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「LOCO ワークショップ−コップ人間、記憶へのメッセージ−」
毛利義嗣[高松市歴史資料館]

 
札幌/吉崎元章
福島/木戸英行
東京/増田玲
高松/毛利義嗣

コップ人間ワークショップ
コップ人間
コップ人間(ウェディングカップル)
コップ人間たち(カフェにて)
 ワークショップ、体験してきました。参加者は両日とも40人ほど(ペアでの参加推奨)でした。内容は、
1.たくさんの紙コップ(というか今回はプラスチックコップ、200個くらい)をホチキスでバチバチとつないでいって、頭がすっぽりはまるような球体のカブリモノを作成
2.それをかぶって好きな場所(エントランス・展示室・バックヤード・会議室・商店街 など)に出没し、ポラロイドで撮り合うという段取りです。簡単ですね。(謎の参考サイト
 このプランはもちろん、ただ作って楽しむというより、それをかぶってパフォーマンスして観てもらってナンボ、というものですから、ヤル方もそれなりの気構えが必要です。その点、比較的おとなしいとされている(不明)高松の参加者の人々がLOCOさんのテンションについていけるのだろうかと、ひそかに不安を抱いていたのですが、杞憂でした。認識不足でした。というか、チラシの「持ってくるもの」の欄に書かれてもないのに、なぜ家族そろってハリー・ポッターの衣装を持ってくるのでしょう。仮面ライダーやらスパイダーマンの手作りコスチュームを持ってくるのでしょう。ウェディングドレスやタキシードを用意してくるのでしょう。皆さん気合入りすぎです。
 という感じで、困惑する一般の来館者やら警備員さんやら通行人やらをまきこみながら、予想以上の盛り上がりを見せておりました。実際にかぶってみてわかったのですが、これほとんど前が見えません。その上、内側でワンワン反響して周りの音もよく聞こえません。なので、人前にいながらにして容易にインナーワールド俺世界に入っていけます。と同時に、これをかぶっている人たちどうしには、つかの間、無条件で連帯できるような気分が生まれる、そんな便利なツールであるなあと、思いました。
 LOCOさんいわく、コップ人間の乱入で「あたりまえの風景をあたりまえでなくす」のだ、と。これ言うのは簡単で、むしろアートは多かれ少なかれそういうのがネライとなるのでしょうが、実際には、どこのだれだかわからない観客や参加者を相手に短時間でシュッと「あたりまえでない」場所に連れて行く仕掛けというのは、そうたびたびは見かけません。その点このコップ人間のプランは、ひときわ軽快に、特定のコミュニティとか精神性とか知識とかにほとんど頼らず乗れてしまえるような、シンプルさというか余裕というか適当さというか、そういったものでどんどん拡大していけそうです。
 それとか、ワークショップの中でLOCOさんがちょっとやって見せていた糸電話のプラン、糸電話の糸に別の糸を結んでその糸にまた別の糸を結んで、というふうに無限に広がっていく糸電話の網=肉声のネットワークもこれまた、そんな簡単でええのんかと思うようなシンプルさかげんでもって、ひととき、その参加者のコミュニケーションのスイッチをオンにしていました。
 さて、そんなようなコップ人間や糸電話ネットも、ある一定の時間と空間の中で演じて遊ぶものですから、遊び終わったらかぶりものは脱がなければいけないし、電話は耳からはずされ糸も切られてしまいます。仮想的で演劇的なコミュニケーションの回路はオフになって、かぶられないコップ人間のかぶりもの、耳にあてられない糸電話のコップ、あと写真とかビデオの中の記しだけが、残る。ところがですね、そうしてオフになる時間、回路が切られる瞬間に、まさに切られることによって、ついさっきまで回路がつながっていたことを人は理解してしまうんじゃないでしょうか。または、回路はいつもいつも機能しているんだけどあまりにそれがフツーなことなので気にもとめていない、それをコップ人間や糸電話は少しだけ増幅して、目に見え耳に聞こえやすくしてあげる、その経験を経てしまえば、そうしたツールがなくなった後も、回路がこの世界に現実にあり続けていることをたぶん忘れはしないのだろうと。なので、「あたりまえでない」風景とは、コップ人間がいる風景、コップ人間がいた風景、人間がいるかもしれない風景、どれにもあてはまるし、むしろ、いつだって「あたりまえの風景はあたりまえでない」ことを、LOCOさんは今回のワークショップでも実は披露してたんだと思います。
 で、初日(3/8)の夜、たまたまTEI TOWA+宇川直宏のライブが高松市内 (ミケイラ) であったんですが、LOCOさん+ワークショップ参加者有志数名によるコップ人間隊が突撃しました。なんというか、美術館や街中でやる時の周囲の視線とは微妙に違うクラブでの視線の中で、バイトなの?とか聞かれながら皆さん結構はじけてました、あげく、コップ人間のかぶりものは一人歩きを始めて、誰だか知らない人たちに喜んでかぶられてたのが、大変よかったです。

会期と内容
●「LOCO ワークショップ−コップ人間、記憶へのメッセージ−」
会期:2003年3月8日〜9日
会場:高松市美術館(高松市紺屋町10-4 tel.087-823-1711)

「世界でただ一人の紙コップアーティスト」LOCOさん
ホームページ:http://www.daysleeper.jp/~loco/
      :http://f7.aaacafe.ne.jp/~loco/
プロフィール:http://www.sakura-utopia.ne.jp/kobe-c/2000-07/hasshin.html
主催者メッセージ:http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kyouiku/bunkabu/bijyutu/message1.htm

[もうり よしつぐ]

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