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キュレーターノート      森 司 .


第5回:2000.11.1〜
11月2日(木)
今週から、東京造形大学で比較造形専攻の2年生に一回2コマの講義が始まる。東京造形大学は、今年から二学期制を導入している。「芸術振興II」という必修の枠で、美術館について話せとのことだが、学芸員資格取得のための博物館学の枠ではない。森口陽教授にご挨拶を兼ねて昨日連絡を入れて確認したら、「企画を担当している美術館人として話していただければよろしい」とのことだった。現場のそれをそのまま持ち込んで学生に見せてあげることは、自信をもってできる。2時間半かけて大学に着くが、雨の降る八王子は寒い

11月3日(金/祝

文化の日でお休みだが、作家と芸術館で会う約束をしていたため出勤する。が、現われない。先方のスケジュールが変更になってイギリスから「いけなくなりました」とメールが入ったのは、夜の12時頃だった。

11月4日(土)
4時に起床し、休みを利用し福岡に出かける。この後の三便目だとフル料金。しかし今日私が乗る予定の二便は、早朝割り引き適用で1万6千円も安い。で、頑張った訳。これが3連休でなければこんなムリをしなくても安いチケットはあるそうだ。飛行機は満席。
10時半には、福岡中州川端の福岡アジア美術館に着いていた。所蔵品展「アジアの近現代美術3」と交流ギャラリーにて「第2回アートティスト・イン・レジデンスの成果展」を見る。これは、4人の作家と2人の研究者がそれぞれ3ヶ月滞在する、「アジ美」の売りとでもいうべきResidential Programs2000(レジデンス・プログラム)の成果。
スーパーブランドシティー(SUPERBRANDCITY)をはじめて探索した後、天神コアの「正福」にてゴマ鯖ランチで腹ごしらえ。ここから本題のミュージアム・シティ・福岡2000。今年のテーマ「外出中」のチェックに入る。
今回で6回目。2回目からは欠かさず見てきた。このおかげで福岡には2年に1度必ず行っている。ヴェニスビエンナーレのおかげで2年ごとにヴェニスを訪ねるのに似ている。今回のスタンプは充実、でもマップはしょぼい(なにを評価しているんだ。といわれそう)。でも、本当にArtが外出中の感じが……。
イムズにて八谷和彦の「ヒツジの箱」と、藤浩志の鹿児島霧島アートの森のために制作した、太ったアルミのイヌと蛙の木彫りと対面。三菱アルティアムでは「小林健二プロキシマ:見えない婚礼」展。
続いてMOMA Contemporaryにて、藤浩志が現在精力的に展開しているビニールプラスチックコレクションを調査。藤浩志は新しい活動「かえっこショップDelivery」を展開中。これは、「かえっこカード」と「カエルポイント」からなっていて、カエルポントのもらい方に藤さんらしさが表われている。チラシによると、A)自分のいらなくなった玩具アクセサリー等を持ってくる。B)食品等のカラフルな袋やペットボトルを洗ってもってくる。C)ポリ袋を使ったポリクラフトの簡単な作業を手伝うか、不要品を使った新しい作品のアイデアを考える。これによってカエルポイントがゲットできるそうだ。昨年の夏、箱根彫刻の森で発表したビニールプラスチックコレクションを発表したときからの展開はクイックだ。ますますひろがっていきそうでいい感じ。
この会場と韓国釜山の別の展覧会会場がネットで結ばれていた。カフェ仕立てのためお茶しつつ一休みしていたら、はやくも3時。7時頃にはそれぞれの会場が閉まってしまう。それまでに廻りきろうとすると、先を急がないといけない。奮発してタクシーで福岡市美術館へ移動。「水晶の塔をさがして──現代アートが開く「私」の世界」を見る。企画は山口洋三学芸員。出品作家は5人。市内4カ所で同時開催中の小林健二展は、市美と先のアルティアムの会場をテレビ電話回線を使って繋いでいた。
それから茨城在住の平田五郎。ちょうど彼の作品であるパラフィンを組み上げたロウの家から、成人男性2人が身を小さくしながら蹲って出てくるところだった。さらに、大阪在住の松尾藤代と福岡在住の佐々恭子(インスタレーション)と東京在住の大森裕美子を見る。カタログは、表紙折りがポストカードになる仕掛け。同時開催の「第2回21世紀の作家――福岡:くわ野よう子」展を併せて見る。彼女は、1990年の第1回ミュージアム・シティ・天神に出品し、イムズで開催された「九州コンテンポラリーアートの冒険」(1996)と「大冒険」(1999)に出品している地元作家(当然か)。81年から87年まで「明日への造形――九州」シリーズとして開催されたものの第2弾の2回目。
そこからまたしても、タクシーに乗り、急いで旧御供小学校に向かう。ミュージアム・シティ・福岡の本丸だ。数日後には大引っ越しがあるそうだ。そんなこんなで大忙しの宮本初音事務局長と合流。小沢剛の“カフェ”ではダーツの結果ソーダ水をいただく。ごちそうさま。駆け足で見てから、宮本事務局長の案内で、焼き印ごて屋さんの店先に展示しているマッティブラウン(ケルン招待作家)の作品を見せてもらい、続いて和田千秋のお茶会の会場に寄る。混んでいたので先に、阿部浩二(大分招待)の雲の作品を見に一端外に出る。再び戻り和田千秋主宰の障碍の美術4「障碍の茶室」を体験。車椅子に乗りお茶をいただく。キャナルシティーでナウィン・ラワンチャイクンの屋台でカクテルを頼み、それを手にビル内の展示作品を見学。カフェもののはしごでお腹はちゃぷちゃぷ。最後にマクドナルドのパトリック・ルブレ(ル・アーブル、フランス招待作家)を見て終わる。別に着ていた村田真と合流し10人程度で宴会。

