講演レポート

山形大学×米沢栄養大学×大日本印刷
合同シンポジウム
女性にとっての『快適で豊かな未来の生活』デザインプロジェクト活動経過報告

開催概要

 2016年11月11日(金)に山形県米沢氏の文化施設「伝国の杜」にて、文部科学省推進の『ダイバーシティ研究環境実現イニシアティブ 女性研究者研究活動支援事業』に携わる3機関合同のシンポジウムが開催されました。本事業で取り組まれているさまざまなプロジェクトを代表し、「共同テーマを創出するサービスデザインプロジェクト」についてDNP松尾・松田が講演しました。

 私達からは、「サービスデザインの考え方とメソッドを活用した女性研究者による『有機エレクトロニクス・健康・栄養』を柱とした快適で豊かな未来の生活を実現するための研究・開発テーマ探索プロジェクト」の活動概要と経過について話しました。

uxsketch2016_01シンポジウムポスター

講演内容1:「サービスデザイン」の考え方を取り入れる3つの意義

 冒頭では、「サービスデザイン」の考え方をプロジェクトに取り入れる意義について話しました。それは大きく3つあります。

 1つめは、文化や研究スタイルも異なる産学の多様な人々が集まって「未来の生活を創る」という今回のプロジェクトのテーマに対して、サービスデザインの「共創型/オープンイノベーション」というフラットな関係で互いに高め合いながら取り組むスタイルが大変有効であるということです。

 2つめは、これからの研究開発は「サービスドミナント・ロジック」という考え方を取り入れる必要があるということです。今まで大学における「共同テーマ」というと、技術の価値をプロダクトに応用するという研究・開発スタイルが多かったと思います。しかし、便利なプロダクトであふれてしまった現代社会で求められることは、生活者の豊かな体験を叶えるための「サービス」をデザインし、そのサービスに必要な要素としてプロダクトやアプリケーションがあるという考え方です。大学研究の研究・開発においてもこの考え方は重要となってくるという話をさせていただきました。

 3つめは、大学の女性研究者たちに、世の中と自身の研究活動が密接につながることを感じられる機会を提供することです。大学の研究者は企業の研究に比べて、より基礎研究に近いような深い研究を行っています。そのため、論文発表止まりとなってしまい、なかなかその技術を活用したプロダクトやサービスの設計・開発フェーズまでは関われていないという現状があります。サービスデザインの核である「体験価値/サービスについて考える」ことと、「普段の研究活動」が遠く離れてしまっているのです。今回、サービスデザインを用いた本プロジェクトに取り組むことで、新しい視座を提供できればと思っています。

uxsketch2016_01 講演の様子

 

講演内容2:本プロジェクトを通じて得た2つの学び

 まだプロジェクトの途中過程ではありますが、これまでの1年半の取り組みの中で参加メンバーの女性研究者の方の声として本プロジェクトで学んだ2つのことをご紹介しました。1つめは、「バックキャスティング」という考え方を用いて広い視野で新しい研究テーマを創出するいままで自分が取り組んできたアプローチとは違う方法論です。通常、研究者自身の技術でできることを起点にしてテーマを発想しがちですが、対象とする生活者の気持ちにフォーカスし、体験価値を描いてから、それを叶えるために必要な研究・開発内容を発想するスタイルは、大変新鮮なようでした。

 2つめは、多様なメンバーで議論を重ねる「共創スタイル」です。今回参加した4機関のメンバーは「女性研究者」といっても、バックグラウンドや、専門領域、研究スタイルや思考も異なるメンバーです。多様な専門家同士による毎回のディスカッションは、互いに多くの気づきを与え、さまざまな視点を得るきっかけとなりました。

所感

 今回のシンポジウムでは、4機関以外の有識者、文部科学省職員、地域住民、地域企業の方などのさまざまな人に、私たちの取り組みについて知っていただき、多くの貴重なご意見を頂戴することができました。「共同テーマを生み出すのに”サービスデザイン”が大変有意義であることがわかった」というコメントや、「産学連携である特色がでており、他の取り組み組織と比べてもユニーク。アイデアの実現化にも期待している。」との今後の活動のモチベーションにもつながる、嬉しいコメントもいただくことができました。と同時にまだまだ「サービスデザイン」という考え方が浸透していない分野が存在することも実感したため、今後も積極的に普及啓発を実施していきたいと感じました。