artscape
artscape English site
プライバシーステートメント
展覧会レビュー
小吹隆文/福住廉/村田真/酒井千穂
12/9〜12/13
スエモトタモツ展
12/4〜12/9 立体ギャラリー射手座[京都]
スエモトタモツ展
暗い会場に信号機がひとつだけ赤く光っている。奥へ進み、「とまれ」の表示の位置で立ち止まると、信号の下に「あなたを感知しました」というLEDの文字が現われ、つづけて「あなたはどこにいますか」というメッセージが点滅する。実際の路上で感知信号に初めて出合ったときの、体験をもとに制作された作品。私も同様に複雑な気持ちになったことがあるが、感知信号とは「感知される」という受動的な自分(の存在)を意識させるなかなか衝撃的なシグナルだと思う。ここではすぐにこちらを感知してくれるが、どこにいるのかという問いかけが、現実の路上で「感知中」と点滅する信号機のサインを見つめている間のなんとなく心もとない気分をよみがえらせる作品だった。
[12月9日(日) 酒井千穂]
川北ゆう「WATER WAVER」
12/11〜12/23 立体ギャラリー射手座[京都]
川北ゆう「WATER WAVER」
無数の線が、まるで風になびいているかのように揺れている。こんな複雑な線を大量に描くのって、どうすればできるのか? 本人に訊ねたところ、「大きな水溶性フィルムにペンで無数の直線を引き、薄く水を張った支持体(板パネルや紙などいろいろ)に貼り合わせて作っている」との答が。水溶性フィルムが溶けて線が表面に定着するのだが、そのタイミングでさらに水をかけることで線が流れ出し、思わぬフォルムができあがるらしい。いやはや、ユニークな制作法を思いついたものだ。錯綜する線が織り成す有機的なフォルムは、見入ってしまうほどの美しさだった。
[12月13日(木) 小吹隆文]

波文様のような無数に描かれた線がじつに美しく、画面に吸い寄せられるように見入ってしまった。手法の説明を聞くとますます興味深く、再び画面をじっくりと見たくなる。線を水溶性のフィルムにインクで描き、それを水で濡らしたパネルに張り合わせるとフィルムが溶け出し、線は画面に写る。そこでさらに上からじょうろなどで水を掛けると、その水の流れによって線が動くのだという。わずかな風や空気の動き、水の量の加減で線の表情は変わっていく。インクの色が滲んだり染み込んでいく作品は透明感に溢れているが、油絵の具で描いているタイプはまた異なる表情で、その違いも面白い。水の作用にくわえて、線自体のピッチや色の写り具合が不安定な分ドラマチックで力強さもある。どちらも魅力的だ。見に行って本当によかったと思う作品だった。

[12月16日(日) 酒井千穂]
平野政吉美術館
12/13 平野政吉美術館[秋田]
いつもは数で勝負の村田真ですが、今月は4人一挙掲載とのことで控えめです。というのはウソで、多忙のため引きこもり状態なだけです。といいつつ秋田に来たりして。公立美術短大に呼ばれ、帰京前に美術館に寄ってみた。平野政吉美術館は、秋田の大地主だった平野が集めた美術品をもとに1967年に開館。中世スペインの宗教画やゴヤの銅版画、ピカソやマティスもあるが、なんといっても有名なのは藤田嗣治コレクション。なかでも見たかったのは、秋田の祭りやかまくらなどを描いた《秋田の行事》という大作。1937年に平野の要請で制作したもので、3.65×20.5メートルの大画面を174時間(15日間)で描き上げてしまったという。あまりにでかすぎて2006年の回顧展にも出品されなかったシロモノだ。早描きのせいか「薄い」という印象だが、それ以前のけだるい画風から戦争画ヘ突入する景気づけになった作品ではないだろうか。
[12月13日(木) 村田真]
木村伊兵衛が視た秋田
11/22〜1/20 秋田市立千秋美術館[秋田]
木村伊兵衛が視た秋田
こちらはビルのなかにある美術館で、岡田謙三美術館も併設している。展覧会は木村伊兵衛が1950〜60年代に撮った《秋田》シリーズ。これを見ると、半世紀前までは「田舎」というものがしっかり残っていたのだなあ、とつくづく思う。写真のなかに直線がない、あってもフリーハンドであって、ヴァーチャルな直線がないんだもん。別の言い方をすれば、写真から田舎の匂いが漂ってくるのだ。
[12月13日(木) 村田真]
Index
11/26〜12/1
野嶋革 展
山元ゆり子 展
シェル美術賞
中野正貴
山中賀與子 作品展
12/3〜12/5
中村協子 展「思い出せない思い出」
西岡桂子 展「本気がいっぱい」
山野千里 展
今日の作家シリーズ48 垂直なる地平:国谷隆志
矢尾板克則 小屋 展
12/7〜12/8
墨集団翔 Sho Sumi 三人展 遊離
ヤノベケンジ展「トらやんの大冒険──ファンタスマゴリア」
田中広幸 展「集積体上の球体」
12/9〜12/13
スエモトタモツ展
川北ゆう「WATER WAVER」
平野政吉美術館
木村伊兵衛が視た秋田
12/15
バードハウス展
福井直子 展「絵のある部屋」
篠原愛 展
小西紀行「人間の家」
12/15
大和文華館所蔵 富岡鉄斎 展──躍動する形と色
北山善夫 展 図像説(歴史)
Calendar for2008
12/16
東京芸大 博士展
藤井まり子 展「ゆーとぴあ」
阪上弥生 展
12/18
30年分のコレクション
俵萌子・増田妃早子「Drawing-Exposed essence 07」
「静物」才木寛之 展
荒川望 展
12/20〜12/24
大西伸明 3℃
イスワント・ハルトノ「MELLOW」
一寸のアート part5:亀谷彩・白井千尋
半熟目玉盲点観光ガイドによる、観光ダンス作品「ためいけ」
旅 展
12/25
遠い町──それぞれの記憶 上田順康・藤下友絵・板野久美子
大塚泰子
百花繚乱 展──芸能人・文化人による華やかなアートの共演
前ページ 次ページ
ページTOPartscapeTOP
DNP 大日本印刷 ©1996-2007 DAI NIPPON PRINTING Co., Ltd.
アートスケープ/artscapeは、大日本印刷株式会社が運営しています。
アートスケープ/artscapeは、大日本印刷株式会社の登録商標です。
artscape is the registered trademark of DAI NIPPON PRINTING Co., Ltd.
Internet Explorer5.0以上、Netscape4.7以上で快適にご利用いただけます。