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岡山  柳沢秀行
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exhibition岡山県立美術館自主企画特別展 中山巍(たかし)

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岡山県立美術館自主企画特別展 中山巍(たかし)

 今回から、よりプライベートな現実にそってお話できるようになりましたが、まさに私にとっては打ってつけのタイミング。
 今、この中山巍(たかし)展に忙殺されているところです。
 なんとなくですが、最近の美術館業界は夏休みのワークショップ、1-3月の現代美術、そして秋の自主企画展といったサイクルがあるような気がしますが、それは自分のまわりだけの話かも。
 自主企画?とおっしゃる方にお話しておきますと、展覧会のコンセプトを練り、出品作を決め、所蔵者と交渉し、作品も集め、データーを一から蓄積し図録も作る、これを全てその美術館の人間とお金でまかなうのを自主企画といいます。対極的なのが新聞社などが企画会社から買い取った展覧会を巡回させるパターンですが、もっとも新聞社とお金は出し合って中身は美術館が作るとか、中身を新聞社と美術館が協同で作りあげるといったパターンもありますから、中間項もいろいろ。展覧会選びには、そのへんの見極めが大切です。
 さて、この中山巍展は当館の完全自主企画。というよりは私がほとんどやってる完全自主企画。中山巍という画家は、佐伯祐三や里見勝蔵、前田寛治らとパリ次代から親しく、独立美術協会の創立会員でもある油絵描きです。
 とはいえ、この2、3年、佐伯、里見、それにまさに今、前田寛治の大規模な展覧会が、複数館の学芸員が協同で作り上げ、それを新聞社が後押しする形で全国展開していますが(これがさっきの話の中間項。このパターンが展覧会内容も動員力も、もっとも協力)、それにひきかえ中山はこれまでの回顧展も少なく、知名度も大きく遅れを取っています。
 とは言え、作品が悪いのかというとそんなことはない。ではなぜそれほど評価の差が出たのかというと、それは様々なイメージ戦略の結果。
 画家の評価がいかに世俗的な次元から作り上げられるのかは、若き碩学稲賀繁美氏の「絵画の黄昏 エドワルド・マネ没後の闘争」を読めばただちに実感できますが、中山、そして佐伯、前田の場合もいろいろと複雑な事情があるのでしょう。ただそれを語るにはまだ難しい時期です。
 もっとも今回の展覧会で挙げた、その理由をひとつ。
中山の場合、若くして亡くなった佐伯、前田が描き残した1920年代作品と比べるべき彼の作品が、彼自身が晩年になって加筆修正してしまいました。さらに後の彼の作品に関わる人々(いわゆる研究者も含めて)がその事実を知ってか知らずか、40年ほど経って手が加えられた作品を1920-30年代の作品だとして、展覧会に出品し、画集に掲載しと、つまり誤った情報を流通させてしまったため、その正当なジャッジが下される以前でハードルがあったことです。
 今回の展覧会にむけ、一生懸命探した結果、幸いにも制作当初のままの作品が多数出品出来ることになりました。その結果、加筆が施された中山作品の確定も進み、また1920年代の中山が、画面上の、色、形態の処理、画面構成、そしてマチエールなどの点で、複合的な実に込み入ったコンビネーションを展開しているのが実感できます。
 この他、見所はたくさん。なにせ160点の油彩画に加え、水彩、素描などを合わせると250点もが展示されます。そのうちなんと個人所蔵が油彩だけで60点を越えます。
 この個人所蔵60点が何を意味するか。そう、個人所蔵作には便利な所蔵作品台帳なんかないんです。全作品のサイズを測り、サインや裏書きのデーターを集め、そのうえ図録掲載用の写真を撮らねばならないのです。それも「ねえ、お願い」と個人所蔵家にはいえませんから、全て私がやらなくてはなりません。それに作品名や制作年がわからないものも多いですから、その場合文献資料にあたり、それでもわからないときは、推定したり、所蔵者と話しあって、決めたりしなくてはなりません。これが60点あるとなるとその仕事量やいかに。
 と言うことで忙殺されているのです。でもなんとこの60点のうち、40点近くが初出。そう、いままで誰も見たことがなかった作品を40点も皆さんにお見せできるのです。だからこそ頑張らねば。だからこそ多くの方に見てもらわねば。
 と言うことで、ねえ、お願い、時間と経済的に無理のない方は是非見に来て下さい。すごいんだから。
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会場:岡山県立美術館自主企画特別展 中山巍(たかし)
会期:1999年9月24日(金)〜11月7日(日)
月曜休館。ただし10月11日は開館、翌日が休館
一般700円

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exhibition現代作家の眼展 クロスオーバー10-若い表現者達の? 問い-

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 中山巍展に忙殺されながら、実はもう一つの展覧会にも駆り出されているのです。
助けてー。
 それは私の職場岡山県立美術館に並び立つ岡山県総合文化センターでの「クロスオーバー10」という展覧会でして、瀬戸内海に面した兵庫、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、それに高知、さらには鳥取、島根の10県在住者を対象にした現代美術展です。
 この展覧会は、あの熱い60年代に産声をあげた汎瀬戸内現代美術展を引き受けるもので、もともと汎瀬戸内7県+高知で実施していた汎瀬戸内現代美術展が衣替えをし、折良く高速道路が太平洋から日本海までつながり盛り上がっていたのもあって山陰2県を加えたのが、一昨年でした。
 ビエンナーレ形式ですから、第2回展ですが実質的には、これがほんとの新生でしょう。
 鳥取・松本文仁、島根・竹田茂、山口・秋貞勇、広島・柴川敏之、岡山・金平靖子と宮地恵子、愛媛・藤田雅彦、高知・川埜龍三、徳島・三木健司、香川・村井知之、兵庫・日野田祟という、なんと各県代表各一名(岡山のみ2名)が集います。
 それも非公式ながら香川は毛利(高松市美)、高知は松本(高知県美)、山口は河野(山口県美)という頼りがいのある学芸員さん達が選んできたメンバー達です。
 なにせいろいろ問題があったところからのスタートですので、今回は大きな事は言えませんが(「これが実質的な新生」「非公式ながら」といったその意味やら、その他の様々な詳細を知りたい方は、ご面倒でも下記に掲げる長文をご覧下さい)、いつか各県毎が西日本の覇を競うべく力を注ぎ尽くし、いずれはアーティストとコミッショナーが瀬戸内を軍艦で渡って乗り付けるような展覧会に、なればいいな。
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会場:岡山県総合文化センター
会期:1999年10月20日(水)〜10月31日(日)
入場無料
10月24日(日)11:00と14:00 柳沢秀行をナビゲーターに、双方向ギャラリートークあり

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