Artscape Calender ICHIHARA
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10月23日(金)
グレゴール・シュナイダー展
 10/23−11/21
 ワコウ・ワークス・オブ・アート

残念ながらシュナイダーの強迫観念的なインスタレーションではなく、ヴィデオの展示だった。しかし、スペースを仕切りで分けてうまく構成し、彼のインスタレーションの雰囲気を伝えようとする努力の感じられる清々しい展覧会だった。

 

グレゴール・シュナイダー展

カーステン・ニコライの
  ライヴ・パフォーマンス

 GALLERY 360°

同じ画廊での彼のインスタレーションの最終日に開かれたコンサート。兄のオラフとともに活躍するこのドイツ人アーティストの紡ぎ出すノイズ音楽は、非常に巧みでかつ繊細な音色を奏でる。それにしてもこの短い時間で、1500円とは高すぎる。

 

カーステン・ニコライの  ライヴ・パフォーマンス

その夜、友人の紹介で今は亡きボブ・フラナガンのパートナーだったシェリー・ローズに会う。新宿二丁目のバーで、彼らがSMパフォーマンスを始めた80年代のこと、SMをめぐる昨今の反応の変化、フラナガンとの関係についての執筆の話などを聞く。彼女と会話していて感じたのは、ウェストコーストは、SMでも陰湿にならずに陽気で明るいということだ。

10月26、27日(月・火)

東京芸大特別講義

私事だが、二日にわたり東京芸大で特別講義を行なった。テーマは「絵画」について。だが、講義よりも初めて訪れた取手の校舎が、まったくの土田舎にあるのに驚いた。新入生は一年だけ通うらしいが、その間に感覚が鈍らないことを祈るのみ。

 

11月1日(日)
DAZED&CONFUSED写真展
 10/22−11/15
 ザ・ギンザアートスペース

雑誌DAZED&CONFUSEDに載ったイギリスのアーティストの写真を集めて展示している。アートとファッションの中間にあってアート寄りの雑誌があることだけでなく、セックスの表現に規制がないのも大いに羨ましい。いい加減にこんなつまらぬ規制は止めにしてもらいたい。日本人をいつまで子供扱いするのか。モザイクで性器を隠蔽すること自体がスキャンダルだということに気付くまともな人間はいないのか。

 

DAZED&CONFUZED写真展

 

11月3日(火)
美術と演劇
――ロシア・アヴァンギャルドと舞台芸術1900−1930
 10/3−12/6
 横浜美術館

海外の美術館やコレクションの展覧会で感動することは滅多にない。しかし、コレクションがもともと素晴らしく、企画者の意図が明確であれば、観賞者の目を十分に堪能させるだけの展覧会が実現できるという証拠がここにある。

 

美術と演劇――ロシア・アヴァンギャルドと舞台芸術1900−1930

11月5日(木)

ART-LINK'98 リチャード・ディーコン展
 10/13−11/14
 SCAI THE BATHHOUSE

ディーコンの作品は大作ばかりを見ていたので、どちらかというと全体より細部に目が行くことが多かった。このような中型の彫刻では、作品の全体が見渡せ意外な側面に気付く。つまり、全体を捉えようとしても必ずどこかにはみ出す部分があって、それがとても奇妙に見えるのだ。ドゥローイングについても同様なことがいえる。

11月7日(土)

映画「ブギーナイツ」
シャンテ・シネ 10/10〜11/27
シネマ・カリテ1 11/28〜12/4

一年前、ニューヨークでギャラリストに勧められた映画をようやく見ることができた。70年代から80年代にかけてのポルノ産業の裏側を描いたものだが、これを深読みすれば、疎外され搾取される資本主義社会の片隅にも、人間は生きているのだといっているように見える。この人間の生のスタイルを隙間文化と呼んでみたい。すると現在あちこちにこの隙間文化が認められるのではないか。そしてまさにアートは、そうした所に芽生えるのではないのか。

 

