生活者意識の変化に寄り添うブランド戦略~洗濯用洗剤『セフター』[後編]

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「ブランドキズナ診断®」による気づき

江里
今回のプロジェクトでは、DNPの「ブランドキズナ診断®※1」を実施していただきましたが、こちらはいかがでしたか?

松岡
とても面白く、多くの気づきがありました。お客様を「ブランドへの愛着度」と「洗剤に関する情報受発信度」という2つの軸で4分類するフレームが興味深かったですね。

江里
ありがとうございます。ブランドキズナ診断®の結果、セフターの顧客には「非計画型顧客」(下図赤枠)が多いことがわかりました。「非計画型顧客」は、商品ブランドへの愛着度(下図縦軸)と洗濯用洗剤に関する情報受発信度(洗剤に関する情報を自ら積極的に収集・発信する度合い、下図横軸)がどちらも低く、店頭価格やその日の気分などで購入商品をコロコロ変える客層のことです。「非計画型顧客」は4つの客層の中で最も人数が多いため、数が多いこと自体は一概に悪いとは言い切れません。しかし「非計画型顧客」が多数派を占める状態を放置すると、固定ファンが少ない状況が長引く事になり、ブランドの成長が鈍化する恐れがあります。この診断結果に対する感想はいかがでしたか?

洗濯用洗剤ユーザー(生協組合員)の顧客特性<要約>

松岡
正直なところ、かなり驚きました。『セフター』は発売当初から“環境性能”や“洗浄力”などを磨いてきたにも関わらず、組合員は時短、節水、節電などの“効率”や、お得感が感じられる“価格”などを評価していることが見えてきました。私たちが磨き続けてきた提供価値と組合員のニーズが噛み合っておらず、価値に納得した上での指名買いやリピート購入にはつなげられていなかった、というショッキングな事実が見えてきました。

江里
確かに提供価値とニーズの乖離が確認できましたね。また、提供価値の浸透不足も見受けられました。例えばセフター商品の洗浄力は、製品試験ではナショナルブランドに負けない結果が出ていたにもかかわらず、組合員様からの評価は極めて低いものでした。診断結果から類推するに、CO・OP=安全・安心というイメージが強すぎて、「CO・OPの洗剤 ≒ 安全・安心 ≒ 洗浄力控えめ」という連想をする組合員様が多かったのではないかと思われます。ブランドキズナ®診断の結果を踏まえて、ブランドの方針をどのように転換されましたか?

松岡
私たちとしては、これまでは「トライアル購入促進」に重点を置いていましたが、2016年度からは「継続購入促進」に力点を置きたいと考えています。ブランドキズナ診断®で言うと、「非計画型顧客」を「習慣型顧客※2」にしていきたいと考えています。2回目、3回目と買ってもらえるような仕掛けづくりをしていくつもりです。
2017年度の目標は「私はセフターが好き」とお客様に言ってもらうこと。「この商品、いいよね」と周りにも語ってくれるようなファンを増やしたいですね。そうして「非計画型顧客」を「習慣型顧客」へと引き上げ、そこからさらに「コミュニケーション型顧客※3」に引き上げていきたいと思っています。とにかくリピートにつなげることを重要視したいですね。

江里
なるほど。より具体的な目標の設定ができるようになったのですね。

松岡
そうですね。診断を受け、気づいたことから様々なトライアルができていると思います。例えば、最初から洗剤本体ではなく、詰め替え用を買う人が一定数いることがわかったのですが、今その理由を調査中です。単に安いからなのか、あるいは「本体を最初に買って、その後に詰め替え用を買う」という流れ自体が実はもう常識的ではなく、使い終わった他社製品のボトルに詰め替えるのが当たり前なのかもしれないなど、いろいろな仮説を立てることができます。これがわかれば突破口になる気がしています。いずれにせよ、必ず最初に本体を買わなければいけない、というわけではないので、使い始める際の門戸は広い方がいいと思いますが。

大容量化する消費者の志向、変化する流通

松岡
「非計画型顧客」は価格にシビアな人が多いです。洗剤はどうしてもその観点で選ばれる部分があるので、売り場で他のナショナルブランドと比較されていることは間違いありません。価格勝負ではありますが、どうしたらCMをうっているような他社製品に負けずに選んでもらえるか。また、選んでもらった場合、それはどうしてなのか。常に購入のきっかけを探る必要があると思います。
そうして選んでもらったら、「また買いたい、使い続けたい」と思ってもらうこと。本体だけでなく、大容量の詰め替え用であるCBX※4やスタンディングパウチといった、次の商品につなげていくことも大事だと思います。今、消費者の志向は大容量化していると言えますからね。口栓付きパウチ商品など他社からもたくさん出ていて、消費者がそこに向いているのは事実だと思います。面白いことに、大容量だとそれだけ価格も高くなるわけですが、そこには左右されていない印象があるんですよね。価格にシビアな面がある一方で、お得感があれば購入してもらえる、ということなのか。理由を探りつつ、今ある大容量ラインナップの改良も検討していきたいです。詰め替えの仕方や容器の使い勝手など、小さなところが大事だと思うので。

江里
大容量化志向の背景には、デリバリー網の発達や、週末にまとめ買いする人が増えたこと、などがありますよね。生協の強みは週1で届けてもらえる確立したデリバリーがあることだと思うのですが、このあたりはいかがですか?

