セミナー講演レポート

サービスデザイン思考に基づく
よりよい顧客体験のための UX 設計アプローチ

“サービスデザイン”、“UX(UserExperience)”という言葉がビジネスの現場でもよく聞かれるようになった今。ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ ( 以下、SDNA ) 
主催セミナー「サービスデザイン思考に基づくよりよい顧客体験のための UX 設計アプローチ」にて、サービスデザイン・ラボの山口がゲストで招かれ「サービスデザインの概要と
ビジネスへの広がり」について基調講演を行いました。

■サービスデザインは、様々なビジネス課題を解決できる

はじめにサービスデザインの概要について話した後、現在サービスデザインがビジネスの現場でどのような広がりを見せているのか、クライアントワークの事例や国内外から収集した最新トレンドを紹介しました。

ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ 講演の様子

サービスデザインとは、言葉通りの“サービス”をデザインすることだけに留まらず、新規
事業開発や新商品開発、地域活性化を目的としたまちづくり計画策定のほか、最近ではR&D部門のビジョン開発や研究開発テーマ策定など、様々なビジネスシーンに適用することができます。それらを可能にするプロセスやツールが整っていることが特徴でもあります。

サービスを捉える水準として、生活者の高い体験価値(エクスペリエンス)を重視し、更にはその体験価値をどのタッチポイントでどのように届け(デリバリー)、既存の市場や社会全体の中へどのように適応させるか(エコシステム)、全てに対して整合性が取れるよう価値を生み出すことが重要です。

サービスデザインは、HCD(Human Centered Design)やデザイン思考の考え方に加え、様々なビジネス課題を解決する考え方やフレームワークとしての大きな可能性を秘めていることを語りました。

ここからは、SDNAの2名の方の講演内容について少々ご紹介します。

■組織で全体論的に取り組むサービスデザイン

SDNAのUXデザイナー/インタラクションデザイナーである糸山氏は、縦割りの組織が多い
日本企業では、組織ごとに個別最適化された文化やプロセス、アウトプットが生まれてしまうという課題に対し、「組織で取り組むサービスデザイン」と題して講演しました。

「サービスデザインとは、サービス全体の利用価値に役立つUXデザイン活動を組織で全体論的に行う取り組みのこと」と糸山氏。組織で全体論的に取り組むサービスデザインとして下記3つの観点で、組織横断で「共創」を突き動かすためのポイントを紹介しました。


ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ UXデザイン活動を組織で全体論的に行うためのサービスデザイン


1.Value Proposition(提供価値)

「Goods Dominant LogicからService Dominant Logicへ」「モノづくりからコトづくりへ」と、利用者が感じる価値がモノの機能よりも、モノやサービスを利用して得られる体験へとシフトしています。このパラダイムシフトに合わせて、サービス提供者側と利用者
双方の視点を取り入れながら、価値創出の仕組みづくりを経営戦略として持つべきである。

2.Co-Creation(共創)

組織で共創に取り組む際、いきなりデザイン(設計)からはじめることは難しい。まずは、
(抽象的である)企業ビジョンを継承した、コト・モノづくりの指針となる“(0)クリエイティブビジョン”をつくり、“(1)自分事化”した課題や機会を“(2)物語化”して共有することから
始めることで、組織の文化へと繋がる「型」を持った上で、“(4)デザイン(設計)”を進めることができる。


ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ デザイン(設計)をはじめるための、「型」を持つ


3.Touch point(顧客接点)

利用者がタッチポイントごとに行動する体験は複雑である。ただ利用者は、タッチポイント全体の一連の体験に対して満足感を得ている。更に複雑なことに、1年、2年、…と期間を経て蓄積される満足感も存在する。
ゆえに利用者が得ている価値は有形・無形を問わず、時間軸に沿って複雑に変化するからこそ、その変化に対応するため組織も絶えず変化に対応していくべきである。

■できる範囲で少しずつ始める

同じくSDNAのUXデザイナー/インタラクションデザイナーである五ヶ市氏は、「できる範囲=いまある工数で、特別な予算は使わず、普段のプロセスの中で」と定義し、「明日から
できる!サービスデザイン初めの一歩」と題して講演しました。

「ホントは真のサービスデザインを実践したいところ!だが、組織にも個人にも負担にならないようにするには『できる範囲』から始めること」と五ヶ市氏。力のかけどころに優先
順位を付けて、明日から始められるプロセスとツールを紹介しました。


ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ 五ヶ市氏の配布資料から抜粋


上記の“力のかけどころ”を基本に、ユーザー像に対して共通認識を確立するための
「かんたんペルソナ」、一連の体験全体を把握してゴールを一本化するための「かんたん
カスタマージャーニーマップ」、ジャーニーマップで具体化したビジネスプランの妥当性を検証するための「ビジネスモデルキャンバス」と、サクッと作成してサクッと共有する3つのツールを紹介しました。

現場でサービスデザインやUXを実践し、組織内の普及啓発に積極的に取り組まれている
お二人のお話は大変勉強になりました。

サービスデザインが様々なビジネスシーンに適用されていく中で、組織内でサービスデザインを取り入れたいという企業も増えてきています。欧米で誕生したサービスデザインの概念が、今後ますます日本に適した形で浸透していき、ビジネスを行うにあたっての基本のマインドになっていくだろうと感じました。
今後も引き続き、普及・啓発活動を続けていきます。

(松尾)