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展覧会レビュー

村田真 原久子

戦争と美術
5/26〜7/10 姫路市立美術館[兵庫]
 
 
戦争と美術
実は先月末(5/25)、関西ひとりアートツアーしたときにも真っ先にここを訪れたのだが、なんか閑散として「おかしいなー」と思いつつ入ったら、なんとオープンの前日。ちゃんと会期を調べずに来てしまったのだ。2002年前半期最大のトホホであった。そんなわけで2度目の訪問。今日も前回と同じく晴天、同じく閑散としていて一抹の不安がよぎるが、やってましたよ。「戦争と人間」はいわゆる戦争記録画も含めて、人間(日本人)が戦争をどう見たか、戦時に画家はなにを描いたかを探るもの。だれでも知ってる戦争記録画はほとんどなく、郷土ゆかりの画家、しかも日本画が多い。なかにはシロートが描いたとしか思えないシロモノもあってローカル色を感じさせるが、それがかえって新鮮でもあった。戦争記録画とそうでない作品(軍部への協力と抵抗といいかえてもいい)が画然と分かれていたのではなく、その間に限りなくグレーゾーンが広がっていたことを実感できた。
[6月6日(木) 村田真]

「戦争絵画」などというと、などさまざまな先入観をもって見てしまうのが常だ。この展覧会では、一旦すべての作品をフラットなところに引き戻して美術表現として見ることを優先しようと試みている。従軍画家の描いた絵巻物には兵士たちの前線での勇姿ではなく、風呂に入る様子や、飯ごうをぶらさげて食事の支度にとりかかる様子などが描かれていた。軍の要請で描かれたものの受取りを拒否されたという横たわった兵士の顔が日の丸の旗で覆い隠されていた。吉原治良の「菊(イ)」は、画面いっぱいに菊の花が一輪描かれているが花びらがスカスカしている。「桜」や「菊」は戦時中よくモチーフとして選ばれているが、花がどう描かれるかは作者のもつ文脈によっても、見る人の視点によっても異なってゆく。会場にいる間の約1時間ほどの間の他の来場者を観察していると、ほとんどが年輩の戦争体験者とおぼしき人々だった。企画者の意図するところとの距離はありそうだが、3人で来られていたグループは、戦時中の話しで盛り上がり、うち一人は軍歌を会場で口ずさみはじめてしまった。
[6月14日(金) 原久子]
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第2回福岡アジア美術トリエンナーレ2002
  3/21〜6/23 福岡アジア美術館
 
 
第2回福岡アジア美術トリエンナーレ2002
姫路からちんたら新幹線で福岡へ。関門海峡を渡る(というよりもぐる)のは何年ぶりだろう。今回の「アジトリ」は前回に比べてまったく話題になってないので、期待しないで見に行ったら、なんだおもしろいじゃん。前回みたいにコミュニケーションとかコラボレーションとか、いかにも「アジア現代美術っぽさ」を前面に打ち出すこともなく、淡々といい作家を紹介していて好感がもてた。ゲルハルト・リヒターと韓国の土俗をミックスしたようなソン・ヒョンスクの「筆触」絵画、タイの近代史を机に彫り込んでフロッタージュしてもらうスッティー・クッナーウィチャーヤノンの参加型パブリックアート、書割の前で観客がポーズして自由に写真を撮れるインドのサティッシュ・シャルマのインスタレーション、画家とモデルがお互いの顔を描きっこする中国のチェン・シャオフォンの「対画」シリーズ、福岡でミョーな物件を探し求めたアトリエ・ワンの建築コレクションなど、みんないちおうしっかりつくってる。テーマは「語る手 結ぶ手」(英語は「Imagined Workshop)となってて二枚舌っぽい)。
[6月7日(金) 村田真]
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  鈴木淳展
5/24〜6/22 MOMAコンテンポラリー[福岡]
 
