RFM分析はもう古い!? これからの顧客分析軸とは(前編)

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筆者は、DNPのコンサルティング部門で、CRMの戦略立案と実行支援を主に担当している。近年CRM戦略の実装手段のひとつとして、プライベートDMP※1(以後DMP)の導入を検討するクライアントが増えており、DMPを導入することで従来のRFM分析に置き換わる新たな顧客分析軸の可能性が見えてきた。その分析軸について、3回にわたって述べていきたい。

失敗続きのCRM

ご存知の通り、CRMとはCustomer Relationship Management の頭文字をとった略語である。さまざまな和訳があるが、「顧客関係管理」と訳されることが多い。CRMとは、顧客との関係を管理しながら企業と顧客の間に発生するコミュニケーションをより良いものにし、顧客のLTV(生涯価値)を高めることで、収益を上げていこうといった経営手法のコンセプトである。これは1990年代に米国で生まれ、日本では1990年代半ばから2000年代にかけてさまざまな取組みがなされるようになった。誤解を恐れずに述べれば、この時代のCRMはシステムを導入することが目的となり、次々と失敗していったと筆者は考えている。さらに言えば、時代が変わった2010年代でも同様の失敗が繰り返されるのではないかと危惧している。

なぜ、失敗は繰り返されるのだろうか?

もちろん、企業ごとに事情は異なるが、その原因を社内のIT部門や開発を受託するシステム開発会社に求めるのはあまりにも短絡的な発想だ。その一端は、ツールを使うマーケティング部門にも存在すると筆者は感じている。マーケティング部門を取り巻く環境変化が激しくなるなか、その変化を十分とらえきれないまま、新しいシステムを導入しようとしていないだろうか。その現象を物語るかのように今、RFM分析が大きな岐路に立っている。
RFM分析に代わるあらたな顧客分析軸の話に移る前に、本編ではマーケティング部門を取り巻く3つの環境変化について触れておきたい。

3つの環境変化

第1の変化は、ICTの進化である。具体的には、従来のID-POSやコールセンターの顧客情報のほかに、Webのアクセスログ、スマートフォンなどのアプリケーションログ、さらには他社が集め、非個人情報化したオーディエンスデータを1つのプラットフォーム※2上で扱うことが可能になってきた。さらに驚くことに、それをAI(人工知能)や機械学習機能と組み合わせることでマーケティング施策の実行、効果計測、その結果に応じた次のアクションを選ぶところまで、半自動的にできるようになってきた。こうした背景をもとに、従来のRFM分析ではとらえることが出来なかった優良顧客をより正確にとらえることが可能になってきた。

第2に企業に対する生活者の態度表示変化である。2010年がスマートフォン元年といわれるように、インターネットを活用する生活者のデバイスがPCからスマートフォンに移り変わってきた。これは生活者の情報収集活動にも変化を与え、電車での移動中やちょっとした隙間時間にインターネットへアクセスし、興味のある情報を瞬時に取得するようになった。さらにSNSなどにより生活者からの情報発信数も増え、生活者間の結びつきも強くなってきている。
こうした行動の変化のなかでも近年、2000年代には無かった特徴的な行動が目立つようになってきた。それは、生活者自身が企業との向き合い方を明示的にあらわす、”フォロー”、”シェア”といったエンゲージメントと呼ばれる行動である。

第3に企業の経営層からみたマーケティングにおけるコスト感覚の変化である。第2の理由で述べたように、生活者は、より自分自身にフィットする商品を選ぶようになり、企業側はこれまでに実行してきたマーケティング施策における投資対効果に疑問を抱くようになった。この発想は、リーマン・ショック以降により顕著に現れ、マーケティングROI(Return On Investment)※3という概念が生まれた。皆さんのなかでも1度はこのことばを聞いたことがあるのではないだろうか。

マーケティング部門を取り巻く3つの環境変化

マーケティング部門を取り巻く3つの環境変化

RFM分析の限界

マーケティング部門のCRM担当者のもっぱらの課題は、LTVを高めるため、顧客一人ひとりにあったきめ細やかなサービスを提供することである。これを実現しようとすると、手間も暇もお金もかかるが、現実は、そうした経営資源には限度が存在する。そのため、自社にとって真に優良な顧客、もしくはその顧客に近い位置にいる顧客(長期的に取り引きしたいお客さま)が誰であるかを見極める必要がある。CRMでは、その手段の王道としてRFM分析が開発され、RFM分析にいくつかの評価軸を足しあわせることで、各企業独自の優良顧客を定義してきた。しかし、今後導入が進むであろうDMPがもたらす世界では、これまでのCRMの常識だったRFM分析を使った優良顧客定義が逆に仇となってしまう可能性がでてきた。

RFMとは

RFMとは

次編は、筆者が考えるこれからの顧客分析軸を従来のRFM分析との違いをふまえ述べていきたい。

※1プライベートデータマネイジメントプラットフォームの略。企業内に存在するあらゆるデータを一元管理し、広告配信やメールなどのアクションを最適化するためのシステム。または、役割を果たすシステム群の総称であり、主な製品としては、DNPが提供するオムニチャネル対応型データ・マネイジメント・プラットフォーム「diip」などがある
※2ハードウェアとソフトウエアを備えたシステムの集合体および、そこから提供されるサービスを利用者側からみた名称
※3マーケティング上の投資対効果を客観的に把握するための指標

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情報イノベーション事業部 C&Iセンター コンサルティング本部 岩井 翔吾