May 13, 1997

Art Infomation Index - Jun. 17, 1997


【[Art Information Special 1]ヴェネツィア・ビエンナーレ】
 ………………●村田 真

【[Art Information Special 2]ドクメンタ】
 ………………●村田 真

【[Art Information Special 3]ミュンスター彫刻プロジェクト】
 ………………●村田 真


Art Information Back Number Index



ヴェネツィア・ビエンナーレ
La Biennale di Venezia

会期:
1997年6月16日
 〜11月9日
開催地:
イタリア、ヴェネツィア
メイン会場:
ヴェネツィア市内の国別パヴィリオン
問い合わせ:
Tel: 0039(41)5218800
Fax: 0039(41)5218837
テーマ:
Future, Present, Past(未来、現在、過去)
参加アーティスト
参加アーティスト一覧

[Art Information Special 1]
ヴェネツィア・ビエンナーレ

●村田 真



●概要

アドリア海をのぞむ島都市ヴェネツィアで、2年に1度開かれる国際美術展。会場は、島の東端のジャルディーニ・ディ・カステッロ(カステッロ公園)内にある各国パビリオンを中心に、市内各所に広がる。
  展覧会のテーマや方向性はひとりの総合コミッショナーが決定し、各国のコミッショナーがそれぞれの国から参加作家を選ぶという方式。俗にヴェネツィア方式と呼ばれ、ひとりのディレクターがテーマから作家まで決めるドクメンタ方式と比較される。

●歴史

同展の歴史は古く、イタリアが統合されて間もない1893年、国王ウンベルト1世とマルゲリータ妃の銀婚式を記念して、ヴェネツィア市議会が国際展の開催を決議、1895年に第1回展が開かれた。初期の頃は展示館はひとつ(イタリア館)しかなく、建築も出品作品も展示方法もきわめてコンサバだったらしい。1910年頃から国ごとのパビリオンが建ち始め、パビリオンを持たない国はイタリア館で展示するようになった。30年代に入るとビエンナーレもファシズム体制になり、34年(19回)にはムッソリーニと会談するためイタリアを訪れたヒトラーが会場を訪問している。
  38年(21回)から授賞制度がスタート。第2次大戦や造反運動による中断を挟んで、80年には若手作家を対象とするアペルト部門が発足、95年(46回)の前回、100周年を迎えた(アペルトは中止)。近年各地で2年に1度の国際展が開かれるようになったが、いずれも「ビエンナーレ」とイタリア語で呼ばれるのも、このヴェネツィア・ビエンナーレに敬意を表わしてのことだろう。

●授賞制度

38年に授賞制度ができたが、戦後、68年(34回)に学生運動のあおりを受け70年(35回)にいったん廃止。86年(42回)から復活。各国とも賞取り合戦を水面下で繰り広げる、戦前とは別の政治的様相を帯びてきた。このビエンナーレがしばしば「現代美術のオリンピック」と呼ばれるのは、たくさんの国が参加するというだけでなく、作家が国を代表して参加し、それぞれ賞をめざすため、いきおいナショナリズムがあおられるからである。

●日本の参加

日本は、早くも1897年(2回)に川端玉章らの日本画、高村光雲らの彫刻などの美術工芸品が出品された記録があるが、本格的な参加は52年(26回)から。56年には吉阪隆正設計のパビリオンが完成し、現在でも使われている。しかし美術作品の展示スペースとしては使いにくく、また老朽化してきたため、建て替え論議も起こっている。
  日本の窓口となっているのは国際交流基金。この国際交流基金が諮問機関である国際美術協議会を通してコミッショナーを決め、そのコミッショナーが作家を選定する。前回(46回)は100周年記念ということもあって初めてコミッショナーの指名コンペ制を採用し、伊東順二が選ばれたが、この伊東案を巡って論争が巻き起こったことは記憶に新しい。

