生活者意識の変化に寄り添うブランド戦略~洗濯用洗剤『セフター』[前編]

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昨今、一般衣料品用洗剤(洗濯用洗剤)の市場は、生活者の節約志向やメーカー間の競争激化により、厳しい環境下にあります。しかしその中で、CO・OP(コープ)の洗濯用洗剤ブランド『セフター』は、生活者意識の変化を的確に捉えてマーケティングを展開し、着実に成果を上げ続けています。今回はCO・OP『セフター』が、どのようにして現代の生活者意識の変化を捉え、どのように対応策を練り、どのようにしてブランドの立て直しに成功したのか、その要因・着眼点などについて、DNPのマーケティング・コンサルタントである江里が、セフターのブランド責任者である日本生活協同組合連合会の松岡久美氏にお話を伺いました。

高度化し続ける、生活者の洗剤ニーズ

江里
セフターが誕生した1960年代は、日本全国で河川の汚染が進み、洗剤による水環境への影響が非常に大きな社会問題となっていました。生協の組合員様は意識が高い方が多く、もっと環境に配慮した商品を求める声が多くあり、それに応える形で誕生したのが『セフター』だと伺っています。それから40年ほど経った今、洗剤に関する生活者意識の変化をどのように捉えていますか?

松岡
この40年で生活者の意識は大きく変化し、組合員のニーズは年々、高度化していると感じています。
もともと、洗濯は毎日当たり前にするもので、日々の汚れを落とすためのものでした。よって、洗剤には「汚れを落とす」「洗浄する」という機能が求められ、そのうえで水環境にも配慮することが重要でした。しかし、今やそれは当たり前。ここ数年は、ただ汚れを洗い落とすだけでは満足してもらえなくなりました。抗菌防臭機能や、香りを楽しめるもの、時短など「洗浄する」以外の付加価値のニーズが高まっています。他社商品を見ても、今では「時短」や「すすぎ1回」が標準になり、洗浄よりも「抗菌」がメインになっています。私たちとしても、これらのニーズの多様化に対応するために、『セフター漂白剤入り(粉末)』『液体セフター抗菌プラス』『セフターエナジー抗菌・防臭』といった様々な新商品を展開してきました。

江里
組合員様のニーズの高度化と商品ラインナップの増加は、『セフター』のマーケティングにどのような影響を及ぼしましたか?

松岡
ニーズの多様化に合わせて『セフター』は8つの商品シリーズを設けていましたが、それぞれの商品シリーズの提供価値の整理や役割の棲み分けが不十分だったため、商品の特徴や名前が組合員に十分に伝わっていないという状況にありました。こうした問題を解決すべく、2015年4月に「セフター再構築プロジェクト」が始まりました。このプロジェクトの効果は大きく、ここ1年でも様々な変化や改善がありました。

日本生活協同組合連合会 松岡久美氏

「わかりやすさ」が、組合員の「うれしい」「満足」につながる

松岡
まずは、組合員が今、何を不満に感じているのか調査するところから始めました。私たちはそれまで組合員数の増減などの数字で一喜一憂し、きっと次はこれが売れるだろうと、数字だけで判断しているところがありました。しかし、それでは組合員のニーズは見えてこない。実際に現場に出向き、一人一人のお顔を見て、どんなお困りごとがあるのか知る必要があると思いました。
そこでは、いろいろなことが見えてきました。組合員にデプスインタビューを実施したところ、『セフター』は知っているけど、各ラインナップの特徴をきちんと理解している人は一人もいなかったんです。また、生協は「安全・安心」というイメージから、汚れ落ちが弱いと思われていることもわかりました。問題点がはっきりしたことで、もっと価値をわかりやすくお伝えする必要があることに気づきました。
組合員の声はなかなか開発部署までは届きませんが、こうして汲み上げることで、「うれしい」「満足」に進化させていかなければ、と思っています。世代や生活環境によっても変わる組合員のニーズ一つ一つを追いかけ、つねに、より多くの人に満足してもらえるような商品を開発していきたいと考えるようになりました。

江里
たしかにデプスインタビューには本当に多くの気付きがありましたね。私の中で印象に残っているのは、組合員様の多くが、セフターに対して、肌や生地へのやさしさや、家族向けであることといった安全・安心なイメージを強くお持ちだったことです。これが汚れ落ちが弱いというネガティブなイメージのもとになっていた可能性が高いのですが、前向きに考えると、洗浄力の根拠を正しく伝えることができれば、「安全・安心かつ洗浄力の高い商品」という独自のポジションが築けるのではないか、という可能性を感じました。
そしてそういった声をもとにブランド戦略を考え直し、2016年6月には『セフターエナジー抗菌・防臭』『セフターエナジー洗浄』の2品をリニューアルされました。この反応はいかがでしたか?

