小吹隆文/福住廉/村田真/酒井千穂 |
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12/20〜12/24 |
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大西伸明 3℃
12/1〜12/22 studioJ[大阪] |
さまざまなモチーフを樹脂で型取ったり写しとったりしたものにリアルな彩色を施した作品を発表している大西信明。レースを用いた作品は以前にも見たことがあるが、今回は、アンティークレースの模様をシルクスクリーンでチュール生地にモンタージュしたもの。一見、レースの模様部分はひとつのパターンになっているようだが、じっくり見ると、そうではないし、印刷部分のズレや重なりも確認できる。薄く繊細で、脆い。緻密で美しい模様のなかには、物質としてのレースのイメージや特性だけではない表現が潜んでいる。日頃目にしているものや感覚を鮮やかに裏切り、けれど、さりげなく疑問符をつけて示してくれる大西の表現は今回も新鮮だった。
[12月20日(木) 酒井千穂] |
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イスワント・ハルトノ「MELLOW」
12/17〜12/26 ギャラリイK[東京] |
インドネシアのアーティスト、イスワント・ハルトノが日本の靖国問題について作品を制作し、日本の画廊で発表した。作品の主題からすると、どうしても深刻で重厚な雰囲気に陥りがちだが、イスワントが優れているのは歴史的なドキュメンタリー写真を引用しながらも、そこにアクリルのビーズやパフュームなどを効果的にあてがうことで、あえて「軽く」しているからだ。甘美な香りと透明な光に包まれた空間は、靖国=天皇制がはらむ欲望=抑圧という二面性を的確に踏まえたことの証であると同時に、歴史の暗部を一身に背負うことで自滅してきたこれまでの政治的なアートの二の舞にならないようにするための知恵と工夫でもある。アートにおける靖国=天皇制は、ようやく表現の問題として検討される段階に達した。
[12月21日(金) 福住廉] |
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一寸のアート part5:亀谷彩・白井千尋
12/11〜12/23 ギャラリー恵風[京都] |
高さ2cmもない人形が乗った蓮の葉の舟、見たことのないさまざまな植物の種子。展覧会名のとおり、手のひらにのるほどの小さな作品がずらりと展示されていた。これらを制作したのは伝統的な漆工芸の技法を使う亀谷と、木彫作品を制作する白井。一つひとつを見ていると、空想の愉しさに誘われて、その世界にどっぷりと浸ってしまうが、完成された技術に裏打ちされたそれぞれの細やかな仕事の美しさにも目を奪われた。
[12月23日(日) 酒井千穂] |
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半熟目玉盲点観光ガイドによる、観光ダンス作品「ためいけ」
12/24 立体ギャラリー射手座[京都] |
映像作品を軸にさまざまな表現活動を行なっている川崎歩。彼の演出作品を上演するのが、半熟目玉盲点観光ガイドというダンスカンパニーである。そのダンス作品「ためいけ」の公演を観た。海から上陸した二人が都を目指しながら南河内を観光する、そして2つの山を越えたところでひとりの姫がふたりを待ち受けていた、というストーリーの設定もあるのだけれど、ダンスという表現を見慣れていないせいか、私にはその後の展開がよくわからなくなってくる。でも、三人の豊かな表情と体の動き、ところどころで流れる奇妙な音楽(生演奏)や、音の入るタイミングで、実際には見えない風景や情景はすぐに頭に浮かんでくる。ブロック塀のつづく住宅街の風景、ごちゃごちゃした下町の様子など。本当は違うのかもしれないし、観光という設定なので、イメージが掴みやすいのかもしれないが、次々と変わっていく場面を、それも瞬時に、観客に想像させるダンスと音楽の力を知って感動。約50分の上演時間だったがちっとも退屈せず、20分くらいの作品のように感じられるほど面白かった。同作品は二月に神戸アートヴィレッジセンターでも上演される。
[12月24日(月) 酒井千穂] |
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旅 展
12/15〜1/28 国立新美術館[東京] |
文化庁芸術家在外研修制度40周年を記念し、1967年派遣の奥谷博から2004年の川村悦子と丸山峰子まで102人の新作を集めたもの。これまで派遣されたのは780人(美術部門のみ)だから、趣旨に賛同して出品したのは7分の1以下という計算だ。展覧会を一瞥してまず気づくのは、活動範囲やマーケットがドメスティックに限られる作家が多く、わずかな例外を除いてグローバルな活躍は望むべくもないこと。きっとグローバルな作家は世界を飛び回って忙しいため出品できなかったと思いたいが、派遣する側の文化庁としてはちょっと寂しいではないか。もうひとつ気づくのは、派遣されたときの作家の年齢が年を追うごとに上がっていること。調べてみると、1967〜79年には派遣年齢が平均36歳だったのに、1980〜89年では40歳に上がり、1990〜99年は44歳、2000〜04年には46歳まで上昇している。これは単純に年齢が上がっているのではなく、初期のころはほとんどが30代だったのが、近年は20〜60代に幅が広がった結果なのだ。これを審査が甘くなったと見るか、対応が柔軟になったと見るか。
[12月24日(月) 村田真] |
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