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学芸員レポート
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Out of the Ordinary: Spectacular Craft/Anthony McCall/Louise Bourgeois
エイヤ=リーサ・アハティラ
香川/植松由佳(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
  2月3日から企画を進めてきたフィンランド人映像作家の展覧会「エイヤ=リーサ・アハティラ」が開催されるが、そのアハティラの大規模な個展がパリのジュ・ド・ポーム国立美術館で始まることもあり展覧会準備の合間をぬってパリに行ってきた。その前にまずはロンドンに降り立ちいくつか展覧会をまわったのでそのなかからレポートを。

須田悦弘
V&Aでの須田悦弘の作品(左下)
 ビクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム(V&A)で開催中のグループ展「Out of the Ordinary: Spectacular Craft」。彫刻や縫うこと、アニメーションとレーザー・エッチングの接合などといった伝統的あるいは斬新な手法を、その優れた技と微細に及ぶ注意深さにより紙や繊維、針といった極めてありふれた素材を使用しながらも新たな方向を示す作品を制作している8名の作家による展覧会であった。2005年11月から2006年3月にかけて金沢21世紀美術館で開催された「Alternative Paradise〜もうひとつの楽園」展で、髪の毛を糸のように用い布に縫いつけ私的な強度を持つ「髪」と「縫う」という繊細な行為が濃密な空間を生み出していたアメリカ人アーティストのアン・ウィルソンや日本からは須田悦弘が出品していた。須田と言えば、本物と見分けがつかないほどの精緻さで植物を模した木彫を、思いがけないような場所に設置することでその展示空間を意識させることで知られる作家である。丸亀市猪熊弦一郎現代美術館でも2006年夏に個展を開催し、展示室に生えた108本の《雑草》が大きな話題となったことは記憶に新しい。須田は《木蓮》(2007)で、2006年大阪・国立国際美術館での展覧会「三つの個展」に出品した時と同様のインスタレーション方法をとり、展示室内に白い通路状のスペースを設け、その奥に密やかに可憐に咲く木蓮の白い花が印象的な空間を作り出していた。またこれとは別に同企画展の展示スペースとは別な空間に忍ばせられていたのが《雑草》(2006-2007)である。前述のように、須田の特徴は、作品制作の際に見せるまるで本物そっくりに思えるほどに素材の朴の木を彫る技術の高さと、それ以上に彫り上がり着色された作品をどのような場所に展示するか、という点にある。V&Aでは企画展示室を離れ、エントランスのインフォメーション・デスク上に位置するとある場所(ロンドンに行く機会のある方はぜひ見つけて欲しい)に展示していた。展示室内の作家紹介パネルに、須田の他の出品作品の展示場所についてはミュージアム・スタッフに尋ねるように、と指示があったのはその作品の魅力を半減させるようでもあり残念でもあったが、スタッフに聞き作品を指さしながら大声をあげて談笑する外国人グループを見るにつけ、須田作品のような場合の観客の促し方を改めて考えさせられた。日本でも近年“工芸”と“美術”の領域が問われる展覧会が多く催されているが、同様な試みが海外でも見られることは興味深い。
 またサーペンタイン・ギャラリー(Serpentine Gallery)で開催中のイギリス出身で現在はニューヨーク在住のアーティスト「アンソニー・マッコール(Anthony McCall)」展。《Solid Light Installation》と題されたシリーズ作品では、映像の原理を用いたインスタレーション作品が展開され、かすかな霧が真っ暗な展示室に漂う中、観客が光のヴェールと戯れていた。ビデオプロジェクタを用いて対する壁に線状化した光を投影することで幾何学模様の像を描き、プロジェクタと壁の像との間に生じる投影光を霧に反射させることで光のヴェールが発生。壁面に投影される二次元の像のドローイングと光の三次元部分による絶妙のインスタレーションは観客を独特の世界へと誘うことに成功していた。
 そして文末になってしまったが、なによりもテイト・モダン(Tate Modern)での「ルイーズ・ブルジョア(Louise Bourgeois)」展が印象深いものであったことを記しておきたい。

Out of the Ordinary: Spectacular Craft
会場:ビクトリア・アンド・アルバート・ミュージアム(V&A)
会期:2007年11月13日(火)〜2008年2月17日(日)

アンソニー・マッコール(Anthony McCall)
会場:サーペンタイン・ギャラリー(Serpentine Gallery)
会期:2007年11月30日(金)〜2008年2月3日(日)

ルイーズ・ブルジョア(Louise Bourgeois)
会場:テイト・モダン(Tate Modern)
会期:2007年10月10日(水)〜2008年1月20日(日)

学芸員レポート
エイヤ=リーサ・アハティラ《The Hour or Prayer》(2005)
エイヤ=リーサ・アハティラ《The Hour or Prayer》(2005)
14min 12sec
DVD-installation for 4 projections, 4:3 sound DD 5.1, original language English Coutesy of Marian Goodman Gallery. New York and Paris
(c) 2005 Crystal Eye - -Kristallisilme Oy
 今回の主目的はパリでの「エイヤ=リーサ・アハティラ」展にあり、丸亀で出品予定の映像インスタレーション2作品《The Hour or Prayer》(2005)と《Fishermen/Etude no.1》(2007)はもちろんのこと、今回の展覧会にあわせて制作した新作《Where is Where?》(2007)への期待も大きかった。その期待は裏切られることはなく1時間近くにも及ぶ大作ながら作品の持つメッセージ性の強度、映像表現の完成度の高さに圧倒された。《Where is Where?》はアルジェリア戦争中に起こったアラブ系少年による白人少年の殺人事件に題材を取り、死、そして時代を超えて繰り返される西洋とアラブの衝突によって引き起こされる惨劇が合計6面のスクリーン上に展開される。過去の作品に比べ、社会的要素が表現に加わり、今後のアハティラの方向性がますます楽しみである。2月からの丸亀での展覧会は2006年に開催された「スティーブ・マックィーン──Caresses[愛撫]」に続くシリーズ第2弾の企画展であり、「FOCUS」と名づけられたこのシリーズは通常は常設展示に用いているギャラリーの1室を展示スペースとして実施するもの。小規模ではあるが、非常に緊密な空間で繰り広げられる展覧会をぜひお見逃しなく。

FOCUS2:「エイヤ=リーサ・アハティラ」
会期:2008年2月3日(日)〜3月23日(日) *会期中無休
会場:香川県丸亀市浜町80-1/Tel.0877-24-7755

[うえまつ ゆか]
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