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写真/土屋誠一建築/五十嵐太郎メディア・アート/ドミニク・チェンダンス/木村覚音楽/吉田寛アジア美術/中西多香映画/北小路隆志|演劇/高取英|ソフトウェア/須之内元洋アートマネージメント/原田真千子
2007年、注目の7人
高取英
 黒色綺譚カナリア派という劇団がある。アングラ系だが、耽美的で、今を感じさせる。作・演出は赤澤ムック。彼女は桐朋短期大学演劇専攻科卒業の後、劇団唐組に入団。新人公演に出演、退団した。その後、黒色綺譚に参加、現在の劇団を創立した。劇団活動のほかに、映画にも出演、監督もした。TV「CSファミリー劇場 TVコメディークラブキング」にも出演し、雑誌のモデルもしている。不思議なのは、事務所に入って女優やタレントコースを歩み芸能人になっていく才があるのに、赤澤ムックは、アングラ系の劇団を率いていることなのである。業が深いといえば言葉は悪いが、ここでは肯定的な意味で使う。だから赤澤ムックを推す。
「眼だらめ」 赤澤ムック
左:第五回公演「眼だらめ」の舞台写真 ©宮川舞子
:赤澤ムック 提供=黒色綺譚カナリア派
大西一郎
 続いて、地元・横浜を中心に発信活動を行なっている劇作家・演出家・プロデューサーの大西一郎に注目したい。彼は、母親が宝塚女優だったため、楽屋の女優の白塗りメイクを見て演劇に偏見をもった。なにしろ、幼なかった。だが北村想の「寿歌」を見て、自由な芝居の面白さに目覚めた。大西一郎の作風は、SFタッチのなかにゆがんだ日常を描き、また屋台崩しでダイナミックな仕掛けを見せる。大西一郎は、日本演出者協会の最年少理事となり、今は演劇大学やコンクールの仕事をしている。また、ほどなく横浜市開港150周年をむかえる横浜で、横浜未来演劇シアターを立ち上げプロデュースをしている。

東憲司
東憲司
 新宿梁山泊でいくつかの舞台に参加した後、独立した劇団桟敷童子の東憲司も注目の一人だ。劇団桟敷童子第13回公演の「風来坊雷神屋敷」は、2005年の岸田戯曲賞最終候補にもなった。最近、一部の評論家たちがアングラは終ったとか、小劇場はもともと新劇だなどと、歴史を修正しようとしているが、寺山修司・唐十郎・鈴木忠志・佐藤信たちのアングラの流れは脈々と続いているのである。東憲司もまたその流れのなかにあり、大がかりな舞台セットをつくるため、半年ほどの時間をかける。自分達の追い求める風景を現実化するためという。役者たちがパワフルなのはいうまでもない。

 また、藤澤智恵子と神谷憲司を中心につくった劇団天才ホテルがある。この劇団は、二人が、やはり劇団四季出身のメンバーとつくったところが特徴だ。しかも、作風は、なぜかアングラティックなのである。劇団四季出身の若者たちがオリジナリティを追求すると、アングラティックな、難解でアヴァンギャルドなミュージカル風になるところに注目したい。

 さて、どのジャンルにも属さない、ひげ太夫という劇団がある。作・演出・出演は吉村やよひ。「勇ましいひげをもった太夫(=花魁)といったところから名前をつけたこの劇団は、女性キャストのみ。驚くべきことに人間アクロバットとでもいおうか、舞台装置までも、次から次へと組体操のように役者がドッキングしてつくる。吉村やよひは、なかで生演奏もする。演劇のジャンルから、逸脱しているかのような、展開は、本人たちも自覚しているらしく、〈もはや演劇と呼ぶよりも、「出し物」と呼ぶにふさわしい私たちの公演〉と自称している。この劇団のひとつの公演にかけるエネルギーは、想像を絶する。汗まみれの熱演なのである。しかし、演劇的評価はあまりされていない。もっと注目されてもいいと思うのだが。

ヒマラヤ頭巾団 ドンジャールの館 小道で座長アップ・後ろ柱と腰掛け 左:ヒマラヤ頭巾団 ドンジャールの館
:小道で座長アップ・後ろ柱と腰掛け
ともに撮影=渡辺佳代

ひげ太夫 10周年企画公演 第一弾
【タイトル】雲丈郭(うんじょうかく)
【場所】麻布die pratze
【日程】3月23日(金)〜27日(火)
【詳細】http://www.higedayu.com
 さて。ラストは〈演劇の聖地「本多劇場」で団鬼六のエロスが開花 東大大学院卒 才媛女優が披露した『花と蛇』緊縛ヌード〉と、『フライデー』2月23日号が報じた三坂知絵子を推そう。三坂知絵子は、北村龍平監督の映画「VERSUS」のヒロインで注目され、その後、園子温監督の「自殺サークル」、中原俊監督の「でらしね」などにも出演。一方では、手前ミソながら、私の劇団・月蝕歌劇団や、宮沢章夫のユニットなどにも出演してきた。今回、団鬼六・原作「花と蛇」を月蝕歌劇団が上演するにあたり、ヒロイン・静子役のオーディションを行なったが、団鬼六氏が「このメンバーに静子はおりませんな」と断言。困っていたところ、偶然、出会った三坂知絵子に「キミが静子だ」と指名。その時は、笑っていた三坂知絵子だが、チャレンジ。裸はもちろん、緊縛も試み、ラストは、緊縛されたまま、5メートルの高さに釣り上げられ、観客の度肝をぬいた。映画では、数々の静子役がいたが、団鬼六夫人は「主人が求めていた可憐な静子。それが、初めて実現しました」と、終演後、三坂を抱きすくめた。この、大胆な役にチャレンジした三坂知絵子の今後に注目したい。
花と蛇 花と蛇
花と蛇
高取英
1952年生。劇作家。京都精華大学教授。著書に「寺山修司―過激なる疾走―」「ドグラ・マグラ月触版」など。
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