logo
TOPICS
..
 



写真の行方
写真ギャラリーの行方――1980年〜2000年への変遷
 

写真好きな方だったら『PHOTO JAPON』(PJと略)という雑誌を覚えていると思います。1983年11月に創刊された写真専門雑誌で、賛否両論の雨あられの中1986年9月で休刊。『日本カメラ』や『ZOOM』などの読者から見ると中途半端な内容だと思われた方が多かったようです。しかし、PJは若い世代に写真の柔軟な見方を示してくれたと思うのですが、そう思うのは私だけでしょうか。86年はPJだけでなく老舗の『カメラ毎日』『ZOOM』も休刊になってしまいました。そのPJ最終号を見ると写真ギャラリーの特徴がよくでています。主流はやはりオリンパスニコンキヤノンコダック富士ミノルタなどメーカー系ギャラリーでの開催が多く、いまでも変っていないと思います。ほかに、虎ノ門/フォト・ギャラリー・インターナショナル、ポラロイドギャラリー、外苑前/ギャラリーワタリ、六本木/ギャラリーワイド、経堂/ギャルリ玄、新宿/ウェストギャラリー、大阪/ピクチャー・フォト・スペース、フォト・インターフォーム、京都/ミュージアムショップ・プリンツなどが写真展を展開し、このなかにはオリジナル・プリントを販売するところもありました。デパート系では渋谷西武、池袋西武アート・フォーラム、銀座プランタンなどがあり、なかでも渋谷パルコスペース5は、日本では知られていない写真家の発掘に努めています。それと、私は行ったことがないのですが、インディペンデント・ギャラリーが何件かあったそうです。オフ・コマーシャルギャラリー、自主運営ギャラリーとかリトル・ギャラリーと呼ばれていて、この種のギャラリーは、70年代後半が最盛期で、渋谷の豆腐屋の2階にあった「ギャラリーさくら組」、目黒の権ノ助坂の印刷屋の階上「PAX(パックス)ギャラリー」、森山大道氏を中心につくられた、新宿2丁目の「CAMP(キャンプ)」、東松照明氏の門下生中心の「PUT(プット)」などが名が知れていて、多くの著名な写真家を輩出したと聞きました。これらすべてのギャラリーは写真ブームと言われていた80年代を、バブル経済の波に乗りながら、実は尻すぼみ状態で90年代へと突入していったのでした。

 やがて、日本経済は文字通り泡と消え、長期的な経済低迷と消費の冷え込みが続くことになりました。そのなかで、1995年東京都写真美術館が開館。同年、国立近代美術館フィルムセンターが開館し、写真部門を設置。さかのぼって、90年写真誌『デジャ=ヴュ』創刊。91年キヤノン主催「写真新世紀」第1回開催。92年リクルート主催「3.3m2展」第1回開催。また、川崎市市民ミュージアム横浜美術館水戸芸術館が開館するなど大きな動きがあり、写真の状況は大幅に変わっていきました。そのなかで写真ギャラリーは、もろに経営縮小、方向転換を余儀なくされ、かなりの数のギャラリーが閉じていきました。しかしこの時期を何とか切り抜けた、いくつかの老舗写真専門ギャラリーや、高円寺/iltempo(イル・テンポ)、渋谷/エッグギャラリー、四ツ谷/mole(モール)、新たに表参道/バーソウ・フォト・ギャラリーや大阪/The Third Gallery Ayaなどが積極的に写真展を展開しています。
PROGETTOでのイヴェント
渋谷、道玄坂にある
アート・ブック・ショップPROGETTOは
店内で定期的にイヴェントや
作品、写真展を開催している。
マディ・ストーン・アクセル+吉田健吾の
パフォーマンスと写真展(上)と
アポロの作品展(下)。
毎月の展示、イヴェントの情報は、
ホームページ をご覧ください。



 90年代、特に後半期の写真状況の特徴をひとつだけあげるとすれば、写真以外(音楽、映像、メディア・アート、エディトリアルなど)のものとのシンクロが多かった年でした。写真というジャンルのなかで収まりきれない表現が増え、インスタレーションというかたちで現代アートやデザイン系のギャラリーなどで開催されることが多くなりました。大塚/タカ・イシイギャラリー、下北沢/G・H Gallery、青山/300日画廊、ギャラリー360°、表参道/Roket Art Laboratory、下高井戸/ギャラリーアート倉庫、恵比寿/P-HOUSE、用賀/シナプス画廊、などがおもしろい企画をし、アート・ブック・ショップと併設された表参道/NADiFF(ナディッフ)や渋谷/PROGETTO(プロジェット)、大阪/ブックセラーアムズやカフェやBarがある経堂/ギャルリ伝、沼袋/CHIMENKANO YA、などが若いアーティストをサポートする展覧会を開催し若い客層が集まるようになりました。

 2000年以降はどうなるのか。出版でいえば、パソコンの普及、DTP化の進歩、インターネットによる情報の速攻化、簡便化によって写真家が写真集、作品集を自費制作し出版する傾向が増えてきました。私もRICOCHET@ indies books cytというインディーズ・ブックの流通を2年前から始めたのですが、取扱書籍が年々増加しています。写真ギャラリーはどうなるのか。mole が縮小予定と聞き、ギャラリーの新変動期がきたと思いました。私は70年代と違った意味でインディペンデント・ギャラリーが出現すると思うのですが。それは露店や屋台のようなかたちかもしれません。実に楽しみなことです。
top

home | art words | archive
copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 2000