DNP 江里英之

松岡
これは大成功でした。DNPの「ブランドキズナ診断®」やいろいろなアドバイスを受けながら、社内でもディスカッションした結果、訴求ポイントが明確になりました。具体的には、ラベルの色を機能ごとに分け、「抗菌防臭」「強力洗浄」といった四字熟語を使うことで、商品の特徴や機能が一目で伝わるように改善しました。
以前は「プラチナ」という言葉を使っていたのですが、これではどんな商品かわからない。しかし、「強力洗浄」とわかりやすい言葉に変えることで、『セフターエナジー強力洗浄』は前年比117.8%になるなど、大幅に供給高(売上)が伸びたんです。一目で伝わる工夫をすることは大事だと思いました。
さらに、ラインナップ内で優先順位をつけ、重点商品を明確にしました。現在は『セフターエナジー強力洗浄』『セフターエナジー抗菌・防臭』の2品を「おすすめ商品」という位置づけにしています。

江里
先日3月1日の日経新聞で、生活者の節約志向に関する記事が掲載されました。日経POS(全国約450の小売店の販売データを集計する販売時点情報管理)を使い、スーパーで販売されているさまざまな品目(商品分野)について、2017年1月の店頭販売価格と前年同月の価格と比較したところ、一般衣料品用液体洗剤はなんと前年比約22%も値下がりしていたそうです。そのような厳しい市場環境において、セフターの売上の伸びは素晴らしいですね。
しかし一方で、メーカーの立場からすると、商品ラインナップの絞り込みは勇気が必要だったのではないでしょうか。

松岡
そうですね。しかし、そうすることで効率の良い商品配置が可能になったと思っています。こうした方針は、直接組合員に届ける立場である会員生協にも、きちんと理解してもらうことを重視しました。オススメ商品2品を伝えて、「これを中心に他商品も整理していきます」とシンプルに伝え、それが組合員にも伝わっていく。これは会員生協にとっても発注しやすいと好評でした。
※全国各地域の生協のこと。共同購入や店舗などを通じてCO・OP商品などを販売している。

仮説の起点は組合員の顔

松岡
2016年は各会員生協の配送センター担当者の学習会に足を運んだり、会員生協の勉強会でグループディスカッションに参加したりして、いろいろな方の話を聞きました。こんなことを聞かれるんだ、と勉強になり、実際に使う人の顔が見えてきたことで、私たちの意識も変わったんです。
組合員を取り込むのではなく、顔を見て、ニーズを知って、「ここですよ」と誘導するとうまくいく気がしています。同じ洗濯をするにしても、家庭によって汚れの性質や求める効果は違う。お子さんがいる組合員には、「お子さんの服に菌が残るのは嫌ですよね?この商品は抗菌効果がありますよ。」とお伝えしたり、高齢の組合員には「気になる臭いに。防臭効果がありますよ。」とアプローチするなど、その世代に響くきっかけとなる言葉を伝えられるといいのでは、と思います。
私たちにとって、仮説の起点はつねに組合員の顔です。データを見ているだけじゃわからないこともあるので、できるだけ多くの人に会うことを重視しています。動き出すといろんな疑問点が出てくるので、それを一つ一つ解決していきたいと思っています。まずは重点商品を絞り込んでテコ入れし、そのうえで他の商品に求められるニーズを探りながらテコ入れしていく。訴求すべきポイントも組合員一人一人違うので、泥臭く、一歩一歩進んでいる感じです。
『セフターエナジー強力洗浄』についても、もうひとひねりしたいと思っています。特徴は立ったけど、組合員にとっての魅力はまだ見えていない。たとえば、「泥汚れに強い」と謳っても、高齢の組合員には響かない。でも、確実に気になっている汚れはあるはずだから、「いつも気になっている、こういう汚れが落ちるんですよ」ときちんと伝えていくことも必要だと思っています。
昨年のリニューアルの成功に満足せず、会員生協とも連携しながら、継続してブラッシュアップしていかなければと思います。

江里
近年のマーケティングでは、データ活用の重要性が叫ばれていますが、松岡さんのお話は、「実際にお客様の顔を見ることが最も重要」ということですね。マーケティングの現場でご活躍される松岡さんだからこその臨場感のあるお話だと思います。後半は、DNPの「ブランドキズナ診断®」の結果見えてきたことや、セフターの今後の展望についてお話を伺います。

後編につづく)

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情報イノベーション事業部 C&Iセンター デジタルマーケティング本部 江里 英之