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北海道エリア 吉崎元章
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 展覧会
   寒別グラウンド・アート展'99 / 北網圏北見文化センター開館15周年記念美術展
   田村和良回顧展「自由への砦」
 イベント
   〜楽しく学ぶ美術の世界〜ミュージアム・スクール'99
 インフォメーション
   ギャラリーSEEDの休廊 / 札幌アーティスト・イン・レジデンス / CAI
 学芸員レポート[札幌芸術の森]
 
Exhibition
寒別グラウンド・アート展'99

会場:旧寒別小中学校グラウンド(倶知安町)
会期:1999年7月25日(日)〜8月8日(日)
開場:9:00〜19:00、最終日は15:00まで
入場料:無料
問い合わせ先:寒別グラウンド・アート展'99実行委員会 0136-23-3949

アーティスト:林雅治、M・ババッチ、泉修次、愛澤光司、田村陽子、出田郷、益村信子、
       林教司、野村裕之、藤本和彦、藤田倫寿、牧野秀昭、菱野史彦、杉吉篤、
       加藤宏子、橘井裕、高橋俊司、中嶋貴将、堀江隆司、鈴木順三郎、
       清治拓真、山岸誠二


寒別グラウンド・アート展'99
 蝦夷富士とも呼ばれる羊蹄山の麓にある、廃校となった寒別小中学校の校庭で開かれる野外美術展。北海道在住の画家、彫刻家、造形作家、陶芸作家、写真家など、2 1歳から63歳と幅広い世代にわたる22人の作家が出品。この種の展覧会でありがちな仲間内のみの出品ではなく、最近精力的に発表している新進の作家も多く含んでいるのが好感がもてる。
 昨年に引き続き2回目となるこの展覧会は、「アートが本来持っているはずの解放感・日常との関わり」を見直す試みがテーマであり、あえて都市空間を離れ、壮大な風景を背景として展開することで、日常やアートの現在、作家と見る側との関係を見直す場を目指している。シンポジウムや参加イベントも開催。
Exhibition
北網圏北見文化センター開館15周年記念美術展
オホーツクのエッジから〜三つのベクトル「林弘堯+岡部昌生+田丸忠」

会場:北網圏北見文化センター美術館(北見市公園町1番地)
会期:1999年7月23日(金)〜8月15日(日)
開館:9:30〜16:30、休館日=毎週月曜日、7/27
入場料:一般500円/高校以下は一般券1枚につき2名観覧
問い合わせ先:0157-23-6700 テレホンサービス0157-22-3300


北網圏北見文化センター開館15周年記念美術展
 オホーツク秀作美術展の7回目として、紋別、根室、北見といった北海道東端に位置するオホーツク沿岸出身の3人の現代美術家の展覧会を開催。北見で精力的に活動を続ける林弘堯は、布、鉋屑、木材、ステンレスなどを壁や床に展開し、それぞれの物質性を際だたせながら、オホーツクの風土に根ざした力強い作品を制作。岡部昌生は、近年パリのユダヤ人居住区や広島の被爆したプラットホームなどのフロッタージュを航空書簡として世界中の知人に発信している。今回は、パリ―広島間の往復書簡や、幼少の頃の根室の空爆の記憶をもつオホーツクの地に広島から宛てた書簡、さらにインドネシアの友人に広島から宛てた書簡の三部構成で展示。田丸忠は、この地に自生するエゾサンショウウオやオオウバユリなどの動植物の映像をコンピュータに取り込み、それと認識できる最小限の映像に加工、記号化されたそれらを反復して展示することによって、地域性と普遍性を再認識させる。
 この展覧会に合わせ、8月6-8日には、岡部昌生が「森のなかで、野付牛にふれる」と題し、アシスタント・スタッフ20名、一般参加者100名を募って、コラボレーションを行う。北見が「野付牛」と呼ばれていたころから息づく原生の樹木の肌を、岡部の提言と指導のもとにフロッタージュし、野付牛公園の森の中に展示する。
Event
〜楽しく学ぶ美術の世界〜ミュージアム・スクール'99

