RFM分析はもう古い!? これからの顧客分析軸とは(中編)

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筆者は、DNPのコンサルティング部門で、CRMの戦略立案と実行支援を主に担当している。近年CRM戦略の実装手段のひとつとして、プライベートDMP※1 (以後DMP)の導入を検討するクライアントが増えており、DMPを導入することで従来のRFM分析に置き換わる新たな顧客分析軸の可能性が見えてきた。本編からはその分析軸の中身について、述べる。

RからDへ

まず、RFM分析の「R」にあたるRecency(最終購入日)という軸について述べていきたい。 Recency(最終購入日)とは、生活者が最後にお店の商品を購入した日のことであり、その日からの経過日数に着目してきた。この軸は主に生活者の離反状況を判断する軸として使われ、たとえば、最終購入日から1カ月経過した生活者と1年経過した生活者とを比べた場合、どちらが再購入する可能性が高いか(離反していないか)といった判断に使われる。
しかし、前編で述べた第1の変化により、オンライン、オフライン問わず、生活者の行動や状態がデータからよりつぶさに読み取れるようになった。例えば、PCを昨日買った生活者が次の日に来店してきたとする。Recency(最終購入日)としては経過日数が1日となり、再購入の確率が高い生活者であると判断できる。そのため、一般的にPCとセットで買われている関連製品をおすすめしようとするだろう。
しかし、よくよく考えてみれば、昨日購入したPCに何かしらの不具合や配送のトラブルがあったかもしれない。そうした場合は関連製品のレコメンドではなく、フォローするコミュニケーションが必要になる。対面販売であれば生活者の様子を伺い、関連製品をおすすめすべきか、サービスカウンターにて、不具合の詳細を確認すべきかを判断し、対応するだろう。
従来これをオンライン上で行うのは至難の業だったが、ICTの進化によってこのような生活者の時系列的な行動の文脈を、より正確にとらえることができるようになってきた。
先ほどの例を用いるならば、PC購入の翌日にWebサイトを訪れた生活者が、ヘルプやQ&Aのページを確認している場合は、何かしらのトラブルと判断し、「何かPCの不具合でお困りですか?」というコミュニケーションができるようになった。
このRecency(最終購入日)に代わる軸の呼び名は、まだ一般的にはないと思われるので、筆者はこの新たな軸を「継続期間」という意味合いのDurationと便宜的に呼ぶことにしている。読みは、デュレーションと読む。

RecencyとDurationとの違い

RecencyとDurationとの違い

FからIへ

次に、RFM分析の「F」にあたるFrequency(購入頻度)という軸について述べたい。多くの場合、 Frequency(購入頻度)は一定期間内の購入回数を使って算出され、購入回数が多ければ多いほど優良顧客であると判断してきた。
このFrequency(購入頻度)は、2つの性質に分けることができる。
1つ目は、度々購入を繰り返しているという事実を重視している点。
2つ目は、度々購入してくれる生活者は、きっと愛顧やブランドに対する信頼度が高いだろうという文脈を含んでいる点である。
1つ目は、Recency(最終購入日)部分で述べた第1の変化によって、Duration(継続期間)の一部として統合されると筆者は考えている。
2つ目は、前編で述べた第2の変化により、SNSなどにより生活者がより明示的にお店や企業に対して意志を示すようになり、愛顧やブランドに対する信頼度を測るバリュエーションが増えてきた。

そうなった今、Frequency(購入頻度)の2つ目に込められている愛顧やブランドに対する信頼度といった観点をより拡張してとらえ直す必要があるのではないろうか。

例えば、購買とは直接的に関係ないスマートフォンアプリケーションをリリースしたとする。その使用方法には段階的な愛顧の度合いを測るレベルが下図のように定義されており、生活者がどの状態にいるかで、優良顧客を判断しようとする試みである。

愛顧やブランドに対する信頼度の尺度定義(例)

愛顧やブランドに対する信頼度の尺度定義(例)

このような、 Frequency(購入頻度) に代わる新しい軸の概念を、既出のことばで表現するならば、Engagementといったり、一部ではLoyaltyと呼ぶところもあるだろう。だが、筆者はこのような概念を「親密」という意味合いのIntimacyと呼んでいる。
先のDuration(継続期間)と比べたときに違いが分かりにくいが、その違いを述べるとするならば、 ともに生活者の行動データを扱うが、Duration(継続期間)は生活者の行動履歴のログを時系列的に解釈することが中心になるのに対し、Intimacy (親密)は生活者とお店や企業の間にあるスタンスや距離感を尺度とする点で異なってくる。

FrequencyとIntimacyとの違い

FrequencyとIntimacyとの違い

次編は、最後のMonetary (購入金額)に代わる新たな軸と、これまでに述べてきた3つの軸の有用性について述べていきたい。

※1プライベートデータマネイジメントプラットフォームの略。企業内に存在するあらゆるデータを一元管理し、広告配信やメールなどのアクションを最適化するためのシステム。または、役割を果たすシステム群の総称であり、主な製品としては、DNPが提供するオムニチャネル対応型データ・マネイジメント・プラットフォーム「diip」などがある

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情報イノベーション事業部 C&Iセンター コンサルティング本部 岩井 翔吾