11月5日(日)
8時40分のぞみで広島に向かう。連休最終日なので安全のために大阪始発ののぞみを予約してから広島市現代美術館へ。マッサージペインティング池上式を調査。池上恵一は、1996年第1回神戸アートアニュアルの出品作家だ。黒川紀章回顧展と収蔵品展「カラフル・アート“いろ”にみる現代美術」を見て11時25分のひかりで新神戸に。新開地のKAVCにて第5回神戸アートアニュアル「裸と被」を見るためだ。神戸からは大阪なんばへと移動し、應典院を訪ね“Life ART PACKING 2000 in OUTENIN”を調査。13作家が参加。ここからの移動中、道頓堀でハリハリうどん鍋屋を発見。一度は食したいなと思いながら、キリンの束芋展を再度見に駆け込む。彼女は第4回神戸アートアニュアルの出品作家。時間いっぱいまでここにいて、お弁当を買い込んで予約してあった新幹線で帰路に着く。濃密な二日間だった。

11月17日(金)
先週末から今週にかけて、家の用事が複数重なりプライベートごとに時間を割いて過ごす。今日もその一環で早退した。そんな私にiモード事件。1年ちょっと使っていた携帯電話の画面が突然のフリーズ。通勤途中に鞄に入れておいたら起動していた。それでこのままだましだまし使っていようと思っていたら、夕方に再度のフリーズ。どうやっても電源が入らない。充電もばっちりしてあるのに。しかたがないので充電しながら放置しておいたら起動していた。なんとも危ない。

11月18日(土)

10時の開店を待ってdocomoショップに入り、携帯の診断を受けるが異常なしとの診断。しかしデータ等のことを考えると危なっかしい。夕方自宅近くのオープンしたばかりのdocomoショップを覗いたら、オープン価格でかなりお値打ち。即決で買い換えてしまった。
今日はもう一つ新しいものが登場した。これまでは私物のマックと電話でのメールだったのが、週始めに配線工事が終わっていた専用線とやっと受け取れた自分用のコンピュータをつなぐことができて、デスクにいながらにして快適なネットサーフィンが可能になった! メールも届けば教えてくれる。たったそれだけのことだが、気分としては格段に進歩した感じだ。もう後には戻れない。残るはWindowsのマスターだ。マックとはちょっと違う。家にもどるとケーブルTVのネットサービス開始に関する問い合わせへの回答が届いていた。ケーブルでのネットサービス開始のチラシにワクワクしながら問い合わせてみたものの、集合住宅故にサービス不可との回答。そんなことならチラシ入れるなよな。

11月19日(日)
本や雑誌で部屋が狭くなったので、大々的に本の整理を始めたら丸1日かかる。明日10時に古本屋さんが取りに来る。

11月20日(月)
近くの駐車場に空きが出たというので、試しに車を入れに行く。数度の切り返しが必要で難しくはないが入れ易くはない。だが家から近いのが魅力。それには勝てず12月から移ることにした。しかしその分すこしばかり出費も増える。10時に古本屋さんが来て2万円で持っていってくれた。夜は加藤紘一の乱の展開をと思っていたら、あららという幕切れに拍子抜けし、やまとなでしこを見て過ごす。

11月21日(火)
部門会議。まだ馴染めないWindowsと終日格闘。右クリックとエクスプローラーを初めて理解して、なんとか感じを掴む。

11月22日(水)
東京出張。

11月26日(日)
休日当番出で芸術館。だれもいない静かな空間で、火曜日提出の次年度事業関連の書類をWindowsと格闘しながら作成。

11月27日(月)
全館停電のためお休みで在宅勤務。

11月28日(火)
部門会議。2002年2月5日オープンの「宇宙の旅」展関係の広報文字原稿の整理をし、デザイナーに流す。急遽30日夜打ち合わせをすることになる。体感温度としては今年一番の冷え込み。

11月30日(木)
デザイナーと打ち合わせをして戻ると24時を少しすぎていた。明日は8月に受けられなかった日帰りドックの日だ。飲み食いできないのでさっさと寝た。

[もり つかさ 水戸芸術館現代美術センター学芸員]

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