもきちんと運営から企画まできちんと考えられているようには見えません。
 大学もたくさんあり、展示する場所もありますが、教育や展覧会だけでなく、アーティストが作品のプロダクションを行うためのサポート体制や制度がもっと充実するとよいのではないかと思います。制作の環境を与えることや、蓄積されたリソースと様々な専門性を生かした調査に協力するなど、おそらく大学は、そういった活動においても重要な役割を果たす可能性があるでしょう。
2006年担当の企画および抱負
 まだこの原稿を書いている時点では、来年の仕事については不明瞭な状態です。とりあえず、しばらくは休館中で、今後のICCの運営方針はまだ定まらないまま2006年を迎えています。どちらかというと、何が起きるか分からないところに置かれること自体に非日常的な面白さを見出せるほうなのですが、そうとばかりは言えず、何ができるのか模索しています。
 別の仕事については多少記すことができます。秋にオーストラリアで、日本のアーティスト約20名が参加する展覧会を行ないます。メルボルンにある複数のアートスペースで同時多発的に作品が展示され、トークなどのイベントも実施される予定です。
 これは日豪交流年の一環として国際交流基金が主催する事業で、これも昨年いろいろと話題になった「国際展」のひとつの形態だといえるでしょう。「国際的」なアーティストを集めるのではなく、博覧会型のショウケースとして繰り返されてきた「日本美術」展に位置づけられるわけです。ゆえに、刺激的なテーマによって独自性を謳うことも、配慮の行き届いた全方向的な展示も避けたいと悩まざるをえない。その結果考えたのは、「日本」の現代美術を提示するという不可能な課題に対し、<提示>ではなく<応答>を目指す方法をとるという手法です。企画者側の意図に沿って作品を並べてイベントとしての展覧会を仕立てる方法をできるだけ解体し、見解の相違も含めた自分の解釈や意識とは別の何かが入り込む対話的な企画を試みたり、展覧会だけではなく前後の持続的な交流の可能性を重視する、という実に手間のかかるものになりつつあります。具体的には、まず企画者に私を含んだ3名のキュレーターと、新聞記者、社会学者、建築評論家、それにオーストラリア側のキュレーター、アーティスト、編集者など総勢15名ほどが関わっているので、連絡や調整だけでも大変です。また、参加するアーティストにはアーティスト・イン・レジデンスで制作や調査をしてもらったり、現地関係者に作品の理解を深めてもらうことにも力点を置いています。そのため、企画は思わぬ蛇行をたどることにもなるのですが、プロジェクトコンセプトの根幹をなんとか見出しつつあるので、あまり特色が薄まる企画にならないよう、そろそろ深みに入るための対話にシフトするべき時期に来ています。そのプロセスをオープンにする意味でも、年明けには関係者による小規模な公開ディスカッションを行なう予定でもありますので、ぜひ関心のある方にはご参加いただきたいと思います。
 それ以外には、NPO団体のAITでは、まず3月のバングラデッシュ・ビエンナーレへの日本からの参加として藤浩志さんと照屋勇賢さんに参加してもらう企画を行なっています。これは国内でも報告会をする予定です。それと、同じく3月にパナソニック・センターで「アートとコミュニティ」をテーマにしてたイベント、レクチャー、ワークショップを行う予定です。
 また、オルタナティヴスペースでありながらソウルに新しい地下1階3階建のビルをオープンさせたLOOPで行われる展覧会に日本のアーティストを紹介したり、企画に関わっていたりします。お隣の韓国、それと中国も現代美術をサポートする環境はかなり整いつつあり、大きな変化を遂げているような気がします。お隣の活況をみて、なんとか中国語を覚えたいと思いつつも、先日成都で買い込んだ香辛料と合わせるための食材のアイディアばかり考えています。

というようなことを考えて仕事をしていますが、今年もどうぞ皆様よろしくお願いいたします。
[すみとも ふみひこ]
―1/15号掲載ー
札幌/鎌田享青森/日沼禎子福島/伊藤匡|東京/住友文彦|東京/南雄介豊田/能勢陽子福岡/山口洋三

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