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学芸員レポート
<新執筆陣>
札幌/鎌田享|青森/立木祥一郎|福島/伊藤匡東京/住友文彦豊田/能勢陽子大阪/中井康之
山口/阿部一直
<旧執筆陣>
札幌/吉崎元章福島/木戸英行東京/増田玲東京/南雄介神戸/木ノ下智恵子高松/毛利義嗣
福岡/川浪千鶴
「熊谷守一展」/ミュージアムの運営形態や活動内容の問題
青森/青森県文化観光部文化振興課美術館グループ 立木祥一郎
2005年担当の企画および抱負
 青森県立美術館は、今年9月に竣工し、コンクリートからの湿気やアルカリを抜くための養生期間をへて来年7月開館するのだが、竣工後、開館まで、作品が何も入っていないという期間が10カ月もある。こうした美術館独特の建築スケジュールに注目。
 この養生期間を生かし、バックヤードを含めた美術館の建築空間をフルに活用し、7時間にもおよぶ演劇『津軽』(原作・太宰治)を展開する。作・演出は、弘前劇場を主宰し、県立美術館の舞台芸術担当プロデューサーである長谷川孝治。この今年12月に予定される演劇は、長時間におよぶために上演中には、小説「津軽」から想起された青森の食材を用いた食事も供される。舞台と客席がボーダレスとなりながら、開館前の作品展示前の美術館の空間でしか上演できない画期的な演劇公演となるはずだ。
 この機会に来年、開館記念展についても書いておきたい。開館展は「アメリカのシャガール」(仮題)展を予定している。ユダヤ人であるシャガールが、第2次世界大戦中、アメリカに亡命時に手がけ、青森県立美術館が収蔵するバレエ《アレコ》(1942)の舞台背景画を中心に、《アレコ》上演時の舞台衣装やグアッシュをはじめ、シャガールの亡命時代を考えるうえで重要な数々の油彩の秀作を世界中から集めて展示し、画家・マルク・シャガールの新たな魅力を浮かび上がらせるというもの。青森県立美術館が収蔵するバレエ《アレコ》第一幕、第二幕、第四幕とフィラデルフィア美術館が収蔵する第三幕を同時に展示するという試みは、この展覧会で史上はじめて実現するものであり、半世紀ぶりに全4点が邂逅することになる。地下に展開する展示空間に高さ約9m、幅14mの巨大画面4点から放たれるシャガールの色彩は、これまでの美術展の概念を超越した前代未聞の展覧会になる!と思う。
 
2005年の気になる展覧会、動向
 考現学を創始した今和次郎や、築地小劇場の小山内薫というモダニストたちから、棟方志功、工藤哲巳、斉藤義重、川島雄三、寺山修司、澤田教一、相米慎二、奈良美智。そして忘れてならないのは、ウルトラマンやバルタン星人などの怪獣デザインを創造した成田亨。青森県という土地と結びついたアーティストには、とにかくカッティング・エッジな鬼才だらけである。とにかく青森という土地では、日本史を塗り替えた巨大縄文遺跡「三内丸山遺跡」に象徴されるように、日本の最古層の文明の上に、今の人々が共生している感じなのである。美術館の準備事務所で働いている若いスタッフが、「こどものころ、三内丸山あたりに住んでて、よく畑掘っては縄文土器くみたてて遊んでましたヨ」などとこともなげに言っているのを聞くにつけ、こういう土地から、鬼才がでてくるのも無理からぬことと思わずにはいられない。それはあたかも、考古学の視点で現在を切った考現学がいまだにアートの前衛にリファレンスされ続けているのと似ているかもしれない。
 さて、青森県立美術館は、2006年7月開館。 美術館が建設されるのは、青森市内、三内丸山遺跡に近接したゾーン。地上2階地下2階。総床面積約16000平米。地下1、2階には、マルク・シャガールの舞台背景画《アレコ》3点を展示するための21m四方、高さ19mの巨大な展示空間を中心にして、棟方志功や工藤哲巳、成田亨、奈良美智などのコレクションの常設展示室や企画展示室が配される。作品や展示のための造作なども可能なアトリエなどもこのフロアに設けられる。建築の設計は393作品におよぶ作品公募を受けた画期的な設計コンペにより最優秀に選出された青木淳。この歴史的に重要な意味をもった縄文遺跡の発掘現場のトレンチ(壕)からイメージされた土の凹型に逆凸型の建築が、かみ合わない歯のようにぶら下がる。凸型の建築の内部には、ホワイトキューブの展示空間が展開するとともに、トレンチと建築構造の隙間に出現した空間を展示空間とする設計コンセプトをもつ。ホワイトキューブというグローバル・スタンダードな展示空間を確保する一方で、隙間という建築機能を超えた展示空間を想定することにより、アーティストが、この独特の空間ならではの創造を展開することが期待される。
 今年は、ソウルで展開する奈良美智プロジェクトやら、逆に韓国映画を、竣工した美術館のシアターで上映するプロジェクトなどを担当。あとは来年開館に向けた準備準備に明け暮れる。

プロフィール
青森県立美術館学芸員。川崎市市民ミュージアムで、旧ソ連の映画スタジオに封印された映画群を発掘したレンフィルム祭など映像企画を手がける。1994年から青森県美術館準備に携わり美術館設計競技、基本・実施設計等を担当。「キッズアートワールドあおもり2001」
、のべ3500人のボランティア・スタッフにより開催された「奈良美智展弘前展」などのキュレーションを担当。2003年、奈良展弘前実行メンバーとNPO法人harappaを設立する。
[たちき しょういちろう]
<新執筆陣>
札幌/鎌田享|青森/立木祥一郎|福島/伊藤匡東京/住友文彦豊田/能勢陽子大阪/中井康之
山口/阿部一直
<旧執筆陣>
札幌/吉崎元章福島/木戸英行東京/増田玲東京/南雄介神戸/木ノ下智恵子高松/毛利義嗣
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