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SIGGRAPH2003―Art Galleryを中心に、サンディエゴから―
影山 幸一
▲《OmniGlobe》(c)David Hilligoss, Jonathan Lang, Thomas Ligon /ARC Science Simulations Inc., SIGGRAPH2003
▲《The Walk-Through Fog Screen Experience》 (c)Jan Land Kammer, Karri Palovuori, Mika Piirt/Tampere University of Technology, SIGGRAPH2003
今回Art Galleryのメイン会場となったのは、体育館のように広いRoom6A-Bであった。デジタル技術による先進的なインタラクティブ作品を展示するセッションのEmerging Technologiesとの同一会場で、Art GalleryとEmerging Technologiesの区別なく薄暗い空間にランダムに作品が配置されていた。会場に入って最初に目に入るのは、球状の映像ディスプレーを使用した作品《Omni Globe》と霧のカーテンに映像が映る《The Walk-Through Fog Screen Experience》。意識して見ないとどちらのセッションの作品なのか見分けがつかないが、思いのほか日本の出展作品が目立っていた。それはArt Gallery作品ではなく、Emerging Technologiesに出展されている21作品のうちの8作品(*1)の日本からの作品であったのだ。この中で人気があったのは《Sumi-Nagashi(墨流し)》である。デバイスのペンを筆に見立てて、プロジェクター表示されている平面に自由な色で絵を描くのだが、出来上がった絵を“指定する水の流れ”に従って流し、希望するところで止める。すると美しいマーブル模様風の作品に仕上がる。絵を描けない人もみな描画の楽しさを味わえ、体験できるという絵画製造マシン。作品をプリントアウトしたりバッジにしてシーグラフの記念に持ち帰ることもできる洒落たおまけつきであった。
アートと科学技術がバランスよく
▲《Sumi-Nagashi》(c)Shunsuke Yoshida, Mitsuhiro Kakita, Haruo Noma, Nobuji Tetsutani/ATR, Jun Kurumisawa/CUC, SIGGRAPH2003
▲《Mutually Quoted Algorithms-Circle Face》(c)Atsushi Kasao, Hitoshi Akayama, Naoto Hikawa, Mao Makino, Yuichi Kobayashi /ATR・Tokyo Polytechnic University・Kyoto Seika University, SIGGRAPH2003
219点のArt Galleryの平面作品の中で新規性を感じた作品は、色のついた同心円の組み合わせで人の顔を描いた《Mutually Quoted Algorithms-Circle Face》(ATR/東京工芸大学/京都精華大学)や、Museumサイトや古い芸術作品から資料を集め、武装した少女を描いた《Damsels in Armor: the War Mounment Proposals》(Viktor Koen)のほか、自然界の形を参考にしてソフトを製作し、自然なドローイングになるよう装置も工夫して描かれた《Metagonal Dry Brush Stroke》(Jean-Pierre Hebert)などである。彫刻ではワイヤーフレームで作図し、相反する火と水のイメージを喚起させた、同サイズ・異素材の彫刻3点《Untitled》(Paul Elia)、デジタルアニメーションとビデオでは、油絵をスキャニングするなどして幻想的な風景アニメを制作した《Freeway Wind》(Audri Philips)、モノクロの低解像度で猫や人物を撮影した《8 Bits or Less》(Patrick Lichty)などを挙げることができる。
特に《Mutually Quoted Algorithms-Circle Face》は、色と形をアルゴリズムから引用して文様を作成し、それらを平面上に配置したCG作品で、アートを科学技術がバランスよく支援しており、CG表現の領域を広げている作品であった。具象と抽象が重なった二重のイメージは、オプアート風画面であり、作品と鑑賞者の距離などを調整することで一方のイメージが鮮明に浮かび上がってくる。アルゴリズムで描かれたCGは珍しくないが、この1枚の肖像画作品を5名で制作したというプロセスにも、この作品がまだまだ発展していく可能性を感じ印象的であった。また、シーグラフ常連の河口洋一郎のレンチキュラー作品《Hannya》や串山久美子とプログラマー森本篤の共同作品である、タッチパネルで水の波紋を描く作品《Waves》に足を止める人も多く見受けられた。
▲《Hannya》(c)Yoichiro Kawaguchi/The University of Tokyo, SIGGRAPH2003 ▲《Waves》(c)Kumiko Kushiyama, Atsushi Morimoto/Musashino Art University, SIGGRAPH2003
世界最大規模のCGの祭典であるシーグラフ、来年はロスアンゼルスで。
▲《Damsels in Armor:the War Mounment Proposals》(c)Viktor Koen, SIGGRAPH2003
▲《Metagonal Dry Brush Stroke》(c)Jean-Pierre Hebert, SIGGRAPH2003
シーグラフでは作品展示のほかに最新の情報機器や機材も展示される。その規模の大きさは240社の出展企業数と1,000を超える出展ブース数からも想像できるだろう。
すべてのセッションを網羅して見る人は誰もいない、世界最大規模のCGの祭典であるシーグラフ。1995年ロスアンゼルスの約40,000人の参加をピークに、昨年のサンアントニオの約17,000人と全体に参加者は減少傾向にあるが、今回は世界各国から約24,000人の研究者や学生、映像制作などの関係者が参加した。その年のCGに関する最新情報はNAB(National Aassociation of Broadcasters:全米放送事業者連盟のThe World's Largest Electronic Media Show)の方が早いという話も聞く。また世界のCG関連のイベントは各地(EUROGRAPHICS2003: Spain, GRAPHITE2004: Singaporeなど)で開催されており、アートを追求しているという観点からいえば、メディア・アート全般を対象としたオーストリアのアルス・エレクトロニカのほうが見ごたえがある。
▲《Untitled》(9.75" x 6" x 7", glass, bronze, aluminum)(c)Paul Elia/Studio Elia, SIGGRAPH2003
しかし、そのCGの祭典のスケールの大きさと先端的な研究成果を陽気に楽しむことは、シーグラフを体験しなければわかり得ない。体調を整え、健脚となって、開かれたシーグラフへ一度参加することをお勧めしたい。論文の応募者などには、言葉のハンディのないよう文法的なチェックを事前にしてくれたり、ビザの必要な国に対しては招待状を送るなど、国の壁を作らない配慮がなされていると聞いた。会場でも日本語を話せるスタッフがいて安心である。CGの祭典が世界平和につながれば意義深い。
来年の2004年シーグラフは、ロスアンゼルスで8月8日(日)から12日(木)に開催される。
*1:「atMOS: Self-Packaged Movie」慶應義塾大学、「The Augmented Compose Project:The Music Table」ATRメディア情報科学研究所、「ElectAura-Net」NTTドコモマルチメディア研究所・NTT Microsystem Integration Labs、「The Dimension Book」東京大学・武蔵野美術大学、「Food Simulator」筑波大学、「SmartTouch: A New Skin Layer to Touch the Non-Touchable」東京大学、「Sumi-Nagashi」ATRメディア情報科学研究所・千葉商科大学、「Thermo-Key: Human Region Segmentation From Video Using Thermal Information」東京大学
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