11月10日(火)
王朝の仏画と儀礼
 10/20−11/23
 京都国立博物館

12世紀から14世紀にかけての日本の仏画の展覧会。威厳、優美、そして妖艶ですらあるこれらの作品を見ていると、この時代日本の美術は、もちろん中国の影響のもと世界の再先端にあったことを確認できる。美しい図版を配されたカタログも秀逸。

 

王朝の仏画と儀礼

 

11月11日(水)
ジャン・アルプ
 &ゾフィ・トイベル=アルプ展
 10/20−12/20
 豊田市美術館

私たちには見慣れたジャンも、彼のパートナーであったゾフィと並べると、また新しい面を発見できて興味深い。というよりゾフィの作品が素晴らしいため、ジャンが見劣りするのかもしれない。その意味で、もっと彼女の作品を展示すべきだったと思う。ジャンは、同じことの繰り返しなので後半は飽きてしまうのだ。

 

ジャン・アルプ &ゾフィ・トイベル=アルプ展

ジャン・アルプ &ゾフィ・トイベル=アルプ展

アルトゥング展
 10/9−12/13
 愛知県美術館

戦後の作品はよく知られているが、20年代からすでにアンフォルメルの作風で制作していたとは驚きだった。作品の総体から感じられるのは、空虚のなかへのエネルギーの噴出である。しかしモダンの矛盾を引き受けそれを体現したとしても、果たして彼が優れたアーティストなのかという疑問は残る。

 

アルトゥング展

 

11月14日(土)
ヴィベケ・タンベルグ展
 10/30−11/21
 小山登美夫ギャラリー

ノルウェーの若いアーティスト、タンベルグの初個展。ノルウェーからの現代アートは珍しく、それもデヴューしたてのアーティストの作品を見られたことは幸運である。その作品が才能を感じさせるものであればなおさらだろう(「BT」2月号ベルリン・ビエンナーレの展評を参照されたい)。小山ギャラリーの隣にオープンしたTARO NASU GALLERYでは、イギリスのヘンリー・ボンドの個展が開かれていた。ロンドンのストリートの雰囲気をさらりと軽やかに伝えてさわやか。

 

ヴィベケ・タンベルグ展

 

11月17日(火)
レンブラントと巨匠たちの時代展
10/3−11/30
 伊勢丹美術館

さすがに美術の秋だけあって、絵画史上重要な画家を中心とした展覧会が各所で開かれている。クロード・ロラン、レンブラント、ターナーと名前を上げるだけでも期待は膨らむが、しかしこの展覧会のように、おざなりな企画、貧相な内容、最良といえる作品の数が少ない、といったものが大半なのだ。この困難な条件のなかでも、絵画の歴史をじっくりと学ぶことは不可能ではない。とにかく作品をたくさん見ることです。

アフリカ・アフリカ
 熱い大陸のアーティストたち

 9/11−11/24
 東武美術館

作品のどれをとっても奇妙な力強さが感じられる。プリミティヴな土着性と言うのは易しい。それは、文化の他者が必然的に身に帯びるパワーなのだ。

 

アフリカ・アフリカ 熱い大陸のアーティストた

11月21日(土)

ジョルジョ・モランディ――花と風景展
 10/10−11/29
 東京都庭園美術館

絵画から発せられる生気、虚無、孤独感といった雰囲気を越えて、モランディは、モダニストらしく絵の具のマティエールを的確に掴まえている。したがって彼の作品を、幽玄だとか存在を魔術的に捉えている、と神秘的に解釈することは慎まなければならない。

 

11月23日(月)
JUICYのショウ Gothic

JUICYとは、ドラグ・クイーン五人組のユニットであり、クラブを中心にショウを繰り広げているが、たんなるゲイバーのそれとは異なり、コミカルなだけでなく有効なメッセージを伝えている。彼らのパフォーマンスを見ていると、魅惑と哀れを感じるとともに、激励の言葉を聞く思いがするのは私だけだろうか。JUICYは、隙間文化の雄弁な実例なのだ。みなさん、彼らのフライヤーを見たら、是非出かけてみましょう。

