SPECIAL INTERVIEW スペシャルインタビュー

DNP 隈研吾インタビュー 隈研吾 語る アートテック®

隈 研吾と 「柔らかな素材」 木とアルミニウム、光、虚と実の間の美

ジョイヴィレッジ(2014年)

「玉川タカシマヤ(2014年)」「ジョイヴィレッジ(2014年)」など、DNPのアートテック®をご使用いただいた建築家、隈研吾さん。彼の作品のコンセプトや「木」「アルミニウム」、さらにはアートテック®などの素材について、建築素材の可能性を隈さんならではの視点でお話いただきました。

― 隈さんはご自身の建築を「負ける建築」や「小さな建築」などのように言い表して、フラットでオープンな関係性や、透明さや軽やかさ、生物的でやわらかな建築を目指されていますね。そのキーワードの一つが『素材』であり、『素材の建築家』とも言われる所以にもなっています。そんな隈さんの建築と素材の関係性について、お話いただけませんか。

[ 隈 ] 僕はいつも、人間の身体との関係性で建築素材を決めています。人間の身体というのはそもそも繊細にできていて、基本的にか弱い存在です。僕は、そんな繊細な存在が怯えなくていい素材を求めています。例えば「コンクリート」は強度が保てる反面、人間には強すぎるし、硬すぎるし、触っても冷たいし。結局コンクリートというのは、そもそも人間の身体に対してはあまり優しくなかったと気付いて、もう一回探し始めるとやはり「木」に行き着くのですね。木が持っている、人間の身体との親和性を現代に再構築できないだろうか?そう考えるとアートテック®のような素材にすごく興味がわくのです。

― 木から始まり、竹やセラミック、和紙、最近では、建て替えを手掛けられた「第五期歌舞伎座(2013年)」でのアルミニウムなど、建築における様々な素材の持つ可能性を追求されていますね。隈さんの素材観についてお聞かせください。

[ 隈 ] 先ほどお話ししたとおり、僕には素材への興味のツボがいくつかあります。中でもアルミニウムは面白い。鉄の持っている重たさとか工業化社会的な重厚感みたいなものと異なり、木に通じる軽さを持っているところや、アルミニウムの風合いが日本人の懐かしさを呼び起こすところがいいですね。
人間の身体は、相対する素材があまりに重かったり硬かったりしたときに「怖い」という恐怖心が湧くのではないかと思っています。木の良さは、その比重の軽さであるわけです。木は簡単に持ち運ぶこともできるし、仲間だという感じがしますね。その仲間だと感じられる距離感がアルミニウムにもあります。現代的な新しい素材であるにもかかわらず、とっても懐かしい味わいもある素材、それがアルミニウムだと思っています。そのアルミニウムに直接印刷しているアートテック®を見た時、「あっ、これってすごく懐かしいな」と思いました。アルミニウムにシートを貼ったものは色々あります。でもアートテック®はシートを貼るよりももっと木に近づけたような味わいがあって、僕のアルミニウム感に近いから積極的に使っているのです。 また、アートテック®には耐候性もありますよね。「本当は木を使いたい」「外壁に使いたい素材があるんだ」という悩みが、今後解決すると思います。
たとえば「布」です。木を超す布の柔らかさは大変な魅力です。これに印刷して建築に取り込んだら素敵だろうなと思いますが、布の耐候性は致命的です。課題が多いからこそ、今、すごく興味があります。アートテック®の印刷技術でこの課題、解決できませんか?

― 逆に宿題をいただいてしまいました(笑)。
鉄、コンクリート、木、アルミニウムに今度は布。隈さんはより優しい素材に向かっているのですね。追い求めている根幹のイメージは何でしょうね?

[ 隈 ] 光、でしょうか。
布のザラザラしたテクスチャに光が当たったときの煌きの質感を、今の印刷技術は再現できる時代が来ていると感じます。布とか、あるいはザラザラした和紙とか、柔らかい素材表現。透明感の定着。印刷技術に長けたDNPだからこそ、是非挑戦していただきたいですね。

― ご鞭撻ありがとうございます! 確かに、DNPの製品はコア技術である印刷を用いて製造しますので、均質な大量生産に向く反面、ペタッとした均質で単調なものになってしまいがちです。玉川タカシマヤでは、遠目で見て木目が分かるか、試作を実際に現場で仮張りし、下から確認してもらいながら木目を強調したりして施工場所に最適な見栄えになるように調整したのです。このようにDNP では脱工業製品的なチャレンジもしていて、工業製品でありながら、微妙なムラやバラツキをいかに表現するかに注力しています。我々はこれを「不均質の美」と呼んでいます。

[ 隈 ] 僕たちはたくさんの種類の木を扱ってきました。それでもうまくいかないことがあって、例えば、大きい建物の場合はどうしても距離を開けて遠くから眺めますから、せっかく本物の木を使ってもビニールクロスにしか見えないことがあるんですよ。「なんかベージュのビニールクロスを貼ったみたいにベターっとしちゃったなー」って(笑)。せっかく木を使った意味が全くなくって(笑)。
木を「木」と感じるためにはある程度の表現操作、例えばムラを思い切って強調するとか、あえてバラツキを出してみるとか、そういう操作をしてはじめて「あ、木だな」「これは僕らにとっての木なのだな」とキチンと感じることができる。これも日本人独特の感性だと思うのです。
“虚実皮膜”と言う言葉があります。
虚と実の間のところにいちばん芸術的なものがある。だから、“実”を追求したものが、我々人間にとって “実”に響くのではなくて、“虚実の皮膜”が “実”に響くということを日本人は分かっていて、玉川タカシマヤではまさにそこを追求したということです。

― お話をお聞きしながら、作品に使っていただいたアートテック®を改めて見ていると、木の木らしいテクスチャをどう作るかであるとか、木やアルミニウムの持つ優しさをどう表現するであるとかといった観点が大切なのだなと痛感し、勉強になりました。
隈さんは先ほど、光の煌きや透明感についてコメントされましたが、アルミニウムは、太陽の角度や四季、色温度、面の角度などによって光と絡み、さまざまな表情を見せます。
そんなアルミニウムの素地を活かしたアートテック®の可能性や開発のヒントをお聞かせください。

[ 隈 ] アルミニウムが金属であることはよく分かっているのですが、なぜだか、表面がものすごく多孔質のような気がしているのです。アルミニウムの仕上げ方法に「アルマイト」があります。これも僕はすごく親近感があるんですよ。鉄とは違う優しさがあるような気がしていて、アルマイトの質感のような優しさが、塗装した後でもプリントした後でも、残っていて透けて見える。アルミニウムを使ったアートテック®の魅力がそこにあると思うんですね。僕らがこのシルバーの色を見た時に「アルミニウムの持っている柔らかさとか軽さが、この中に、アートテック®の中に確かにあるな」と感じることができます。鉄とは全然違う、大切な魅力です。

INFORMATION 隈研吾氏インタビュー

後編は『隈研吾と「日本人の技」人と空間を近づける素材コントロール』

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