東日本旅客鉄道株式会社 IT・Suica事業本部

ICTビジネスアイデア創出プロセスの体系化とツールづくり

背景

 東日本旅客鉄道株式会社(以下、JR東日本) IT・Suica事業本部は、JR東日本グループに潜在する素材(リソース)をICTの切り口で再度見直すことで、新しい価値の創造と事業化を推進しています。

 しかしながら、サービサー(社内外パートナー)やその先の生活者のことを考えたサービスを発想するプロセスやツールが明確でなく、個々人のスキルやノウハウに依存した属人的な開発体勢で進行している状況が続いていました。

 このような状況を打破し、価値創造・事業化チャレンジの量と質どちらも飛躍的に高めるために、サービスデザインアプローチで「ICTビジネスアイデア創出プロセスの体系化」と「ツールづくり」に取り組みました。

取り組み

 今回の取り組みでは、「アイデア創出プロセスそのものが、現時点では大半を暗黙知の部分が占めている」、「創出したアイデアの対象となるサービス利用ユーザーが非常に幅広い」、「ステークホルダーが複雑で多岐にわたる」といった課題がありました。
このままではプロジェクトが曖昧模糊としたまま進んでしまう可能性も高いため、現状分析をベースとした要求開発を含む下記3ステップで推進しました。


STEP1. 要求の開発

STEP1. 要求の開発

 業務全体を俯瞰的に捉えた上で対象となる領域・プロセスを特定するために、マクロ視点(JR東日本中心)とミクロ視点(IT・Suica事業本部中心)でのステークホルダーを洗い出し、過去に実施したサービス開発プロセスの可視化をワークショップ形式で実施。プロジェクトメンバーの意識を揃えながらプロジェクト自体のデザインを行いました。


STEP2. 生活者起点の発想ツール開発

STEP2. 生活者起点の発想ツール開発

 次に、鉄道を日常的に利用するユーザーのインサイトを幅広く捉えるために、生活者参加型のジャーニーマップ作成ワークショップを実施。鉄道利用時にイヤなことがあったある1日をジャーニーマップ化し、もっとも痛みが発生した瞬間の感情を起点に深堀りすることで、鉄道利用ユーザーのインサイトを多数抽出しました。

 その後、アイデア発想と評価ができるツールを開発するために、サービスデザイナーの視点で抽出したインサイトを構造化。インサイトマップとしてまとめました。


STEP3. アイデア創出プロセスの検証

STEP3. アイデア創出プロセスの検証

 さらに、開発したツールやプロセスが実際に使えるものかどうかを検証するために、プロジェクトに関わっていないメンバーも交えた簡易アイディエーションワークショップも実施。作り手以外の視点を加えることで、より実践的なツール・プロセスへとブラッシュアップすることができました。


 本プロジェクトで最も重視したポイントは、「生活者の行動と感情をいかに網羅的かつ深く収集することができるか?」でした。

生活者起点でのアイデア創出を行う際には、気付きを発見するステップにおいて良質なインサイトやアウトカムを得られるかどうかが重要となります。ただ、JR東日本が対象とする多様なユーザーを網羅的に捉えるには通常の行動観察ベースのデザインリサーチでは非常に時間がかかるり現実的ではなく、一方でアンケートベースのリサーチでは本質的なインサイトを導くことがどうしても難しくなります。

トレードオフとなりがちなこの二つを同時に解決するために、量と質どちらも一定以上担保することができる「生活者参加型の共創ワークショップ」を用いることで、限られたリソースの中で効率的に行動・感情・インサイト抽出することを実現しました。

成果

 一連のステップを通じて、生活者起点でのアイデア発想および、発想アイデアを生活者視点で評価できるツールを開発。あわせてサービスデザインプロセスをベースとした「共創型ICTビジネスアイデア創出プロセス」を体系化することができました。