井上明彦、柏原えつとむ、藤本由紀夫という個性的な3人による展覧会。柏原の作品は、箱の中に8個の箱が入っていて、それらの中にまたさらに作品が入っているので、一つずつ出しては、開いてみなくてはならない。中から出てくるテキストをひとつひとつ読んでいるとついつい夢中になっていた。その間、同じくらいの間隔をおいて「ガシャ〜ン！」という大きな音が聞こえていた。はじめ、画廊の外から聞こえてくる工事かなにかの音かと思い、音がするたびに屋外を振り返って見ていた。その音こそ藤本作品だったのである。2001年のヴェネツィア・ビエンナーレに出品が決まった藤本。中村政人、畠山直哉との組み合わせで日本館がどんな空間になるのか。藤本がけっこうキーパーソンかもしれない。

2001年3月から上野の森美術館と京都市美術館を巡回する「ヴェネチア絵画展」の取材でヴェネツィアに来た。この展覧会ではティエポロなどの18世紀絵画が紹介される。アカデミア美術館を訪れた本来の目的は、日本での展覧会に出される作品の一部を観ることだった。考えてみれば、何度か来ているのだが、いつもビエンナーレのときに駆け足でこの街にやってくるので、 美術館に来るのもまだ2回目だ。修復して色を鮮やかに復元したベリーニの特別展をやっていた。ホントにこんな色だったの？

2001年のヴェネツィア・ビエンナーレの日本コミッショナーは、水戸芸術館芸術監督の逢坂恵理子さんで、参加作家は中村政人、畠山直哉、藤本由紀夫の3氏。逢坂さんは「国際的に活躍する作家より、日本にはこういう作家もいるんだ」という視点で選んだそうだ。テーマはなんとなく「fast and slow」。ちなみに、ビエンナーレの総合ディレクターは前回に続きハラルド・ゼーマン。総合テーマはとくに定めてないらしいが、単なる美術展にするのではなく、「stage of mankind」として映画、演劇、音楽など他ジャンルとの連携を意識しているという。また見に行くか。