SPECIAL INTERVIEW スペシャルインタビュー

DNP 隈研吾インタビュー 隈研吾 語る アートテック®

隈 研吾と「日本人の技」 人と空間を近づける素材コントロール

玉川タカシマヤ(2014年)
Photo by Masato Kawano(Nacása & Partners Inc.)

「玉川タカシマヤ(2014年)」「ジョイヴィレッジ(2014年)」など、DNPのアートテック®をご使用いただいた建築家、隈研吾さん。彼の作品のコンセプトや「木」「アルミニウム」、さらにはアートテック®などの素材について、建築素材の可能性を隈さんならではの視点でお話いただきました。

― アートテック®は、アルミニウムに直接印刷することでアルミニウム素材に特殊仕上げを施した製品です。また、一般の印刷と異なり、一枚づつ印刷する小量多種生産方式で、デザインや質感表現の自由度が優れています。「玉川タカシマヤ(2014年)」のように全面的に採用いただいたことでさらに、こういう表現を掘り下げて開発していきたいと思っています。玉川タカシマヤで考慮されたポイントはありますか?

玉川タカシマヤ(2014年)
Photo by Masato Kawano(Nacása & Partners Inc.)

[ 隈 ] 玉川タカシマヤの事例のように自然素材に近づけるリアリスティックな路線でいくか、もう少しアルミニウムの質感を残す路線で行くかの使い分けは、周囲の環境とのバランスで決めています。「ちょっとアルミっぽくしたいな」「リアルにいきたいな」はランドスケープ全体との兼ね合い、バランスなんです。
「ジョイヴィレッジ(2014年)」では、基本的には白くて明るい施設にしたかった。でも、白を求めて白で埋めるとバランスが悪いようにも感じました。ちょっとだけシルバー方向に振った方が白い壁との相性がいいので振っていったのです。日本人は古来から、木のもつ多様性、自然の生々しさや優しさみたいなものをコントロールする技術をたくさん持ち合わせています。例えば貝殻からつくった白い胡粉を使い、木肌の生々しさを抑えて白に近づけていくような技。有名なところでは大徳寺(京都府京都市)孤篷庵(こほうあん)の茶室「忘筌」(ぼうせん)の砂摺り天井があります。天井を胡粉を塗って白っぽくすること(=砂摺り)で、床からの光が反射してくるものを天井でさらに反射させて非常に特別な空間に仕上げているんですね。僕には未来的に感じるこの砂摺り天井と近い質感がアートテック®にはあるな、と思ったんです。また、木の生々しさを消す手法として、漆(うるし)の黒も日本人の得意とするところでしょう。日本人は、木という素材をストレートに使うだけでなく、それぞれの空間の特性に合せて色みや質感をコントロールしてきたわけですね。木の質感の出し方、抑え方の技法を心得ているだけでなく、むしろ抑え気味なほうが人間にとっては快適だということを日本人は分かっていた。それは自然素材に対する態度としてはすごく洗練されている。世界的に見てもたいへん洗練されている姿勢ではないかと思うのです。
欧米では「天然素材の建築=ログハウス=ナマ」という感じになってしまいますよね。むき出しな自然素材は強すぎて、ちょっと疲れませんか?キャラクターが強すぎるというのか、まさに生肉を食べさせられているようで、僕はツライのです(笑)。

― 拭き漆で軽く色を落としてみるとか、桐材に浮造りをスッとかけてみるとか。

[ 隈 ] まさにそうです。日本人はそういう技をたくさん持っている。その現代版で、製品として日本人の技を落とし込んであるのがアートテック®だったりします(笑)。

― 恐縮です(笑)。
“虚実皮膜”の話が先ほど出ましたが、隈さんの著書にも引用されているコーリン・ロウ(1990年代後半に活躍した英国建築家)の、モダン建築がもたらした虚と実の透明性は、日本建築とどのように対するのでしょう?

