Artscape Calender NANJO
Archive
logo

 博多リバレイン パブリックアート・プロジェクト

博多リバレインは、ホテル・劇場・美術館などを含む複合施設として博多にオープンした。7階と8階に設けられた福岡アジア美術館の開館に際し、アジアの作家のパブリックアート15作品が設置された。

1997年に福岡市美術館から、新しく開館するアジア美術館の入る都市再開発事業にパブリックアートを設置する仕事をやってみないかという問い合わせがあり、私としてはこれをパブリックアートの新しい試みの場にできたらいいのではないかと引き受けた。
内容は博多の下川端にホテルオークラ、商業施設、博多座という劇場、それに上述の福岡市立のアジア美術館が入る複合ビル群が再開発事業によって建設されるので、このしかるべき場所にアジアと日本の若手アーティストの作品でパブリックアートを展開するというのが仕事であった。

私はそれまでに横浜の上大岡でアジアと日本の作家によるパブリックアート計画を実施したことがあるが、今回は想定される場所が主に外部であることと、それぞれより広い空間が想定されること、さらに建築の特徴が5階レベルにある巨大な空中庭園(アトリウムガーデン)であることなどで、かなり条件が異なっていた。

プロジェクトのコンセプトは「アジアガーデン」。これは建築の特徴であるアトリウムガーデンをプロジェクトの重要な核と位置づけたからだ。そしてアジアの自然、多様性、人々の交流などをテーマにした作品を集め、アジアの人たちが集う「庭」を作り出せたらと考えた。
博多座東通り側 スダルシャン・シェッティ

イーストサイト
博多座東通り側 スダルシャン・シェッティ

ファン、ツェニン「東方の星」

ホテルサイト
換気塔外壁面
ファン、ツェニン「東方の星」

チェ・ジョンホァ「柱は柱」

フェスタスクエァ、博多川側角柱
チェ・ジョンホァ「柱は柱」


その背景に私は世阿弥の花伝書を想定した。それは「花」というものが世阿弥にとって、華やいだもの、人生の生きる知恵、芸術の真髄、あるいは人生そのものの隠喩となっていると考えて、それがこの計画にふさわしいと思ったからだ。

作家は全部で14人で、作品の多くが建築と一体化した大型の作品である。たとえば陶版で作られた10メートルの壁画、あるいは鉄とガラスでできたはね橋、15メートルはある排気塔、8メートルのビルの角柱、建築の上に乗った巨大なモニュメントなどの作品が並ぶ。また作品によってはガラスのほうずきの彫刻や、花伝書とイラクの花の詩の本をテーマにした作品のような清廉で精神的な作品も含まれている。

一番困難だったのは、商業棟のテナントがルイ・ヴィトンやニナ・リッチといった高級ブランドのブティックになったために、アジア的な雰囲気とは全く合わないことになったことだ。そこでアジアの作家でも作品の主題がある程度ユニバーサルであること、また雰囲気が商業とぶつからないようにあまり工芸的であったり、自然主義的であるよりは、都会的でポストモダーンな作風のもの、さらに耐久力のある素材で作品を作れる作家を対象とすることにした。しかしじつはそういった作家は決してアジアに多くはない。それがこの計画の困難な理由のひとつだった。

建築そのものはアートの設置を考えている側の思惑や進行状況とは関係なく、どんどん進行する。だから作家たちに提案を求め、それを多数の地権者から構成される地元の組合に説明し、あるいは開発事業体や建築設計会社の人たちの理解を求め、さらに福岡アジア美術館の承認をうけてから実施するのは大変な時間と労力のかかる作業であった。

しかし今はこのアート計画もおよそ2年かかった99年1月の時点で、ツァイ・ゴーチャン(蔡國強)の巨大な龍船の作品を除いてはすべて設置が完了した状況である。そして99年の3月には全館が開館する。私の思いとしては、やはりこれまで私が変わったいくつかのパブリックアート計画の中でも異色で、スケールが大きく、娯楽性を持ちながら品格もあるユニークなプロジェクトにまとまったのではないかと思う。今は私自身が早く完成したところを見てみたいと思っている。

風の丘 メイ・デェンイー

リバーサイトアトリウムガーデン、
風の丘 メイ・デェンイー


椿昇「PollyZeus」

アトリウムガーデン、EV塔屋他
椿昇
「PollyZeus」


サンガワ「Engaging Echo」

アトリウムガーデン、ガーデンレストラン側壁面
サンガワ「Engaging Echo」

______________________________________________________________________
↓

1999
大林組品川新本社コーポレートアート計画

______________________________________________________________________
Index-->>↑
Copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 1999