■第47回ヴェネツィア・ビエンナーレ

会期は6月15日から11月9日まで。これに先立ち6月11、12、13日はプレス公開。
  総合コミッショナーはジェルマーノ・チェラント。統一テーマは設けられていない。特別企画展として、この30年間の現代美術を集めた「未来・現在・過去」がイタリア館とアペルトの会場だったコルデリーエ・デラルセナーレ(旧造船所)で開かれる。出品作家はマリーナ・アブラモヴィッチ、リチャード・アーシュワーガー、ダニエル・ビュレンヌ、ディノス&ジェイク・チャプマン、フランチェスコ・クレメンテ、トニー・クラッグ、ヤン・ファーブル、ルチアーノ・ファブロ、マイケル・ハイザー、イリヤ・カバコフ、アンゼルム・キーファー、ジェフ・クーンズ、ロイ・リキテンスタイン、ロバート・ロンゴ、アグネス・マーティン、森万里子、クレス・オルデンバーグ、パナマレンコ、蔡國強、ゲアハルト・リヒター、ジュリアン・シュナーベル、ハイム・スタインバック、フランツ・ウエストら計65作家。チェラントは、前回中止されたアペルトをここに吸収させるつもりらしい。
  国別パビリオンは30館あり、イタリア館での展示も含めて計57カ国が参加。何人か例を挙げると、ロドニー・グラハム(カナダ)、ファブリス・イベール(フランス)、ゲアハルト・メルツ(ドイツ)、レイチェル・ホワイトリード(イギリス)、ステファン・アントナコス(ギリシャ)、森万里子(北欧3カ国)、イク ジュンカン(韓国)、コマール&メラミッド(ロシア)、ロバート・コルスコット(アメリカ)など。目を引くのは森万里子。カタカナ(ほんとはアルファベットだが)だらけの中に2度も顔を出す。しかも国別パビリオンは北欧3カ国から。ここらへんのボーダーレスが最近のヴェネツィアのおもしろいところだ。
  日本館は今回、南條史生コミッショナーの選んだ内藤礼が出品。実は当初、47回展は来年に延期されるとの観測が流れていたが、昨年11月末に開催が決定し、国際交流基金に伝わったのが12月。前回のようにコミッショナーを指名コンペで選ぶ時間もなかったので、かつて日本館のアシスタント・コミッショナーを務めたこともあり、国際展の経験豊かな南條に決まったのだという。
  内藤礼は、1961年生まれ、武蔵野美術大学卒業。91年、佐賀町エキジビット・スペースに大きなテントを張り、その中に繊細なオブジェをインスタレーションした「地上にひとつの場所を」を発表。今回ヴェネツィアに出品するのはこの作品の延長だという。観客はこのテントの中に入り、静謐な光の中で作品を体験することになる。南條コミッショナーによれば、これまで海外に紹介された日本の現代美術はポップかテクノロジー系が多かったので、もっと精神的なものを出したかったとのこと。
  問題はこのテントの中には1回にひとりずつしか入れないこと。しかも内藤の希望として10分は中にいてほしいという。もしこれを5分に削ったとしても、1日せいぜい100人しか作品を体験できない。さらに、テント内に入れるのは内藤が会場にいる間に限られ、それ以外の時はテントの入り口から中をのぞくだけ。つまり、来場者のほとんどは作品を体験できないのだ。当然、不満や反発が予想されるが、南條コミッショナーは、作品を1点2秒しか見ないといわれる最近の国際展に対する、クリティカルな問題提起の意味もあると語っている。結果は、吉と出るか凶と出るか。

[むらた まこと/美術ジャーナリスト]

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ドクメンタ10
Documenta X

会期:
1997年6月21日
 〜9月28日
開催地:
ドイツ、カッセル
メイン会場:
フリデリツィアヌム美術館
(Museum Fridericianum)
問い合わせ:
info@documenta.de
Tel: (0561)707270
Fax: (0561)774276
入場料:
DM25/2日券DM38/
会期券DM120/
夜間(5〜8時)券DM10
参加アーティスト:
6月21日の一般公開まで非公開
カタログ:
『ドクメンタX ドキュメント(Documenta X Documents)』
ガイドブック:
DM90(予定)





DOCUMENTA
http://www.documenta.de/

[Art Information Special 2]
ドクメンタ

●村田 真



●概要

ドイツのほぼ中央に位置するヘッセン州カッセル市で5年に1度開かれる国際美術展。ヴェネツィア・ビエンナーレと双璧をなす。ヴェネツィアとは違って、ひとりの総合ディレクターが企画から人選までを決定するので明快だ。これまでのディレクターは、ハラルド・ゼーマン(スイス)、ルディ・フックス(オランダ)、ヤン・フート(ベルギー)など、ドイツ周辺の小国出身のキュレーターが多く、また、参加作家の選択は欧米先進国(死語)に偏重しており、きわめて実験的な作品が多かった。東西ドイツ統合前は、カッセル市が東ドイツとの国境近くに位置していたため、西側における表現の自由の宣伝塔の役割を果たしていたともいわれる。ここらへんにヴェネツィアとは違った政治力学が感じられる。
  会場はフレデリツィアヌム美術館を中心に、オランジュリー、ノイエガレリー、ドクメンタハーレ、および市内各所。運営はカッセル市やヘッセン州が出資するドクメンタ有限会社による。

