還暦、定年を経て買い物をエンジョイしはじめた団塊の世代男性

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日本の高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は年々上昇し、2014年には26.0%(平成27年版高齢社会白書)に達した。その2大要因として、①少子化(合計特殊出生率の低下)と②1947年~1949年生まれ(2015年現在68歳~66歳)の戦後ベビーブーマー、いわゆる「団塊の世代」の高齢者(65歳以上)入りが挙げられる。
団塊の世代はかつて「ビートルズ世代」などとも呼ばれ、社会現象の主役として生活者のトレンドを形成する役割を果たし、商品・サービスのマス・マーケティングの対象としても注目されてきた。
今回この団塊の世代男性の「仕事から定年退職を経て家庭へ」という大きな流れに着目し、DNP「メディアバリュー研究」のデータをもとに彼らの50代から60代後半までの最近十数年間の意識、生活、購買行動の変化を探った。

身近な人とのつきあいに関心が向く

団塊の世代男性の60歳を超えてから(2010年以降)の関心ごとの変化を見ると、最も上昇幅が大きかったものは「テレビ番組」であった。自由な時間が増えた結果であるとともに、情報源としての位置づけが上昇したためと考えられる。
その他関心が高まっている項目は、①「親子関係」「近所づきあい」など周囲との関係、②「介護」「家事」などの日々の生活にかかわる事柄にまとめられる。
60歳を過ぎた団塊の世代男性は徐々に仕事を離れ、家の中や周囲のことが生活の中心になってきた。子どもの結婚や孫の誕生などの楽しいライフイベントが増える一方で健康への不安もつのり始め、いざという時に助け合う相手として、家族、友人などとの絆の維持が関心ごとの上位となっていると考えられる。

<日常の関心ごと>
 

(注)今回の分析では、14年間毎年実施している「コミュニケーション接点に関する調査」の調査結果をもとに、1947年~1949年に生まれた団塊の世代男性の回答データをつなぎ合わせることで、年齢上昇に伴う意識や行動についての回答の推移を見ること(コーホート分析)を試みた。
本稿グラフでは調査年の下にその年における団塊の世代の年齢を記している。

身近な人からの情報への関心が高まる

日頃のメディア利用に目を転じると、団塊の世代男性は50代前半(2002年)から60代後半(2014年)までを通じてほぼ100%が「テレビ」を利用してきた世代であるが、先に述べたとおり60歳を過ぎてからテレビへの関心度は高まっている。一方、政治経済情報中心の「新聞」の利用率は50代半ば以降10ポイント程度低下している。ただ、今の若い世代に比べると新聞の利用率の低下はゆるやかである。
60歳前後(2008年)を境にして「友人・知人からの買い物情報」など身近な人からの情報の利用率は下降から上昇に転ずる。なかでも「家族からの買い物情報」の利用率は57歳前後(2005年)の44.0%から84.4%と著しく上昇しており、年齢が上がるにつれて家族との会話が活発になっている様子がうかがわれる。

<メディア利用率の推移>
 

買い物を楽しむ

団塊の世代男性は、50代の間は多くの店舗業態で利用率が低下傾向にあったが、60歳前後を境に上昇に転じている。
特に「スーパー」の利用率は60歳前後(2008年)の時に「コンビニエンスストア」の利用率を逆転し、利用率トップの購入チャネルとなっている。「スーパー」での買い物は、日々の食事のための買い物が中心であり、時間の余裕ができること、家計を意識するようになってくることから、自分の意思か否かは別として、家事参加の一環として、「スーパー」に買い物に行くと推察される。
その他、「家電量販店」、「デパート」、「ホームセンター」などの利用率も上昇している。これらの店には「スーパー」に比べると耐久消費財など家の中の生活に快適さや彩りをもたらす商品が多い。時間の余裕ができた団塊の世代男性が家の中のことにも関心を持ち、これまであまり行かなかった、若しくは時間が無くて行けなかったお店に行っている様子がうかがわれる。

 

<購入チャネル利用率の推移>
 

以上、定年退職を経て、家庭、地域社会中心の生活に入った団塊の世代の十数年の生活を概観してきた。その変化は多面に及んでいる。
団塊の世代男性は家族や友人、地域の人とのコミュニケーションを密にし、絆を太くすることにより新しい暮らしを組み立てている。そこには買い物に参加しながら生活を向上させる、エンジョイライフ消費に目覚めたアクティブシニアの姿が浮かんでくる。


DNPメディアバリュー研究「コミュニケーション接点に関する調査」
調査時期: 毎年10月
調査対象者: 首都圏50km圏内在住
調査手法: 専門調査員による訪問留置調査法
※当記事では、2002年~2014年の各調査における1947年から1949年生まれ男性サンプル(n=21~59)を対象に分析を実施しています。

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マーケティングインサイト・ラボ 荒川 篤志