松岡
確かにそこは強みではあると思うのですが、今はAmazonのような即時配達や、大容量商品をネットでまとめ買いするのが一般的になるなど、流通も変わってきています。組合員も日々こうした新しいものに接している中、今のままで満足してもらえているのか? ということは考えなければいけないと思います。洗剤同様、流通に対するニーズも高度化し続けているので。
宅配市場では安定した市場がありますが、つねに組合員に接して、ニーズを咀嚼してやっていく必要があると思います。競争に終わりはないですね。その際もやはり、仮説は頭で考えるのではなく、組合員の顔を直接見て、ニーズを咀嚼したうえで政策を立てていく、ということを大事にしていきたいです。

「商品は組合員の財産」ということに改めて気づきました

江里
ここでもやはり、“仮説の起点は組合員の顔”ということですね。

松岡
はい。綺麗にまとめるのもいいけど、生協では泥臭くやるくらいの方が合っているんですよね(笑)。プロジェクトに参加していない人にも同じ温度感で伝えるには、綺麗事だけでは通じない部分があるので、実践的に考えると最終顧客はどうかと考えながら、独自にアレンジして使わせていただいています。私たちが直接商品を届けるわけではないので、関わる人全員に均一に伝える必要があるんです。金太郎飴のように、どこをとっても同じになるように(笑)。
ブランドキズナ診断®を行ったことで、今までは供給高などの数字からしか判断できていなかったものが、組合員のニーズをどう引き出して整理していくのか、ということを考えられるようになりました。これは本当にいい経験でした。「習慣型」など漢字での表現はとてもわかりやすくていいので、これを生協独自の視点で利用してお伝えしています。組合員と年間の努力目標を設定できるようになったので、ありがたいですね。
正直、最初は情報の内容が難しいと感じたんですが、あとでこういうことか! とわかることもありました。
組合員の顔を重視する生協と、マーケティングのフレームから入るDNPさん。お互いにないものなので、すり合わせればいいものができると思いました。プロジェクトには長い時間を要しましたが、ディスカッション、グループワークを重ねることで新たな疑問が生まれ、解決に動くことができました。社内のチームワークも深まったと思います。そして、最終的に「商品は組合員の財産」だということを改めて実感しました。非効率的な商品を作れば、それは組合員の財産を大切にしていないことに繋がる。私たちはそのことを意識しなければならないと思います。この点に気づけたのは、今回のプロジェクトのおかげですね。

江里
最後に、今後の展望について教えてください。

松岡
今後はコープならではの商品を大切にしつつ、テコ入れできていないところをやっていきたいです。おすすめ商品である『セフターエナジー強力洗浄』『セフターエナジー抗菌・防臭』の2品をメインにはするのですが、さらに踏み込んで組合員のニーズを探り、より魅力的な商品になるよう改善もしていく予定です。
生協全体としてエシカル(環境保全など本来の在り方)な部分への訴求を強化していく、という流れがあるので、洗剤としての機能を追求すると同時に、環境への配慮も考えていきます。そのためには包材を変更したり、「すすぎ1回」に対応していない商品を改良するなど、技術革新的なことも必要になってくると思います。
そして、そのことを組合員に向けて発信することも重要です。「いい取り組み」だと感じてもらい、それによって幸せな気持ちになってもらえれば、と思います。ナショナルブランドも同じように環境配慮はやっているけれど、私たちは「この商品を使ってるあなたは、すでに環境に優しいことを実践してますよ」と言いたいんです。意識は高いけれど気づいていなかった組合員に向けても、伝わればいいなと思っています。

(おわり)


※1 お客様目線でブランド評価等を分析しロングセラーブランドになるための真の強みを規定するなど、ブランドの戦略立案をサポートするサービス。
※2 ブランドキズナ診断®において、情報受発信度は低いが、ブランドへの愛着度が高い顧客分類。外部からの情報にあまり関心を示さず、一度気に入ったブランドは習慣的に使い続ける方が多い。
※3 ブランドキズナ診断®において、情報受発信度とブランドへの愛着度がともに高い顧客分類。外部からの情報を積極的に取り入れブランドを吟味し、気に入ったブランドを納得して使い続ける方が多い。優良顧客層の源泉となる。
※4 カートンボックスの略。環境に配慮した紙製容器。

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情報イノベーション事業部 C&Iセンター デジタルマーケティング本部 江里 英之