●歴史

カッセルの画家、デザイナー、建築家だったアーノルド・ボーデが設立。1930年代以降中断されていたモダンアートの復活をめざし、1955年の第1回展では、ヒトラーによって「退廃芸術」の烙印を押された前衛芸術が公開された。第3回(64年)からヨーゼフ・ボイスが参加。以降、ボイスはドクメンタになくてはならない顔になり、死後の87年(8回)、92年(9回)にも作品が出品された。当初4年に1度のクアドリエンナーレだったが、第5回(72年)から5年に1度に定着。入場者は回を重ねるごとに増え、前回(92年)は60万人を突破した。
  日本人作家は第6回(77年)で初登場、原口典之、高松次郎、荒川修作らが出品し、第7回(82年)は河原温ただひとり。第8回(87年)は川俣正、遠藤利克、吉沢美香ら、第9回(92年)には2回連続の川俣のほか、長沢英俊、舟越桂、竹岡雄二、片瀬和夫が出品している。合計しても20人足らずで、ここにも欧米偏重がうかがえよう。

■ドクメンタ10

会期は6月21日から9月28日までの100日間。プレス公開は19、20日。
  総合ディレクターは、パリの国立ジュー・ドゥ・ポーム美術館キュレーター、カトリーヌ・ダヴィッド。出品作家はプレス公開まで明らかにされないが、約250人にのぼるといわれている。テーマは「文化のマニフェステーション」。美術のみならず、映画、音楽、哲学、文学、建築まで含めた現代文化の多様性を提示するという。会期中の100日間、毎日多彩なジャンルのゲストを呼んで、ドクメンタハーレで公開ディスカッションを行なう「100デイズ/100ゲスツ」を予定。

[むらた まこと/美術ジャーナリスト]

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ミュンスター彫刻プロジェクト1997
Skulpture Projekte '97 in Munster

会期:
1997年6月22日
 〜9月28日
開催地:
ドイツ、ミュンスター
メイン会場:
ヴェストファーレン州立美術博物館
ミュンスター市内各所
問い合わせ:
Tel: (0251)5907201
入場料:
DM5
(特別割引料金有)
カタログ:
DM42 (約500頁 
カラー図版200点,
モノクロ図版300点,
独英バイリンガル)
ガイド:
ピクニック付きのファミリーツアーなど様々な見学ツアー有り(要予約)
参加アーティスト
参加アーティスト一覧





Skulptur Projekte in Munster
http://www.artthing.de/
muenster/

[Art Information Special 3]
ミュンスター彫刻プロジェクト

●村田 真



●概要

ドイツ北西部ノルトライン・ヴエストファーレン州のミュンスター市で、10年に1 度開かれる国際美術展。1977年に始まり、今年で3回目。作家を招待し、教会、公園、建物の壁など気に入った公共スペースに作品を設置してもらう計画。それほど大きな街ではないが、市内各所に作品が点在するので歩いて回るのはツライ。ちゃんと自転車の貸し出しもある。
  観客はまず州立美術館でガイドをもらい、それを片手に街中をオリエンテーリングしていく。作品を探すうち街の様子も次第にわかってきて、むしろそちらが目的で、彫刻はそのための手段だったのかとさえ思えてくる。テンポラリーなパブリックアートともいえるが、会期終了後、作品によって撤去されるものと残されるものがある。芸術と公共性を問い直すユニークな展覧会といえよう。

■ミュンスター彫刻プロジェクト1997

会期は6月22日から9月28日まで。キュレーターはカスパー・ケーニヒ。カール・アンドレ、ダニエル・ビュレンヌ、リチャード・ディーコン、カタリーナ・フリッチュ、ダグラス・ゴードン、ハンス・ハーケ、レベッカ・ホーン、イリヤ・カバコフ、川俣正、マルティン・キッペンベルガー、ラインハルト・ムハ、トニー・アウスラー、ナムジュン・パイク、ファン ヨンピン、チャールズ・レイ、曽根裕、リクリット・ティラヴァニヤ、レイチェル・ホワイトリードら、約70作家が出品予定。

[むらた まこと/美術ジャーナリスト]

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Art Information Back Number Index

May 13, 1997


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