セミナー講演レポート

『スタート・イノベーション!』刊行記念

小山龍介氏×山口博志氏×上原哲郎氏×田川欣哉氏
トークセッション

TalkSession 『スタート・イノベーション!』刊行記念 トークセッション

書籍『スタート・イノベーション!』(ビー・エヌ・エヌ新社)の刊行を記念して、2015年3月13日(金)、丸善丸の内本店にてトークセッションが開催されました。本書籍の監修・解説を行った当サービスデザイン・ラボの山口がゲストとして招かれ、小山龍介氏、上原哲郎氏、田川欣哉氏と「どうやってイノベーションを起こすのか」について議論を展開しました。

本トークセッションは7つのテーマで構成されており、4名の登壇者が各テーマにまつわる思いを語っていきます。

【トークセッションの構成】
・イノベーションの必要性 - 小さな旅と大きな旅 -
・チームづくり – ファシリテーションとマインドセット –
・プロセスの設計 – 欠かせないプロセス -
・アイディアの作り方 – チームでの創出は是が非か –
・実施 – 実施しながらのリデザイン -
・学び – 何から学びを得ていくか -
・結果を受け止める – 悪い失敗 良い失敗 –

セッションの中で特に印象的だったテーマをいくつかご紹介していきます。

■プロセスの設計 - 欠かせないプロセス -

イノベーションを起こすために欠かせないプロセスとして以下にポイントを
挙げています。

【田川氏】
・プロジェクトを離陸、飛行、着陸の段階に分けて考えている。
<離陸>
・チーム作りに時間をきっちり掛けている。
・キックオフ時点の自己紹介で、今まで関わったプロジェクトの説明を一人30分程度行っている。その後、簡単な食事会をしてその人の背景にある事柄をお互い理解しておくことが非常に重要。
・メンバーが非分業的(職種で作業を分けない)に仕事ができる環境を作っていくことが大事だと思っている。
<飛行>
・抽象的な議論がロールしてしまいがちになる。
・抽象的な議論を避けるために全員が成果と思われるようなプロトタイプ(この時点では
半分は間違っていても良い)を小刻みに残していき、抽象と具体を繰り返している。
【山口氏】
・1個の単語に対してその場にいる100人が思い描くイメージはバラバラである。
・この認識のズレをなくすため、最初の段階でイメージを共有化するところを工夫している。プロセスの至る所で認識を合わせておくことが必要。
【小山氏】
・進捗、理解を共有するうえでプロトタイプは重要であると思っている。

Talk_01 トークセッションの様子1

■アイディアの作り方 - チームでの創出は是が非か -

チームなのか個人なのか、それぞれ取り組む意義について以下にポイントを挙げています。

【上原氏】
・チームでアイディア創出すると、往々にして個人単位では見出せなかった視点が見えるものである。
・おすすめの方法としては、1人で考え尽くした後にチームで集まって議論することで、より建設的な議論になり、課題も明確になる。
・アイディアが良いか悪いかどうかの判断は、深く考え尽くしているからこそ気づける。
【田川氏】
・天才型、チーム型ともに、良いパフォーマンスが出るかどうかは確率の問題であり、試せることは全て試すのが基本姿勢である。
・天才型、チーム型どちらにも囚われないことを現場でファシリテータが保ち続けることが重要だと思っている。
・この考え方に関してtakramでは振り子(障壁を潜り抜けピボットを繰り返し、ゴールにいかに到達するかを行う際の考え方)のメタファーを用いている。デザインとエンジニア、天才型とチーム型とで振り子の考えを用いて取り組んでいる。
・障壁をいかに回避していくかは、その時の選択次第であるというチームの共通理解があると良い。
・チーム型で停滞した時、何をするのかが重要になる。
【山口氏】
・アイディアは一人で考え込んでいても発展しない。
・アイディアを否定するのではなく、アイディアに乗っかっていくことで自分のアイディアの持ち球が増えていくため、チーム型の方が良いと思っている。

Talk_02 トークセッションの様子2

■実施 - 実施しながらのリデザイン -

カタチにすることで具体化していくことと、チームで共創していくことに関して、以下にポイントを挙げています。

【田川氏】
・プロトタイピングとそれを補完するストーリー・ウィーヴィングがある。
<プロトタイピング>
・プロトタイピングとは、具体的なインタラクションがあり、物理的存在として対話できるモノである。
・具体性、物体性を持たせたものはイノベーションプロジェクトを進めていく上で非常に効果的である。プロトタイピングにより理想と現実のギャップをなるべく手前で体感させている。
<ストーリー・ウィーヴィング>
ストーリー・ウィーヴィング型はビジネスとしての合理性を補う。
・旧来型の新規事業プロセス開発では抽象論が先に来て、ドキュメントによる決済、設計、実装、ストーリーを後付けするという工程であった。この工程は作るモノがはっきりしている時代には良かった。
・今のモノが売れていく様子は、人づてにSNSを介して伝播している。具体をのりしろにして抽象が周辺に結合されている。
・takramではプロダクト面の具体とコンセプト面のストーリーを同時にスタートさせ同時にゴールさせることを目指している。
・スタート時は具体も抽象も中途半端な状態で良いという理解で進め、具体的なモノの形を考えると同時に、バックグラウンドのストーリーも考えていく。
・抽象側で考えた事をモノの形にしてみると、今度はモノの形に触発されてストーリーが紡がれる。このループを作ることが良い方法だと思っている。

■結果を受け止める - 悪い失敗 良い失敗 -

結果に関して、悪い失敗と良い失敗の捉え方について以下にポイントを挙げています。

【山口氏】
・成功要因が分からない成功は悪い成功であり、学びが得られた失敗は良い失敗である。
・自分たちのアイディアと理屈だけでなく、経営層の欲しい理由にリーチしていることをセットにしないと届かない。セットで進めて行くことが重要。
【田川氏】
・例え悪い成功でも、その体験自体は長期的な視点からすると、チームにとっては良い事。
・プロジェクトの商品化の合意を取るとき上層部はセンシティブになりやすく、リスクヘッジを取る傾向があるが、商品の本質的な魅力を損なう副作用も含んでいる。
・悪い失敗として、コンセプチュアルであったところをリスクヘッジによって消してしまう事。これが起きないように常に立ち戻る事が必要。
【上原氏】
・最初に最終意思決定者を決めておく。役員の方のほうが寛容であり、そこを突破できるかできないかが重要であると思っている。
・メーカーの品質管理等のリスクがあり、悩ましい所はあるが、積み重ねで変わっていくとは思う。
・役員クラス、経営陣にいかにコミュニケーションを取っていくかが重要である。

■所感

イノベーティブな経験をされてきた方々のこれまでのプロジェクトでの重要なプロセスや局面ごとの重要なポイントを伺うことができました。所感として、少なくとも以下の3つがイノベーションを起こすための必須ポイントであるという印象を受けました。
  ①プロジェクトが始まるの前にチーム内の信頼関係を高める工夫をすること
  ②小刻みにプロトタイプを作りながらチームでイメージの認識を合わせていくこと
  ③上層部への説得
これらの気づき、視点を今後のプロジェクトに活かせていければと感じます。

(盛内)

(敬称略)