 

JUICYのショウ

11月24日(火)

映画「ネネットとボニ」
 シネマスクウェアとうきゅう

かすかな兄妹愛だけが、この映画をかろうじて支えている。ロジカルな構成、生気、怒り、残酷さもない。不毛な虚無こそ、この映画が鮮やかに切り取るフランス文化の現況ではないだろうか。

 

11月26日(木)
THE DISTANT INSIDES
 ――心の奥底を覗いたアーティストたち
 11/19−12/23
 ザ・ギンザアートスペース

狭隘だが、その並外れた強度においてアウトサイダー、とくに狂気の世界は、アートと外延をともにする。アートは、<外部>を創造の源としている。

 

THE DISTANT INSIDES――心の奥底を覗いたアーティストたち

ナン・ゴールディン展
 11/2−11/30
 パルコギャラリー

ゴールディンほどのキャリアがある優れたアーティストについて、欧米のギャラリー程度の展覧会の規模ではまったく物足りない。観客から入場料を取ることもやめたほうがよい。あとは、レヴュー欄参照

 

11月27日(金)
インド現代美術展
 ――神話を紡ぐ作家たち
 10/17−11/29 国際交流フォーラム

日本と同じく伝統文化の強い国では、新しいアートが育ちにくいのではと思っていたら、私生活、日常、社会批判、大衆文化、ジェンダーといった今日的テーマを扱う作品がずらりと並んでいた。今更ながらに、グローバル化された現代アートの威力を認識した次第。11月のアートスケープで取り上げた展覧会の他にも、「日韓現代美術展」などいわゆるマルティカルチュアリズムの標題のもとに語ることのできる展覧会が目立った。世界的な流行は措くとしても、マルティカルチュアリズムの問題は簡単に解決しない。それは、アイデンティティや多様性や差異を確認するだけで事足れりというわけではないのだ。

 

インド現代美術展 ――神話を紡ぐ作家たち

11月29日(日)

NHKスペシャル
 「マネー革命2 世界は利息に飢えている」

ジョージ・ソロスやジム・ロジャーズといった今話題となっているヘッジ・ファンドのトレーダーや投機家の抱く世界観は、どのようなものだろうか。物や金ではなく数字を操る彼らが21世紀の主役となるとすれば、アートは彼らの世界観にすり寄ってくるはずである。

 NHKスペシャル『マネー革命』

 第1話:11月23日 9:00pm
    「1日で50億円失った男
      〜ある投機家の栄光と挫折」

 第2話:11月29日 9:00pm
    「世界は利息に飢えている
      〜マネー戦士たちの思想と方法」

 第3話:12月 6日 9:00pm
    「金融工学の旗手たち」

 第4話:12月11日 9:30pm
    「リスクが地球を駆けめぐる」

 

11月30日(月)
ウォルフガング・ティルマンスの写真集『BURG』

遂に出ました。ティルマンスの集大成にして最高傑作。内容は、過去の作品群から選び出されてまとめられたものだが、そのどれをとっても、彼の眼差しの深さ、優しさが染み通っていて比類なく美しい。これを機会に、もっと彼の写真がポピュラーになるとよいのだが。

 

ウォルフガング・ティルマンスの写真集『BURG』

 

【1998年12月】予定
ドミニク・ペロー展
 11/19-2/13
 TNプローブ

 

ドミニク・ペロー展

オリンピック・ヴェロドローム&水泳競技場、
ベルリン 1999年完成予定 TNプローブ
(c)Philippe Ruault

展覧会情報関東エリア……荒谷智子

 

【1998年12月】予定

ラヴズ・ボディ
 11/12-1/17
 東京都写真美術館

 

 

【1998年12月】予定

写真――可能性のかたち
 10/24-1/17
 原美術館

 

写真−可能性のかたち

Copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 1998