[ 隈 ] 我々の時代の建物は、昔の木造建築物や平屋、あるいは二階建ての建物に比べてはるかに遠い距離で見なければならないですね。特に玉川タカシマヤの建物は、基本的に道路を隔てた歩道から見る距離を前提としている。そういう距離に応じた“虚実の境目”を、まさに攻めていかないと木に感じられない。建物のサイズに相応の技が現代にも求められます。その辺も、アートテック®で上手く対応していただいたので、僕はすごく満足のいくものができたと思っています。

― アートテック®は、一般の印刷技術と設計思想が根本的に違い、耐候性をもち長寿命化で外装・準外装・内装に対応します。さらに不燃対応で変色や劣化が殆どありません。景観との調和を意識する隈さんの建築にベターな素材だという自負がありますが、使っていただいていかがでしたか?あるいは新しい発見などはありましたか?

[ 隈 ] そうですね。現在の建築は大きくなったり強くなったりして、人間との距離が広がったというのでしょうか。不燃の問題とか、耐久性の問題とか、僕たちの時代独特の課題がたくさんありますが、そういう社会の要求に応えようとしているところが、今までのシート貼りの材料とちょっと違うレベルにいっているように思いました。

― DNPはアルミニウムメーカーではありません。しかし、アートテック®を通じて“アルミニウムのソフトウェアを提供するメーカー”になりたいと思っていて、今日のお話は大変参考になりました。

[ 隈 ] 更に印刷の可能性を押し広げてもらえると、「あ、こんなことができるんだ。だったらこういった所に使えるかもしれないな」と、僕も触発されるところもあると思うのですね。刺激されて頭が回りだして、いろんなことを考えるかもしれない(笑)。

― 最後に。最新著書「僕の場所」を拝見いたしました。私の学生時代にモダン建築が胡散臭く、仰々しいと感じた違和感と、それでも失われなかった建築の魅力を懐かしく思い出すことができ、居心地のいい気分になれました。空間の変化や透明感、軽やかさに富んだ日本の建築の美意識を伴いながら、グローバルに活躍されている中で、フラットな精神の「小さな建築」が、どのように目の前と“つながって”いくのかお聞かせください。

[ 隈 ] 僕は自分で建築を手掛けていて感じるのは、日本の建築はいま追い風を受けていると思います。コンクリートや鉄に替わる建築のあり方を世界中がいま探し始めていますが、日本建築はそれを実はずっとやってきたんですね。木という自然素材を、ただ自然素材ならばいいと言うのでなく、“自然素材を人間にとって使える素材にするにはどうしたらいいか”というスタディを、日本ではもう何千年前からやってきたと思います。でも、意外と気づいていない人もいるんですね。日本の建築は追い風だし、環境の時代に、日本の持っているノウハウは、一番世界が求めているノウハウだし、そういうことを意識して、日本人はもっと世界に出て行った方がいいと思いますね。

― 海外に行きますと、日本の繊細さとかマイナスの美だとか、向こうの人にとってはとても新鮮で、洗練された技や美意識が評価されているのがすごくよく分かるんですが、日本にいるとどうしてもドメスティックになって気づかないですね。

[ 隈 ] そうなんですよ(笑)。世界でこんなことできないんでしょ。アートテック®も、ドンドン出て行ったらいいと思いますよ。

― はい(笑)。世界でDNPだけだと思います。輸出もしており、米国などで空港とかショッピングセンターなどに採用になっています。

[ 隈 ]  日本人だから出来る技だと本当に思いますので、期待しています。

― 本日は貴重な時間をありがとうございました。

取材後記

取材・撮影・録音まで全て社員が行い、全員初めての経験で緊張していましたが、隈さんの柔らかい物腰が緊張を和らげてくれました。
隈さんの優しい人柄や建築・素材への思いを肌で感じることができたひと時でした。今回いただいた宿題を初め、様々な質感表現に挑戦していきますので、皆様ご期待ください。

企画 : 大日本印刷株式会社 住空間マテリアル事業部 佐々木武

INFORMATION 隈研吾氏インタビュー

前編は『隈研吾と「柔らかな素材」木とアルミニウム、光、虚と実の間の美』

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