<生活者潮流トーク>カジュアルギフトを起点とする新たな消費行動(後編)

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前編に続き、eギフトサービスを運営する株式会社ギフティ代表取締役太田睦氏と共に、SNS時代におけるカジュアルギフトの可能性を探ります。

非日常のコミュニケーションで日常を贈る

川村:デジタルで贈られるカジュアルギフトとして適している商品のポイントはありますか?
太田:3点あります。基本的に店舗に行って受け取るギフトなので、店舗数がある程度あること。2点目は価格帯。数百円の気持ちを贈りたいという方が多く、ボリュームゾーンは5~600円です。3点目はそのブランドのギフト性、ギフトに合うブランドかという点です。この3点が揃っている商品はすごく数が出ています。商品の特性に加えてギフティの演出もあります。実際に贈っているのはコンビニのコーヒーでも、デジタルのギフトカードをつけてメッセージを添えたり、季節感を出せる。贈るコーヒーは同じでも、インターフェースが変わるだけで受け取る側の心証が変わるんです。
川村: eギフトにおけるラッピングですね。太田さんが考える「ギフト性」というのはどういったものですか?
太田:言語化しにくいんですが、「非日常」という面があるかなと思います。ただシチュエーションとして非日常感を演出することはできるんですが、もらったもの自体はリアルと変わらないのではないかと思います。
川村: eギフトの場合、「日常をもらう」という、新しいコミュニケーションが生まれているということでしょうか?
太田:そうです。リアルではコンビニのコーヒーなど、ギフトとして贈るものとして認識されていないものも、 eギフトとして渡すことによってギフトとして成立する、ということです。
川村:ギフティのサービスでは、物を指定して贈る場合と、スターバックスのeギフト500円券のように店は指定するけれど、そこからは自分の好きなメニューを選べるという自由度が高いギフトがありますよね。
太田:物を指定すればするほど、メッセージ性は強くなってきます。汎用性の高いギフトは「商品券」。なんでも買えるんですけど、そこには逆に何のメッセージもなく、「気持ちです」という感じだと思うんです。けれど、例えば「スタバの500円券」という場合、選べるのだけれど、コーヒーというタグが付きます。一般的にコーヒーには、「お疲れさま」というメッセージ性がありますよね。具体的なメッセージをつけたいのか、ぼかしたいのか、贈る方が選べる方がいい。
川村:私たちの調査では、すでに持っている物を贈ってしまったらむしろ迷惑になってしまうので、吟味しながら相手に喜ばれるギフト選びをしている生活者の姿をとらえています。気持ちは伝えたいけれど、ギフト商品をうまく選ばなければメッセージも伝わらないという不安があるんです。ギフティのサービスであれば、メッセージがきちんと伝わるという安心感があります。
太田:ギフトというのは贈る側の自己満足の面があると思うのです。特にギフティの場合少額だし、「いいね」をする感覚です。ですから、贈りたい人のニーズにマッチする、汎用的なものから具体的なものまで揃っていることが大事だと思います。

非日常の楽しさをシェア、拡散する

川村:企業がギフティのサービスを利用する場合、どういうところに効果を感じられているのでしょうか。
太田:例えばコンビニでいえば、一般の方が行く店舗は固定してきますよね。通勤や通学路の途中など、そのパターンを崩したいのです。いつもは別のコンビニだけれどローソンに来て欲しい。そのきっかけが、ギフティを通してもらった何かであり、ついでにほかの商品も買おうとなる。来店のきっかけを作ることができるところだと思います。
川村:メーカーの場合はどうでしょうか?
太田:メーカーは新商品のトライアルやサンプリングとして利用されることが多いですね。今まで郵送していたものを、皆さんにデジタルで引換券を配って、近くの店舗で受け取ってくださいということです。そして「1本友だちに贈るとあなたももらえるよ」というキャンペーンにすることが多いです。サンプリングの効率化もありますが、ギフトの文脈に乗ったブランド消費という側面もあります。つまり、さきほどの「非日常」を狙っているところがあります。
川村:企業からただサンプルを受けとるのではなく「B to C to C」、友だちから何かをもらうと、「○○ちゃんからもらったもの」という文脈がついて、商品への愛着が高まりますよね。
太田:はい、その商品をギフトで贈るブランディングをしていきたいという狙いがあるなら、ギフティとはとても相性がいいと思います。最近ポッキーの裏にメッセージを書ける欄があったりしますよね、そういう試みをウェブでやるということです。
川村:メーカーが、ギフティーのサービスを利用する場合、どういうところに効果を感じられているのでしょうか。
太田:どこまでシェアされたか、バイラルでどれくらい広がるか、広がりやすいツイートのしかたはどんなものか、というところだと思います。
川村:シェアされやすい、より広がるんじゃないかという狙いが大きいということでしょうか?
太田:CtoCのギフトは、ほとんどがLINEとメールで贈るクローズドなコミュニケーションのなかでのやりとりなので、キャンペーンの場合ツイッター限定にする場合などもあります。
川村:なるほど。ツイッター限定にするとシェア効果は高いですか?
太田:高いです。数万個のキャンペーンでも半日で終わってしまったりします。
川村:それは参加した人も、ただ物をもらうだけでなくコミュニケーションを楽しんでいるから、商品は「日常」でも、そこに「非日常」が生まれているという感じでしょうか?
太田:はい、そういうキャンペーンになるよう仕立てています。たとえば、「あなたにも1本あげるから、友だちに1本贈って」、「Send and get1」という形ですと、「自分ももらえるから贈るね!」とお祭りのような感じになります。ギフトというよりイベント感覚なのではないでしょうか。
川村:そこに物が介在する楽しさがあるんでしょうね。フェイスブックの「いいね」だけではなく、そこに物が介在するとちょっと違って楽しい。
太田:キャンペーンが始まると、平日の場合まず昼休みにピークがあり、また夕方5、6時くらいに2度目のピークが来るんです。学校や仕事が終わって実際に交換した人がSNS上でシェアしだして、またピークが来るのです。この現象はおもしろいなあと思います。イベントとして楽しいことに加えて、無料とはいえ1本しか贈れないキャンペーンで友人から選ばれたといううれしさからシェアする。それが拡散するという感じです。
川村:CtoCの拡散の様子が見える化されているのは面白いですね。
太田:そうですね。そのように新しい商品を手にする機会ができるので、ギフトの力は、ブランドスイッチのきっかけを作る可能性が高いと思います。
川村:ギフト・コミュニケーションの力ですね。私たちの調査でも、自分のための買い物なら1円でも安く買いたいけれど、ギフトを買うならちょっと高くてもいい、と志向が変わるんですね。また最近はネットで情報がたくさん出ているので、もらった物について調べたり、自分で同じメーカーの別商品を買ってみようなど商品との新たな出会いにもなっています。SNS時代ならではのコミュニケーションの力を消費に転換していく工夫をもっともっとしていきたいですね。本日はありがとうございました。
太田:ありがとうございました。

ギフト意識(女性)


DNPギフト・コミュニケーション研究
生活者のメディア接触と購買行動が変化する中で、コミュニケーションを伴う消費として「ギフト購買」に注目。定点的にギフト行動、ギフト意識の変化とらえ、生活者のポジティブな購買行動の創出に取り組んでいます。

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マーケティングインサイト・ラボ 川村 美佳