 
鈴木淳展
画廊内には大小いくつかのモニターと、それに合わせた椅子やソファ。片隅にボックスがあって、鈴木のビデオ作品のリストが入っている。そのリストから好きな作品を選んで受付に申し込めばビデオが借りられ、どのモニターでも自由に見ることができるというシステム。ビデオ映像はきわめて退屈な日常風景だ。退屈なビデオを退屈な手続きを経て退屈なかっこうで見る――退屈の3乗は、はたして退屈でなくなるのだろうか。
[6月7日(金) 村田真]
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大分現代美術展2002 アート循環系サイト
  5/25〜7/14 大分市美術館ほか市内各所
 
 
大分現代美術展2002 アート循環系サイト
博多から北九州まわりでちんたら大分へ。ワールドカップ間近の大分市内で、美術館をはじめ工場や寺、屋外などを使ったプロジェクトがおこなわれている。企画したのは大分市美術館の菅章。大分市には古代から中世、近世、近代までの時空が積層しており、それをアーティストたちに掘り起こさせ、作品化してもらおうというねらいだ。なかでも、かつて戦闘機の修理工場で、いまは酒の醸造所にも使われている旧百人力工場は建物自体が迫力。この空間の記憶を見事に引き出したのが河口龍夫だ。高い天井から飛行機の模型を吊るして上から光を当て、床に巨大な戦闘機の影を映し出している。正面の鉄の扉には銃弾による穴があき、まるで河口の「COSMOS」シリーズのようだ。ほかにも、寺の茶室にエイリアンの絵を飾った太郎千恵蔵、旧醤油工場に布と金属を組み合わせてインスタレーションした剱持啓子、大分駅の旧電力区訓練室をカメラオブスクラに見立てて外の光景を写し込んだ佐藤時啓など、けっこう大胆。
[6月8日(土) 村田真]
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森村泰昌写真展 女優家Mの物語[M式ジオラマ(25m)付き]
  4/27〜7/7 川崎市市民ミュージアム
 
  森村のアトリエからそっくり持ち込まれたこれまで発表してきた作品や、作品に使用したセットや衣装や小物などが、半円形の展示室のに弧を描くように設えられた展示ケースにぎっしり並んでいた。85年以来、比較的身近に制作や発表を見てきた者としては、個人的なそのときどきの思い出とともに、森村ワールドを楽しむ。イヤホンガイドの機械についていたファンシーなギンガムチェックのリボンが美術館が用意したものなのか、森村が用意したものかがとても気になった。
[6月9日(日) 原久子]
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  折元立身
  6/8〜9/1 川崎市市民ミュージアム
 
  森村のM式ジオラマの隣で開かれている折元展。70年代はじめからの約30年にわたる活動を観ることができた。折元と森村とを比較して考えたことなどこれまでなかったが。この二人は世代的には結構近いアーティストであり、そして写真という媒体を用いている点でも手段としての共通点を持ち合わせながら、あまりにも違う。どちらがいいとか、悪いとか、そんなことではなく。それぞれのパーソナリティが作品に如実に反映されていることを改めて確認する場となった。
[6月9日(日) 原久子]
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山本麻紀子作品展メディアハートコミュニケーションの冒険
  6/10〜7/31 同志社女子大学知徳館1F[京都]
 
 
山本麻紀子作品展メディア・コミュニケーションの冒険 山本麻紀子作品展メディア・コミュニケーションの冒険
まだ大学生の山本麻紀子から作品ファイルを見せてもらったのは今年4月。念願叶って作品をみる機会を得た。はじめて行った同志社女子大の田辺校舎。研究室のかたわらに作られたギャラリーにところ狭しと並んだマッコリン・ワールド。日用品の延長上に作られたかにも見える作品たち。けっこう毒気もあり、笑いもありで、楽しすぎて、ホントに知恵熱が出そうだった。出品作は、彼女がカナダ留学中に制作したものが中心。文化や言葉の壁を越えても相手に伝えようとすることさえしっかりとあって表現すれば、何だって伝わってしまうんだということを実証済みの逸品ばかり。
[6月12日(水) 原久子]
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