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アートピクニック ON THE WEB 6 塩田千春

.. ――――ベルリンに住むようになったきっかけは?

肌にあったのだと思います。

――9回も引っ越しをしているのはなぜ? 引っ越し魔ですか?

たんに貧乏だったんです。安いところばかり(3万円以下の家賃のところ)を借りていたので建物もボロボロでよく改装のために出ていかなくてはいけなかったり、3カ月だけの空部屋などを転々と住んでいました。今は引っ越しはしなくなったのですけど展覧会が多いので、実際ベルリンにいるのは1年間で3カ月ぐらいとまるで旅芸人のような生活をしています。


――作品にパフォーマンスを行なうようになったのは?

インスタレーションを始めた時からだから94年頃からだと思います。


――マリナ・アブラモビッチに師事していた頃のエピソードなど。

ある夜パーティーに誘われていて、すごく疲れた顔をして彼女のところに行くと「千春! 疲れた時は真っ赤な口紅を塗るのが一番よ!」っと口紅を渡されたので、それをつけたのはいいけど口だけが目立ち、口が歩いているような顔になってそのパーティーに出た覚えがある。彼女は作品のことだけでなく生活面でもよく気をつかってくれて、いつもいろいろな相談にのってくれました。これほど私のプライヴェートを知っている教授はいないです。

――横浜トリエンナーレに参加してみて、ほかの国際展とは違いますか?

ほかの国際展に出品すれば、私は日本人作家と言われることが多いのですが、今回はじめての日本での国際展、横浜トリエンナーレではベルリン在住の作家と言われ面白いなーっと思いました。


――今回の展示作品はどこで制作したのでしょうか?

自分の家で500メートルの布と格闘しました。写真を送ります。見て下さい。


――作家から感じるハマトリの良い点、悪い点。

良い点は新作を作家に規定していることが面白かった。意外な作家があっこんな作品を出しているんだ……と驚かされたことがあった。悪い点はあのパシフィコの展覧会場。展示がやりにくかったです。

――泥にまみれる大きな服の意味とは??

このトリエンナーレの作品のタイトルは《皮膚からの記憶で、パフォーマンスのあと泥だらけになった体を洗いながら、何か洗っても洗い落とせないわだかまりみたいなものがいつまでも自分の心のなかに残っていて、それをどうすれば作品にできるか、と2年ぐらい前から考えていました。普段の生活でもベルリンで多国籍の人たちと生活をしていると、自分がアジア人であることを忘れてしまう時がある。でもふと鏡に写る黒い髪と黒い目や肌の色に現実に返される時があり、その自分と身体とのギャップや記憶などをテーマに今回の作品を作りました。

――塩田さんは、泥水が貯まったお風呂に浸かって、頭から行水し続けるとか、展覧会会場で一日中、ベットに寝ていたりと、パフォーマンスのなかで限界に挑戦するかのようにギリギリまでがんばるのはなぜ?

パフォーマンスでなくてもインスタレーションのなかでもかなりの限界に自分を持っていって作品を作ってしまうことが多いです。なぜだか……??

八百屋で野菜を買っている私
トリエンナーレの自分の部屋での制作風景

↑← 八百屋で野菜を買っている私(ベルリンで)
↓← トリエンナーレの自分の部屋での制作風景
→トリエンナーレの作品《皮膚からの記憶2001》

 
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