小吹隆文/福住廉 |
|
1/26〜1/29 |
|
風間サチコ 満鉄人vsプリズン・ス・ガモー
12/13〜1/26 無人島プロダクション[東京] |
田中角栄を取り上げた前回からさらに時をさかのぼり、風間サチコが今回取り組んだテーマは「満鉄と巣鴨プリズン」。巣鴨プリズンに戦犯が収監された一方で、満鉄関係者の多くが戦後そのまま政治の中枢に居残ったという事実を踏まえながら、風間は満鉄人とプリズン・ス・ガモーというキャラクターの対決物語を版画作品に落とし込んだ。一点一点の作品のサイズが以前にも増して大きく、細かく丁寧な描写が味わえるようになっていたが、画面の構成もよりマンガ的になり、そのぶん一枚の版画には収まりきらない物語のドラマチックな展開を想像させていた。このような政治的社会的な主題は、どういうわけか日本のアートシーンにおいては敬遠されがちだが、そうした歴史的問題の延長線上にある現代を生きる私たちにとって、それらが決して無視することはできない芸術的主題であることは明らかだ。『日本心中』をはじめ多くの詩的な映画を制作し続けている大浦信行や、悪意のある批評的態度によって「日本」を挑発し続ける会田誠などわずかな例外と同じように、風間サチコは日本の近代に正面から取り組んでいるのである。これに何かしらのかたちで応答することが鑑賞する側の責任だ。
[1月26日(土) 福住廉] |
|
尾柳佳枝──絵と映像展
1/28〜2/2 画廊 編[大阪] |
尾柳佳枝は、風景から発想した抽象的な絵画と、その絵画を素材にして発展させた映像作品で知られている。人工芝を使ったオブジェやクッションを展示空間に配置するのも特徴である。本展では、これまで紙に描いていた彼女が初めてタブローの作品を出品。独立した平面作品への関心が以前より高まっていることが伺えた。また、平面作品を糸で吊って、3次元的な奥行きを持たせた展示方法も新たな試みだった。私の文章だとどうしても固い雰囲気になってしまうが、尾柳作品の本来の魅力は、小春日和の陽だまりのような緩くてぬるい空気感。今回もその心地よさが上手く表現されており、好感をおぼえた。
[1月28日(月) 小吹隆文] |
|
岡上淑子 展 「変容」
1/29〜2/23 サードギャラリーAya[大阪] |
1950年代、60年代に瀧口修造や武満徹らと共に活動したフォト・コラージュの名手、岡上淑子。2002年以来約5年半ぶりの個展となる今回は、彼女自身が今も手元に置いている愛蔵品8点を中心に、複写やスキャンによる複製作品、作品集などが展示された。彼女の作品は、2000年に第一生命南ギャラリー(東京)で開催された個展で再評価が進み、現在では多くが美術館の所蔵品となっている。まさかもう一度画廊で対面できるとは! 間近で見た作品は、まさに正調のシュルレアリスムでありフォト・コラージュ。大変格調が高く、思わずウットリするほどの魅力に溢れていた。
[1月29日(火) 小吹隆文] |
|
柳澤顕 展
1/28〜2/16 ギャラリーゼロ[大阪] |
うねるラインとドット、針葉樹のシルエットがレイヤー状に配置されたグラフィカルな平面作品。レイヤーと書いたが単純な層ではなく、複雑な曲面のような空間処理がなされている。色使いは、白、グレー、黒の3色に抑えらているが、画面の複雑さを考えれば色数を絞って正解だろう。出品作6点は、2点ずつグループを形成し、同一モチーフによるバリエーションとなっている。コンピュータで下絵を作り、ステンシルの要領で描かれる独自の手法がこのような制作を可能にしている。
[1月29日(火) 小吹隆文] |
|
|
Index |
|
|