小吹隆文/福住廉 |
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2/1〜2/8 |
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アートは心のためにある: UBSアートコレクションより
2/2〜4/6 森美術館[東京] |
スイスに拠点を置く金融機関UBSグループのコレクションを見せる展覧会。グローバルな企業コレクションというだけあって、世界有数のアーティスト60名あまりによる140ほどの作品が一同に会した展示会場は圧巻だ。現代美術の教科書にそのまま使えそうな、粒ぞろいの作品が一挙に堪能できる上、展示構成もほとんど無駄がないため、ストレスなく鑑賞できるようになっている。この空中美術館の社会的な役割が、公立美術館ではまず考えられない、このような展覧会を催すことにあることを物語っていたようだ。
[2月1日(金) 福住廉] |
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海老原靖 「pause」
2/1〜29 eN arts[京都] |
京都の観光名所、円山公園に誕生したニューギャラリーのオープン第2弾展。往年の名作映画に主演する大女優たちの姿を、ビデオのポーズ(一時停止)状態で描いたシリーズが出品された。描かれた女優は、マレーネ・ディートリッヒ、マリリン・モンロー、ヴィヴィアン・リー、ジュディ・ガーランドら。いずれも私生活に陰があったり、イメージと素顔のギャップに苦しんだ人ばかりだ。横方向に入ったノイズがビデオ画像であることを示すと同時に、銀幕のオーラを除去する効果を挙げており、ある種の虚無感が画面全体を覆っていた。
[2月2日(土) 小吹隆文] |
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岡田一郎 展/エアーコンディション
2/2〜24 PANTALOON[大阪] |
関西の40ヵ所で採集した身の回りの空調音とそれらをミックスしたオリジナル音源の作品、空調機のレディメイドかと見間違うミニマルな造形の立体作品(空調の音は採集した空調音からの流用)、画廊の倉庫にあった脚立や椅子、道具箱などを組み上げたジャンクアート風のインスタレーションの3点を出品。岡田は、採集した空調音を何気なく聞いていた時に周囲の空間が変容するような不思議な感覚を覚え、それを他のメディアで表わそうとしたのだという。さながら都市のノイズから生まれた“イマジネーションのエコー”とでも呼ぶべき作品である。
[2月3日(日) 小吹隆文] |
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森村泰昌「荒ぶる神々の黄昏/なにものかへのレクイエム・その弐」
12/22〜2/16 シュウゴアーツ[東京] |
森村泰昌の新作展。昨年の熊本と横浜で三島由紀夫に扮した森村が、今度はレーニン、ゲバラ、毛沢東、アインシュタインなどに変身した。最近の森村は20世紀の歴史を身体ひとつで体現するかのような鬼気迫る迫力を醸し出しているが、今回もまた死と表裏一体となったそれを存分に見せつけていた。なかでもチャップリンの名作「独裁者」のラストシーンをなぞった映像作品は見ごたえがあった。前半は関西弁をまじえた意味不明の言葉を発する狂気の独裁者を演じる一方で、後半になると、映画と同じように、穏やかな口調で平和のメッセージをとうとうと語り、そのコントラストが戦争と平和のあいだで右往左往してきた人間の揺れ幅をそのまま表わしているようだった。森村のパフォーマンスを見ていると、優れた芸術家は同時に優れた芸人であることをまざまざと痛感させられるが、荒ぶる世のなかを生きていくには、もはやこの「芸」しか頼りにならないのではないかと思えてならない。
[2月8日(金) 福住廉] |
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没後50年 横山大観──新たなる伝説へ
1/23〜3/3 国立新美術館[東京] |
富士山や桜など、いかにも風雅な「日本」を描き続けた横山大観の展覧会。何を描こうが絵描きの勝手だが、大観の絵はどこからどう見ても「日本」の保守的なイデオロギーを追認しているようにしか見えない。けれども現実の日本社会は大観が描いた風景からますます乖離しており、だからこそ「新たなる伝説」としての、フィクションとしての「日本」を再生産することが期待されているのだろう。音声ガイドを利用すると、浪曲を熱唱する大観の肉声を拝聴できるが、そのいかにも好々爺のような声質は敵対勢力さえものらりくらりと取り込んでしまう「日本」の伝統を体現しているかのようだった。自分の立ち位置を正確に知るための「ものさし」として、依然として大観は使えるのかもしれない。
[2月8日(金) 福住廉] |
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