<生活者潮流トーク>カジュアルギフトを起点とする新たな消費行動(前編)

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SNS時代を迎え、「スタンプ」で気持ちを交わし合うなど、生活者のコミュニケーション手段は豊かになっています。生活者のメディア接触と購買行動をとらえるDNPマーケティングインサイト・ラボでは、コミュニケーションを伴う消費としてのギフト購買に注目しています。今回はオンラインでつながっている相手にデジタルでカジュアルギフトを贈ることのできるeギフトサービスを運営する株式会社ギフティ代表取締役の太田睦氏に、SNS時代におけるカジュアルギフトの可能性をテーマにお話をうかがいます。

株式会社ギフティ
国内最大規模のeギフトサービス「giftee」を運営。「ありがとう」や「お疲れさま」などの日常のコミュニケーションの一環として、オンライン上で手軽にギフトを贈ることのできる仕組みや利用シーンがユーザーの支持を得て、2011年3月のサービス開始以降堅調に会員数を伸ばし、2016年6月末時点で、ユーザー登録数が52万人、ギフト送信数も月間5万件を突破。
 

「コミュニケーション+アルファ」が欲しい

川村:今日は「SNS時代のコミュニケーション消費」というテーマで、eギフトに取り組まれているギフティの太田さんにお話をうかがいたいと思います。はじめに、サービス内容とスタートのきっかけについてうかがえますでしょうか。
太田:2010年8月に株式会社ギフティを立ち上げました。もともと新しいウェブサービス、アプリケーションを出したいと思い、テーマを探していたところ、たまたま見つけたのがカジュアルギフトでした。私が大学生当時の2000年代初めは、ミクシィとグリーが全盛でした。グリーには、ある人の誕生日が近づくと「寄せ書きを贈りましょう」と知らせてくれるサービスがあり、よくお祝いしていたのです。卒業して就職し、仲間同士で会う機会が減っても、グリーのメッセージは変わらず届いていました。それを見て、「学生時代はよく仲間の誕生日を祝っていたのに」という「小さいストレス」が継続的にあったのです。そして、「そうだ、この『小さいストレス』を解決したい」という考えから生まれたのがギフティのサービスです。 

川村:生活者のほとんどがネットでつながる時代、メール、SNS、そしてその次に「コミュニケーション+アルファ」として、カジュアルなギフトを贈りたいという発想がきっかけだったのですね。
太田:そうですね。昔から、ウェブ上のギフトというコミュニケーションはあったと思うんです。例えばメールに動画をつけて送るのも、一種のギフトですね。しかしそういったデジタルで完結するコミュニケーションには冷たさを感じますよね。やはり実際に触れることができてぬくもり感がある、何かリアルなものとして相手に伝わることが大事だと思っていました。フェイスブックでいえば、ギフティのサービスに一番近いのは、誕生日を迎えた人のタイムラインに「誕生日おめでとう」と書くことです。最初は新鮮で面白かったんですが、みんな慣れてしまいましたよね。もうサプライズでもないし、伝わりきらないことが多いと個人的に感じていました。
川村:メッセージを送る、「いいね」をするのが当たり前になってしまい、物足りない。その次の「プラスアルファのぬくもり」を実現したのが、ギフティのサービスの特徴となり、受け入れられていったのでしょうか。
太田:そう思います。当時は「『スーパーいいね!ボタン』だね」と言われました。LINEのスタンプなどもありませんでしたから、「いいね」の次は、何か配送で贈るか、会うことになる。そのギャップが大きい、という思いがありました。
川村:その中間に位置するものとして、デジタルでカジュアルギフトを贈るeギフトのサービスが存在したということですね。そこには、人とコミュニケーションすることに、時間も労力をかけるようになったという背景があると思います。例えばLINEスタンプにしても、今では有料のスタンプも普通に購入して使われています。人とコミュニケーションをとることを楽しみたい、深めたい、豊かにしたいということですよね。そして、そのような考えの延長上にeギフトがあるということですよね。
太田:リアルでも、感謝や「お疲れさま」という気持ちを伝えたいとき、ちょっとしたものをあげることはあります。それがデジタルに置き換わった側面はあると思います。
川村:ギフティのサービスを使う人は、デジタルでギフトを贈るというスキルがある方ですが、SNSの普段の利用の仕方と連動すると思われますか?
太田:はい、少なくともECを使ったことがある方という前提がありますから、連動はしますが、いまアマゾンや楽天を使うのは当たり前で、ウェブで決済するハードルが下がっているので障害になる人は少ないと思います。どちらかといえば、コミュニケーションの上でギフトというアクションを取ることに対するハードルの方が影響すると思います。なぜこのサービスを始めたかという経緯をまったく説明せず、「こういうことができるサービスです」とだけ説明すると、「いつ贈るの?コーヒーなんてもらってもうれしくない」と言われるんです。まだ多くの人にとってeギフトの良さが伝わることの方が重要なのかなと思っています。

 


「いいね」で終わっていた関係が新しい購買層へ

川村:ギフティのサービスはどんなシーンで使われていますか?
太田:一番多いのは、バレンタインデーやホワイトデー、クリスマス、父の日、母の日などのイベントですね。やはりきっかけがある方が贈りやすいのだと思います。ギフティならではのギフトシーンでいうと、カジュアルなごちそうのお返しなど、ことばだけでは物足りないけれど、高額の贈り物では仰々しいというシーンです。仲良くなりたての人や、そこまで親しくないなど今まではギフトにしにくかった方へも、こういう新しい形なら贈りやすいという方も多くいらっしゃいます。贈った方は、相手が期待していない状況で贈ることが多いので、いい反応が戻ってくることが多く、リピーターになる方がとても多いんです。そして、贈られた方も「こういう新しいギフトの形があるのだ」と認知し、次から贈る側になってくださることが多いんです。贈られる側から贈る側へ、その転換の割合がとても高く、いい形で贈り主さんが次の贈り主さんを作り出しています。
川村:住所を知らないネット上だけでつながっている人へもギフティならばギフトが贈れるなど、気軽に贈れるのが魅力なのですね。
太田:最近はリアルの友人であっても住所を知らないことが多いんです。また、サプライズでギフトを贈りたい場合は住所は聞けないですよね。ギフティにはネットで来た通知に自分で住所を入れる配送ギフトもあるのですが、どちらにしてもギフティで贈られている関係性は、ほとんどが友だちなどリアルの関係です。
川村:イベントや誕生日にもともとギフトを贈っていた人がギフティのサービスに置き換えるだけでなく、「ギフティのサービスがあるから贈る」という新たなギフト購買が生まれているということですね。これまでは相手の住所を知らないからと諦めたり、今までネット上の「いいね」で終わっていた関係に購買が発生しているわけです。コミュニケーションにお金をかける層が生まれてきているのだと思います。
太田:ただ、こういうサービスがあるからといって誰にでも贈るわけではありません。リアルでもSNS上のつながりでも、「関係性を維持したい」「もっと関係をよくしたい」という相手に対して贈ることが多いと思います。
川村:生活者がSNSを通じて多様なコミュニケーションを使い分けるようになるなかで、お礼として物で返すのも仰々しいし、ことばだけでも足りないなど、きめ細やかな「温度感」に対応する新たなコミュニケーションが生み出されているのですね。

後編につづく) 

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マーケティングインサイト・ラボ 川村 美佳