logo

Recommendation
東京 荒木夏実
.


event「アキラ・ザ・ハスラー展」& ハスラー・アキラ著 『売男日記』

..
アキラ・ザ・ハスラー展
 ノスタルジックなミラーボールがくるくる回転して、画廊は奇妙にキラキラした異空間となっている。スクリーンに映し出されるのはゲイカップルの愛の時間。画面には光があふれていて、二人の顔には笑みがこぼれ、何だかとても「健全」なセックスの風景である。
 ザ・バイターズのメンバーでもあるハスラー・アキラは売春夫である。彼とお客、恋人との会話やエピソードがつづられた『売男日記』(イッシプレス、1,200円)は、ぜひお薦めしたい1冊。人間に対する優しさに満ちたアキラの文章を追っているうちに、自然とにこにこ顔になり、読み終えた時は心がじわーっと温かくとても幸せな気持ちになっていた。男女とか夫婦とか、あらゆる制度のしがらみを超越したシンプルでピュアな愛の形があることを知った。
 アキラは言う。「ぼくは自分の仕事が好きだ。お客さんが喜ぶ声とか顔が好きなんだと思う。ありがとうといって照れたように帰っていくおっさんや、男の子達の後ろ姿を見る時、ぼくはこの仕事をやっていてほんとうに良かったと思う。」「牛や羊なんかを飼っているような、農園で働いている気がすることがある。性の農園。育てたり、水をやったり、刈り入れて、出荷したり、研究したり、疲労困ぱいしたり、新しい発見に喜んだり。」
 ちょっと疲れた時、心が乾いた時に読むと、きっと元気になれる本である。
..
会場:オオタファインアーツ 渋谷区恵比寿西2-8-11
会期:2000年10月27日〜11月18日
問い合わせ:Tel. 03-3780-0911

top

exhibitionニッキー・リー・プロジェクツ展

..
ニッキー・リー・プロジェクツ展
 ニューヨーク在住の韓国人女性アーティストの写真による作品展。今年の光州ビエンナーレで初めて作品を見たが、とても強く印象に残っていた。
 「パンク・プロジェクト」「ツーリスト・プロジェクト」「ヤング・ジャパニーズ・プロジェクト」「オハイオ・プロジェクト」など、リーは様々な設定を用い、それらしい服装とポーズをとった自分を登場させる。写真は日付入りのスナップショットを引き延ばしたもの。「私のアイデンティティ探求がテーマではなく、一人の人間の中にどれほど多くの性格が共存するかを示すもの」と本人が語るように、リーはどの設定にも見事に溶け込んでおり、同人物と思えないほどである。シンディ・シャーマンよりずっとライトで、森万里子のようにナルシスティックでもない。
 リーの特徴はそのおそるべき観察眼にある。各コミュニティーのもつテイスト、コミュニティーどうしの微妙な差異を実に上手く抽出する。その中でリーは、ダサダサの旅行者になったり、セクシーなヒスパニック女性に変身したり、彼女自身の個性は失われてひたすら漂うのだ。外国人として生きる作家の洞察力と現代的な軽やかさが作品を魅力的なものにしている。
..
会場:ギャラリーGAN 東京都中央区銀座7-2-22 DOWAビル1F
会期:2000年10月16日〜11月25日
問い合わせ:Tel. 03-3573-6555

top

exhibitionウォルター・ニーダーマイヤー展

..
ウォルター・ニーダーマイヤー展
 何か変な景色なのだ。白銀のゲレンデでおそろいのゼッケンをつけた初心者スキーヤーたちが連なっている。タイトルは「志賀高原」。合成っぽいがそうではないとのこと。几帳面さとおとぼけ、イノセンスと毒気が良い感じに混ざって、気になる存在感が作りだされている。
 横浜美術館「現代の写真II−反記憶−」(11.23〜2001.1.21)にも出展中。
..
会場:ギャラリー小柳 東京都中央区銀座1-7-5
会期:2000年11月24日〜12月22日
問い合わせ:Tel. 03-3561-1896

top

exhibition佐藤勲展

..
佐藤勲展
 平面を構成する無数のグリッドと鮮やかな色彩が特徴の佐藤勲の作品であるが、今回は作品を設置した壁の部分に四角く色を塗るなど、今までにない新しいインスタレーションを展開している。ややポップに走りすぎたきらいもあるが、このギャラリーのスペースには合っていると言えるだろう。これまでの佐藤の作品に見られた几帳面な性質とはひと味違った魅力に触れることのできる展覧会だ。立体オブジェも初出品している。
..
会場:TARO NASU GALLERY 東京都江東区佐賀1-8-13 食糧ビル2F
会期:2000年11月24日〜12月23日
問い合わせ:Tel. 03-3630-7759

top

report学芸員レポート [三鷹市芸術文化センター]

..

ゴルチエ展
ゴルチエ展での記念撮影
モデルは筆者


 「ジャン・ポール・ゴルチエの世界 変身体験−あなたを展示する−」(上野の森美術館)にでかけた。うわさには聞いていたが、入り口から出口まで歩く間に鑑賞者は様々なコスチュームを身につけ、変身していくという仕掛けつきの展覧会だ。白いガウンを着てカツラをかぶり、バッグを持って、唇マークのシールを貼って……。気づけば何だか恥ずかしい格好になっている。仕上げはゴルチエファッションを身体に投影しての写真撮影。ナイスバディに変身した自分の姿が写真に収まる。
 ところで、私はこの展覧会に1人で行ったことを後悔した。これは絶対、友達とワイワイ茶化したりほめたりしながら見るべき展覧会だ。「見てみて!」とも言えずに黙々とおマヌケな姿に変身していくのは空しく、寂しい……。まあ、ここがアメリカだったら、ストレンジャーの私に“Oh, you look gorgeous!”なんて誰か声をかけてくれたかもしれないが。
 一方、前述のオオタファインアーツでの「アキラ・ザ・ハスラー展」は1人で行って正解だった。ギャラリストの大田さんもたまたま不在だったが、もし「荒木さん、久しぶり。」などと呼ばれたらドギマギしていたかもしれない。ましてや、アキラ氏その人がいたら彼のセックスシーンを直視することは難しかっただろう。
 京都国立博物館で開催された話題の「若冲展」は、1人でも複数でもOKの展覧会だった。伊藤若冲のイカレた作品がこれでもかというほど陳列されている。神妙な顔をしている人はどこにもいない。斬新な構図やへんてこなモチーフについて、みんな楽しそうに感想を述べあっている。なかでも変わった巻物の「菜虫譜」の展示ケースには、みんなべったりはりついて「茄子や!」「蛙や!」とわいわい言っている。うーむ、小学生も大人も基本的に反応は一緒なんだなと思う。小難しいこと抜きに子供みたいに素朴な感情を引き出してくれる若冲のパワーはすごい。
 仕事がら、1人で多くの展覧会を「こなす」ように見る傾向の強い私だが、誰かと一緒にああでもない、こうでもない、と言いながら見る楽しみも忘れたくないものである。
..
ジャン・ポール・ゴルチエの世界 変身体験−あなたを展示する
上野の森美術館 東京都台東区上野公園1-2
会期:2000年9月21日〜11月19日
問い合わせ:Tel. 03-3833-4191

若冲展
会場:京都国立博物館 京都市東山区茶屋町527
会期:2000年10月24日〜11月26日
問い合わせ:Tel. 075-541-1151

top

北海道
東京
兵庫
香川


artmix | MIJ | art words | archive
copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 2000