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広島  出原均
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クシュシトフ・ウディチコ展
exhibition   &パブリック・プロジェクション広島1999年8月

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クシュシトフ・ウディチコ展
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パブリック・プロジェクション広島1999年8月

 アートスケープ編集部から当館(広島市現代美術館)のウディチコ展の紹介ないし展評(展覧会そのものは9月19日に終了しました)を、との依頼に少し途惑いました。勤務先の同僚の担当した展覧会に対する発言は、なかなか距離が取りづらく、褒めたり、貶したりするのが難しいのです。率直な感想を述べようとは思っていますが。
 ウディチコは、ポーランド出身(1943年生まれ)で、現在、ニューヨーク在住。マサチューセッツ工科大学の先生でもあります。市内のモニュメントにスライドやビデオを投影するパブリック・プロジェクションを行ったり、ホームレスのためのヴィークル(車)や、移民がその地の住人とコミュニケーションを図るための器具を作るなど、様々なプロジェクトを行っている作家です。展覧会は、これらのプロジェクトの器具、ビデオ、写真、ドローイング、解説文などから構成されています。クリストの場合もそうでしたが、プロジェクト全体がいわば作品でして、観客はこれらの資料からその全体を再構成しなくてはなりません。資料そのものに、絵画などを鑑賞するときのような魅力が十分あるとは言えない(できあがった車やツールもある程度そうです)ので、その点で面白くないと思うかもしれません。しかし、プロジェクト全体を把握すると、その発想のユニークさに感嘆してしまいます。もしかすると、現代のテクノロジーによる社会は、ひとつの方向性でしかなく、別の考え方の下に応用すれば、違った世界が現出するのでは、とまで思わせます。そういう意味では、この作家は、現代のユートピンかも知れません。(なお、今回、ポーランド時代のものも出品してまして、もちろん、一般の展覧会と同様、回顧展として見ることもできます。その頃から、ヴィークルや器具などを作る発想は、基本的に変わっていなくて、その一貫性に驚くとともに、住んだ場所に応じての変化もあって、その変遷を見ることができるからです)。
 今回、広島でパブリック・プロジェクションを行うことが大きな眼目でした。行ったのは、8月7日と8日。原爆ドームの下の護岸に被爆者たちの手を投影し、彼らの声をスピーカーで流し、まるでドームが人のように語る、という内容でした。プロジェクターを反対側の護岸から投影し、観客も、そちらから見ることになりました。展覧会で示したように、当初、社会や権力の批判的な意味合いを持っていたこの計画も、最近は、器具のプロジェクトの構想に近づいて、人々のコミュニケーションを図るためのものに展開しているようです。手だけ映すやり方も、ポーランドですでに試みていました。今回、直接ドームに投影せず(理由はいろいろでしょうが)、いわば重ねではなく、並列の手法なので、その関係がうまくいくのは、かなり限定された場所でした。中央のドームからちょうど真下に手が位置すると、ぴったりという感じです。プロジェクションの指示の時に、観客をできるかぎり正面から見せるように伝えて欲しいと言っていたのが、印象的でした。
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クシュシトフ・ウディチコ展

会場:広島市現代美術館 広島市南区比治山公園1-1
会期:1999年7月25日〜9月19日
問い合わせ:082-264-1121

パブリック・プロジェクション広島1999年8月

会場:元安川原爆ドーム対岸(平和記念公園)
日時:8月7日、8日 20:00〜


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report学芸員レポート[広島市現代美術館]

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アート・スウィート・ホーム

 8月半ばから9月半ばまでは、予算編成の時期です。来年度の様々な事業計画、管理運営業務を最終調整し、その予算を組むことが、毎年、この時期の仕事のかなりの部分を占めます。とくに自主企画展の場合、いわばパックになった巡回展と違って、その予算書の作成には、かなり手間がかかります。展覧会準備から終了までの経緯を具体的にイメージし、それに応じた予算項目を細かく拾い出し、いくつかの会社に見積書を依頼し、それらをまとめて予算書を作るのです。予算がなければ何もできないので、面倒だなどと言ってられません。予算がつくようできるかぎりの手を打ちます。来年度、どのような展覧会を開くかについては、現時点でお話することはできませんが、近年の不況などで当館も御他聞にもれず入館者が減少傾向にあって、その巻き返しを図るため、例年以上にポピュラーな内容のものを取り込みました。費用も、ここ数年の中ではかなり抑えたものになっています。ただ、はたしてどれぐらい予算がつくか、まったく予想がつきません。市(他の地方公共団体もそうですが)の財政事情はかなり厳しいようです。
 9月下旬は、10月2日からはじまる「アート・スウィート・ホーム」展の作品集荷と展示作業が主な仕事です。私は一応副担当として、若干この展覧会にかかわっています。ここで展覧会を少し宣伝します。このコンセプトのポイントは、ホーム=家に、家族だけでなく、建物としての家、家の内部のモノ、さらには、それらの相互関係をも視野にいれた、家をトータルにとらえているところです。絵画から写真、彫刻、オブジェ、インスタレーションまで、様々な作品によって、現代の家を浮かび上がらせようと考えています。今回は、子ども用の鑑賞教育も取り込んでいます。ご期待ください。集荷の話に戻りますと、山口・福岡に集荷する9月24日に、ちょうど台風が中国地方に来てしまいました。早朝から新幹線がストップしたため、私はトラックとの待ち合わせ場所となります最初の集荷先までも動けないし、高速道路が通行禁止のため、トラックの進行も思うようにいかなくなりました。事故の危険もあるので、結局、その日は中止し、別の日に延期したのです。4年前の「戸谷成雄展」の際も、集荷直前で阪神大震災が発生し、幸いなことに阪神には集荷先がなかったのですが、関西地方を避けて大きく迂回した経験がありました。美術館に10年もいると、いろいろあるなあ、と妙な感慨にふけりました。翌日からの関西・中部地方への集荷は、支障なく終了しました。集荷では、作家のアトリエ、つまり、創作の現場をかいま見ることができ、たいへん興味深いのですが、でも、モノを借りるということで、いつもながら、神経を使います。

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