真夏に始まったのに、寒風が吹き始めるころにようやく訪れる。←聞いたことあるフレーズだ。シャルル・ローゼンタールという架空の画家の回顧展を装ったカバコフの個展。従って、展覧会全体がひとつのインスタレーション作品と見るべきで、1点1点の絵を味わうという喜びには欠ける。でも、絵の裏から光を当てるとか、絵の一部または全部を塗り残すとか、絵のつもりがジャッドの箱に見えるとか、カバコフがやってみたかったけど「自分の作品」としてはできなかった実験的試みを、ちゃっかりローゼンタールの名を借りてやっちゃったって感じがして笑える。カタログの対談でカバコフ自身もいうとおり、文学の世界では作者のつくった架空の人物に自分の考えを言わせるのは当たり前なのにね。
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