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学芸員レポート
北海道/鎌田享金沢/鷲田めるろ|香川/植松由佳|福岡/山口洋三
瀬戸内国際芸術祭/シェルター×サバイバル
ピピロッティ・リスト
香川/植松由佳(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
 2010年。少し気の早い話ではあるが、「ベネッセアートサイト直島」として地中美術館や家プロジェクト、ミュージアムで知られる直島を中心として瀬戸内国際芸術祭の開催が、同年夏から秋にかけて予定されている。皆さんがこのレポートを読まれる頃には香川県知事を実行委員長、総合プロデューサーに財団法人直島福武美術館財団理事長でもある福武總一郎ベネッセコーポレーション会長、そして総合ディレクターには越後妻有アートトリエンナーレの総合ディレクターであり、また地中美術館館長代理も務める北川フラム氏などが名前を連ねる実行委員会も正式に設立されていることと思う。詳細については今後改めてレポートできればと思うが、断片的な情報しか得られていない段階ながらも、直島を始め豊島、女木島、男木島、小豆島、犬島といった瀬戸内海に浮かぶ島々(主に香川県)を舞台に、島々の固有の文化や歴史を生かしながら作家や建築家と協働する芸術祭を目指すということで、どのような内容になるのか非常に楽しみなところである。
 4月27日には芸術祭の会場のひとつである犬島にアートプロジェクト「製錬所」がオープンする。犬島は香川県の向かい岡山に位置する犬島諸島唯一の有人島で、良質な花崗岩産地としても知られ、1909年から銅価格が大暴落するまでの約10年間一時的に精錬の島として発展するが、現在はカラミ煉瓦造りの工場跡や煙突のみが往時をしのばせる。経済産業省から「近代化産業遺産」としても認定されている旧精錬所の跡地を活かし、環境に負荷を与えない三分一博志による建築と、犬島プロジェクトをライフワークとして位置づけてきた柳幸典による作品が、三分一とコラボレートすることを前提に展示されるとのこと。また岡山大環境理工学部の協力を得ての環境システムの取り組みなど「循環型社会」のモデルとなる建築物を目指すとのことであり、福武氏が表明する「在るものを活かし、無いものを創る」という芸術祭のコンセプトが呈示されることにもなるだろう。
 また今後、産業廃棄物問題で知られる豊島にも西沢立衛による建築設計に内藤礼の作品が展示されるという新美術館の計画も進行中とのことである。近代化という大きなうねりのなかで、直島、犬島そして豊島にも見られる影の部分も含めた歴史や文化とアートがどのように結びついて昇華し芸術祭として開催されるのか。2年後を期待したい。
瀬戸内国際芸術祭 瀬戸内国際芸術祭資料より
 すでにこのコーナーでは広島市現代美術館の角さん山口情報芸術センターの阿部さんも既報の広島市現代美術館で開催された「シェルター×サバイバル」展。担当展の都合などからなかなか足を運べなかったのだが、最終日にようやく観ることができた。詳細については前述二人のレポートを参考にされたいが、この展覧会が広島という地で開催されたことの重要性を強く感じ、最後に一言記したいと思う。
 ついつい他人事として捉えがちだが、私たちの日常には自然災害や紛争といった非常事態が潜んでいると言って過言ではない。そうした問題や危機からいかにサヴァイヴし、再生をはかるのか。アートはその状況にどのように対処することが可能性か、同展には17組のアーティストたちによる提案が作品により示されている。今からたった63年前に原爆投下により一瞬にして焼け野原となり、世界初の被爆地となった広島。人々が原子野から立ち上がり、見事に再生を果たした街で開催された展覧会のこのテーマ設定は、客寄せが主目的の展覧会ではなく、地方の公立美術館が開催すべき展覧会の在り方のひとつとして見事に示されていたように思う。

●シェルター×サバイバル──ファンタスティックに生きる「もうひとつの家」
会期:2008年2月16日(土)〜4月13日(日)
会場:広島市現代美術館
広島市南区比治山公園1-1/Tel.082-264-1121

学芸員レポート
Captions images Pipilotti Rist
#IN0503 LIBERTY STATUE Löndön
all pics in subfolder Fotos_Hugo Glendinning

A Liberty Statue for Löndön, 2005, audio video installation by Pipilotti Rist, 2005 (installation view at Hauser & Wirth London/GB; photo by Hugo Glendinning)
Courtesy the artist and Hauser & Wirth Zürich London
 昨年秋、原美術館(東京)で「からから」と題した個展を開催し好評を博したピピロッティ・リスト。同展は意外にもリストにとって日本の美術館では初となる個展であったが、今夏7月13日から10月13日まで丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(MIMOCA)でも個展が開催されることとなり現在準備を進めている。
 原美術館では、ミュージアムというパブリックでありながらも個人の旧宅跡という、よりパーソナルな空間が展示構成に上手く取り込まれ、スペースを活かしたビデオ・インスタレーションの作品展示がなされていた。また《エヴァー イズ オーヴァー オール》(1997)といった代表作から、昨年パリのポンピドゥー・センターの建物前広場の地面に夜間映し出され評判となった《星空の下で》(2007)といった最新作まで、回顧的にリストの作品を辿ることができる内容でもあった。
 今回の丸亀展では、まったく異なるコンセプトにより作品が選ばれ今年6月のArt Basel、Art Unlimitedにも出品予定の《A Liberty Statue for Löndön》(2005/2008)を中心に計6点を展示予定。企画展示室空間全体を用いた作品からは、鑑賞者の身体の可能性をも探求することができるものとなることだろう。本展も丸亀会場のみの開催。ぜひお見逃しなく。

●ピピロッティ・リスト展(仮称)
会期:2008年7月13日(日)〜10月13日(月)
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
香川県丸亀市浜町80-1/Tel.0877-24-7755

[うえまつ ゆか]
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