セミナー講演レポート

TCにおける提案型サービスデザインを考える~ユーザーとの協創/共感をめざして~

 

pannelDiscussion 会場の様子

8/26(水)にTCシンポジウム2015主催パネルディスカッション「TCにおける提案型サービスデザインを考える~ユーザーとの協創/共感をめざして~」が開催されました。当サービスデザイン・ラボの山口がパネリストとして招かれ、鹿島泰介氏((株)日立システムズ)、櫻井亮氏(GOB Incubation Partners(株))、柴崎辰彦氏(富士通(株))とディスカッションを行いました。

本パネルディスカッションは4つのテーマについて議論されました。

【ディスカッションテーマ】
1.「サービスデザイン」とは何か?
「グッズドミナントロジック」から「サービスドミナントロジック」へ
「顧客経験価値の協創」...TC業務従業者に求められるUX
2.「UX」と「サービスデザイン」の関係...利用社会への考察
3.事例紹介
4.TCでの活用が可能か?
以下、ディスカッションの中で特に印象的だったポイントについていくつかご紹介します。

■「サービスデザイン」とは何か?

【鹿島氏】
・テクニカルコミュニケーション(以下TC)の説明対象がグッズからサービスに変わってきた。今後はどのように役割を変えていくべきかが課題。
・顧客のタッチポイントが複雑化していて、カスタマージャーニーマップが描きにくくなっている。
・デザイン思考は誰もがやらなくてはいけない時代。市場はテリトリーミックスの状態になる。
・UXは概念、デザイン思考は方法論として、正しい理解の上で人材を育てる必要がある。
【山口氏】
・サービスデザインは、サーカスをモチーフにとらえると分かりやすい。フロントエンドで楽しいユーザー体験を表現し、バックエンドで設計を行う。それぞれを両立させていることが特徴である。
・サービスデザインのプロセスは体系化され、適宜アップデートされていくことが不可欠であり、包括的な視点を保ちながら人間中心設計を実施していく。
・TCはサービス経済において役割を変えるべきであるとすると、サービスデザインの視点が役に立つと思っている。
【櫻井氏】
・サービスデザインの思考を取り入れる理由は、必死に顧客の要求を聞いて一生懸命頑張っていても、単にモノを作り、コトを提供するだけでは、売れなくなってしまっているためである。改めてサービスをデザインしていくことに日本、世界の主要国が注目している。
・我々自身の中にバイアスがあり、想像以上に相手のことが分かっていない。ユーザーの声に耳を傾けて課題を明確に把握した上で彼らのサービス全体を考えながらビジネスを設計していく必要がある。
・ユーザーの心は表層に現れてこない、深層的な欲求を理解することがカギになる。
・顧客のイラっとすることを取り除いていくことや、感動の体験を取り入れていくことがTCの新しい価値となるのではないかと思う。
【柴崎氏】
・IoTといった新しい接点やトレンドが事業部門、現場部門、生活者に採用されていくようになると共創型のサービスモデルが必要となる。
・ICT業界はこれから数年先までは従来型の受託型のサービスモデルをもとにビジネスが進むと思われるが、徐々に共創型サービスモデルへシフトしていく。
・共創型のビジネスを行っていくためには場が必要になる。社会との対話、社内の集合知、これらを連結する場としてオンラインとオフラインの融合を試みている。
・共創のためのメディアとしての自社メディア「あしたのコミュニティーラボ」を立ち上げた。働き方、ものづくり、地域、社会課題などソーシャルイノベーションのテーマを扱っている。
・知創コミュニティーの実現として外ラボ「あしたのコミュニティーラボ」以外に社内向けの内ラボ(「あしたのコミュニティーラボ」の社内版)がある。外から内へ、内から外への知識の受発信ができる仕組みとなっている。狙いは、メディアを使ってイノベ―ターを養成していくことである。

pannelDiscussion ディスカッションの様子

■TCでサービスデザインの活用は可能か?

ここからは、セミナー参加者の方々の日頃の悩み/課題を書いていただいた付箋を用いて、パネリストの方々がその悩み/課題に対してさまざまな視点でアドバイスするミニワークショップが行われました。印象的だったテーマをいくつかご紹介します。

<悩み/課題①:機械の修理をする人々向けのあるべきサービスマニュアルとは?>
(ディスカッション内容)
・分かりやすさや感動は、数字で測れない。数値化することで分かりやすさを定義する必要がある。
・ユーザー視点に立つと、早く直して欲しい思いがある。
・サービス視点でのマニュアルの工夫が必要。ユーザー参加型の体験ベースのコミュニティーのような場が必要。

pannelDiscussion ディスカッションの内容

<悩み/課題②:作成したマニュアルが自社のファンを増やすことに向けて役立っているか分からない。>
(ディスカッション内容)
・TC事業者の方々にとってマニュアルが自社のファンにどうつながっているか分からないという思いを抱いているとすると、チャンスがあると思っている。例えば自動車のマニュアルがとんでもなく面白いとなると、商品を持っていない人たちへも何か訴求できるチャンスができる。インパクトのあるマニュアルが作れることは武器になる可能性があり、マニュアルが自社のファンにつながってはいないだろうというバイアスを変えていけるチャンスがある。
・例えば生活者視点に立つと、現地までスマートフォンや地図アプリ、その他さまざまなサービスを使って来場している。来場までを体験ととらえると、今後の課題としてA社、B社、C社、D社をまたがったマニュアルがいかに作れるかといったスキームづくりがTCのイノベーションにつながるのではないかと思う。
・ユーザー同士がつながれる、マニュアル専用のコミュニティーのようなプラットフォームがあれば良いのでは。

■所感

パネリストの方々の盛んなディスカッションにより、連続的にアイデアが膨らんでいく様子を拝見し、TCの分野に対してサービスデザインを活かせるポイントが多数あることが伺えました。一方、TCの分野の実務にディスカッションで生まれたアイデアを落とし込んでいく方法は専門の方々の知見も必要となるため、改めて共創で取り組む必要性を感じました。さまざまな人々たちと多様な視点を保ちながらプロジェクトに取り組む意味と共創の場の必要性を強く実感しました。

(盛内)

(敬称略)