artscape
artscape English site
プライバシーステートメント
展覧会レビュー
小吹隆文/福住廉
8/20〜8/25
鉄秀個展 美粒子
8/19〜9/15 月眠ギャラリー[大阪]
月眠ギャラリー
墨と金粉を用いた作品群と人体の一部を変容させた作品群を出品。前者は一見スピーディーなストロークが信条に見えるが、実は最初の一筆以外は細かい線描を丹念に塗り重ねたもの。黒と金のコントラストは、墨に金粉を混ぜて描き、比重の差で金粉が浮かび上がる現象を利用しているそうだ。後者は、自身の身体に墨を塗って紙に転写し、その時できた模様から想を得て描き進めているとのこと。スタンプされた部分と手描き部分の質感の違いが面白い効果を発揮している。また独特の艶かしさも大きな魅力といえる。
[8月20日(月) 小吹隆文]
グチック考13
8/20〜9/1 ギャラリーwks.ギャラリーH.O.T[大阪]
ギャラリーwks.、ギャラリーH.O.T
2つの会場にあるのは、インスタレーションと写真作品。インスタレーションはいずれも黒布でできていて、一見平面作品だが、見る角度を変えると実は部分的に隆起している。写真作品は既存の風景の一部を巨大な黒い影が覆っているもの。どうやらこの黒い影は個々の人間が世界を知覚する際に捕捉されなかった巨大な「その他」を象徴するもので、インスタレーションの隆起はその突端を示しているらしい。認識、知覚、世界の把握を巡る独自の解釈を綴った作品だと理解した。なお、「グチック」とは作者の山岡敏明による造語。「13」とは、シリーズの13番目を表わす。
[8月20日(月) 小吹隆文]
大阪もーりもりー森村泰昌、釜ヶ崎ロケを語るー
8/25 中之島図書館3階文芸ホール[大阪]
横浜とヴェネチアで発表された《なにものかへのレクイエム》。森村が三島由紀夫、レーニン、ヒトラー(とチャップリンのダブルイメージ)に扮したこの新作が、彼の地元大阪ではトーク付き上映会というかたちで披露された。タイトルにある釜ヶ崎は日雇い労働者の街で、レーニンのロケが行なわれた場所。それゆえ1作品に特化したイヴェントなのかと予想していたが、実際は偏りがなく、作品を見ることが最優先だった私としてはありがたかった。過去の作品と比べて格段にメッセージ性が強く、自爆覚悟でドンキホーテ役を買って出たような本作が、今後どのような評価を得るのか非常に興味深い。私自身は三島のラストシーンの脱力感と、ヒトラーが強烈な巻き舌で繰り出す詩とも言葉遊びとも付かない語りが強く印象に残った。同時に、地元・大阪の美術館で森村の個展が一向に行なわれない現状を考えざるを得なかった。
[8月25日(土) 小吹隆文]
白川昌生と「フィールド・キャラバン計画」
7/20〜8/26 群馬県庁昭和庁舎[群馬]
白川昌生による「フィールド・キャラバン・プロジェクト」の成果発表展。ライダーたちに取材を試み「生き方としてのスノーボード」を浮き彫りにしたDVD映像と、彼らから借り受けたボード100枚近くをサークル状に組み上げたインスタレーションなどが展示されていた。白川といえば、美術制度への異議申し立てから成り立つプロジェクト型の作品と、フォーマリスティックで構築的な造形作品をそれぞれ別々に手掛けるアーティストとして知られているが、今回の作品はそうした色合いの異なる二つの作品を発表しつつも、それらの根底では一貫した方向性を共有している点が、これまでの白川作品とは異なる特徴を示していた。それは、前橋の若者たちと共同して立ち上げたプロジェクト型の作品のみならず、造形的な作品さえも、彼らとの共同作業によってつくられていたという点だ。ここにはアーティストという個の立場にもとづきながらも、暮らしの空間を共有する若者たちとともに生き、ともに考え、ともに実践していこうとする白川の静かな決意が立ち現われているように思えた。
[8月25日(土) 福住廉]
松本圭二 LET'S GET LOST 私は何かの間違いで詩集を造ったりはしない
8/11〜9/17 前橋文学館[群馬]
ギャラリーwks.、ギャラリーH.O.T
萩原朔太郎賞を受賞した詩人・松本圭二の本格的な回顧展。これまで発表された詩集のほか、校正ゲラや自筆年表など詳細な記録が展示されていた。松本本人は詩人というアイデンティティへの違和感を強く感じているようだが、とりわけ具体的に記述された自筆年表などを見ると、世俗的な人生に翻弄され、絶えず逡巡しながら思い悩む松本自身の姿が克明に描き出されていた。そこには、詩人である自己を否定する表現じたいが詩人としての自己を肯定的に露出させてしまうという逆説が見事に立ち現われていたが、考えてみれば、それはわりと昔から繰り返されてきた詩人という生き方の典型である。この悪循環を本気で断ち切りたいのであれば、詩人であること自体をネタとして相対化するという手もなくはないけれど、より根源的には、いっそのこと世俗にまみれながら表現そのものを断念するという最終的な選択肢を選ぶ以外にないのではないだろうか。そうした強さこそ、詩人やアーティストには求めたい。
[8月25日(土) 福住廉]
Index
8/20〜8/25
鉄秀個展美粒子
グチック考13
大阪もーりもり、森村泰昌、釜ヶ崎ロケを語る
フィールド・キャラバン計画
LET'S GET LOST 私は何かの間違いで詩集を造ったりはしない
8/30〜9/1
今度は武者絵だ!
上妻勇太/永田幹/2人展 skip
トリオフォープレゼンツ 佐藤修悦展
田中朝子展 pool
神話創生
9/4〜9/5
自画像の証言
植松美早展 起きて半畳寝て一畳/二宮幸司 立体造形展
今井康雄展
太陽の椅子
都市との対話
9/10〜9/12
加藤悦郎展
ロートレック展 パリ、美しき時代を生きて
光島貴之展 言葉によって広がる絵
高田竹弥展 時間ノ園
森口ゆたか展「touch」
9/15〜9/21
グラウンド、ルーツ、エアー
的場光晴展
石塚源太展
次ページ
ページTOPartscapeTOP
DNP 大日本印刷 ©1996-2007 DAI NIPPON PRINTING Co., Ltd.
アートスケープ/artscapeは、大日本印刷株式会社が運営しています。
アートスケープ/artscapeは、大日本印刷株式会社の登録商標です。
artscape is the registered trademark of DAI NIPPON PRINTING Co., Ltd.
Internet Explorer5.0以上、Netscape4.7以上で快適にご利用いただけます。