会場:北海道立近代美術館
   札幌市中央区北1条西17丁目
会期:1999年7月27日(火)〜8月19日(木)
開館:10:00〜17:00、休館日=毎週月曜日
問い合わせ先:011-644-6881 テレホンサービス011-612-7000


〜楽しく学ぶ美術の世界〜ミュージアム・スクール'99
 夏休み中の小学生とその保護者を対象とした特別プログラム。学校教育の現場からのアドバイスや、美術館のボランティア、学生も運営スタッフに加えて行われる。
 自由参加と募集制プログラムに分かれており、自由参加プログラムでは、常設展示室で開催中の「遥かな芸術の國・仏蘭西」展のワークシートを用意するほか、色付きのワイヤーによる造形を実際に行う「ワイワイ・ワイヤー」をホールで開催。募集制プログラムでは、小学生とその保護者の2名一組となり、学芸員や美術館ボランティア、学生ボランティアといっしょに作品を見ていく「アート・レッスン」をほぼ毎日2回開催。さらに、7月29日〜31日の「みんなでつくろう ワイワイ・ワイヤー」と題したワークショップでは、造形作家の川上りえを講師に、ぐるぐる巻きにしたワイヤーでふしぎな生き物をつくる。
Exhibition
田村和良回顧展「自由への砦」

会場:ギャラリーSEED
   札幌市中央区南27条西11丁目1-1
会期:1999年7月14日(水)〜8月1日(日)
開館:11:00〜19:00、休廊日=毎週月曜日
問い合わせ先:011-561-2720


田村和良回顧展「自由への砦」
 1990年にオートバイ事故で亡くなった田村和良の展覧会。自ら「陶塑」と名付けた硬質感のある陶器は、金属的な独特の肌合いを見せる。鎖、ボルト、ナットなどが密集したボックスや、それらによって肉体を束縛した息苦しいまでの作品は、人種差別や政府による民衆の弾圧などをテーマにしており、自由と平等を強く訴えかけている。
 遺族によって10年ぶりに公開された作品群は、肉体を金属的な部材で閉じこめるというあまりにストレートすぎる表現に新鮮味はないが、この作家を再認識させるうえで大きな意義があるものであった。
Information
ギャラリーSEEDの休廊

会場:ギャラリーSEED
   札幌市中央区南27条西11丁目1-1
問い合わせ先:011-561-2720


 昨年の6月にオープンし、天井の高い広々としたスペースで刺激的な展覧会を開催してきたギャラリーSEEDが、8月(8/6-8/29)の艾沢詳子の個展を最後に休廊する。約1ヶ月という長いスパンで主に北海道在住の現代美術家の作品展を開催してきたが、それぞれの展覧会は、この空間に刺激されて作家の新天地を示したものが多く、札幌の美術や作家の活動に少なからぬ影響を与えてきただけにとても残念である。立地条件が悪かったこと、経営的な面など難しい面も多いだろうが、是非復活してもらいたいものである。
Information
札幌アーティスト・イン・レジデンス

問い合わせ先:札幌アーティスト・イン・レジデンス(SAR)実行委員会011-643-2400


 今年から5年間、国内外から作家を札幌に招き、長期にわたって滞在するなかで制作しながら住民との交流を図っていくアーティスト・イン・レジデンス事業がはじまった。文化庁の補助を得て行われるこの事業は、今年はアンカ・デッシン(ドイツ国籍-イギリス在住)、メトド・フィリック(スロベキア)、マット・カルバート(オーストラリア)、磯崎道佳(日本)、広瀬智史(日本国籍-イタリア在住)、チウ・ジージエ(中国)、カリン・ボーネ(ドイツ)という6カ国7人のアーティストを迎える。すでに7月にアンカ・デッシンが来札。残りの作家は1月から札幌芸術の森のアトリエに宿泊しながら制作する予定。アーティスト・イン・レジデンス事業はすでに日本でも数ヶ所で試みられそれなりの成果を得ているが、後発の札幌の場合、どのような独自の指針を打ち出し、どれくらいの長期にわたって滞在ができ、その間にシンポジウムやワークショップ、などの魅力的な事業展開ができるかが大きな課題であろう。
Information
CAI

場所:札幌市中央区北1西28
問い合わせ先:011-643-2400


 リーセント美術館、リーセント・アートスクールとして活動を続けてきたスタッフが、『CAI(Contemporary Art Institute)/現代美術研究所』 を6月に装いも新たにスタートさせた。今後はアーティスト・イン・レジデンス(前項参照)、アートスクール、ギャラリーを柱に活動を続けていく。
 ギャラリーでは、7月に楢原武正のインスタレーションを行った。金属との格闘の痕跡を集約して見せる楢原は、炭坑のなかに入っていくようなトンネル状の展開を見せた。
 CAIアートスクールでは、国際的に活動するアーティスト、キュレーターの育成と発信を目指している。7月から8月にかけて「現代美術連続セミナー」「現代デザイン・建築セミナー」を各5回、札幌市内のほか東京や京都から講師を招いて行っている。また、「現代美術実技講義初心者コース」を前期、中期、後期分けて開催。アーティスト・イン・レジデンス事業で招待された海外のアーティストなども講師とする予定であり、レクチャーやワークショップを通じて国際的視野に立ったカリキュラムを組んでいる。
学芸員レポート[札幌芸術の森]

ダニ・カラヴァン《隠された庭への道》 僕が勤める札幌芸術の森で、7月9日、ダニ・カラヴァンによる《隠された庭への道》が一般公開されました。1992年から準備を進めてきましたので実に7年の歳月を要したことになります。僕がダニ・カラヴァンという作家を意識したのは、1991年に開催した「芸術を都市をひらく〜フランスの芸術と都市計画」展(国内7会場を巡回)でフランスのセルジ=ポントワーズにある全長3kmにおよぶ《大都市軸》を知ってからです。スケールの大きさとその場の特性を引き出し活性化していく彼の作品は、これからのひとつの彫刻のあり方を予感させるものでした。この展覧会に合わせて彼を呼び講演会を行うことになっていましたが、運悪く湾岸戦争が勃発しイスラエルに家族を残して彼は来日できず中止せざるを得ませんでした。しかし、札幌芸術の森野外美術館の整備計画の最後となる第3期において、彼に作品を依頼してはどうかという意見が浮上してきました。学芸員だけではなく、札幌市の担当者や関係者などが、ひとつの展覧会をきっかけに志を同じくしたのです。札幌芸術の森野外美術館は自然と彫刻との関係を重視してすでに73点の彫刻を設置していましたが、その最後を飾る作品として、この地の自然の要素を積極的に取り込み、自然と彫刻と人との結びつきを生むカラヴァンの作品はまさに打って付けだったのです。現場を見た彼も制作を快諾、その後、多忙なスケジュールのなか10回にわたり来札し、打ち合わせやシミュレーションを繰り返してきました。国内では最も早い時期から準備を進めてきたにもかかわらず、仙台の宮城県美術館や大阪の長居陸上競技場が先に完成して悔しい思いもしましたが、僕が世界中に散らばるカラヴァンの作品のいくつかを見てきたなかでも、この《隠された庭への道》は彼の代表作といってもいいほど完成度の高いものになっています。
 カラヴァンの作品は、実際に体験しなければその良さは分からないものです。是非札幌芸術の森まで、足を運んでください。この真っ白いコンクリートや金箔、水など現在の状態をいかに維持していくか、先が思いやられますが。
 札幌芸術の森の機関誌「LURE」でこの《隠された庭への道》の特集を組み、その内
容をホームページ(http://www.artpark.or.jp)にも掲載してていますのでご覧くだ
さい。(「7. 四季の情報誌『Lure』」からお入りください)
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