Aug. 20, 1996 Sep. 3, 1996

Art Watch Index - Aug. 27, 1996


【スチュアート・ホーム展覧会 at workfortheeyetodo in LONDON
 ―我々はアートという制度を本気で廃止することができるのか?― 】
 ………………● 毛利嘉孝


Art Watch Back Number Index



スチュアート・ホーム展覧会
1996年7月27日〜9月7日
workfortheeyetodo
in LONDON
時間
木・金・土のみ 11:00am-6:00pm
51 Hanbury Street London E1
最寄駅
Aldgate East Tube
Tel. 0171-426-0579





Stewart Home
http://www.widemedia.
com/mutual/
home.html

Paintings of Vermeer
http://www.ccsf.caltech.
edu/~roy/vermeer/

Stuart Hall index
http://www.tiac.net/
users/thaslett/s_hall/
hall_index.html

The Art Strike as a Social Movement(?)
http://ernie.bgsu.edu/
~swilbur/Art_Strike.html

スチュアート・ホーム展覧会
at workfortheeyetodo in LONDON
―我々はアートという制度を本気で廃止することができるのか?―

●毛利嘉孝



展覧会らしからぬ展覧会

ここで紹介するイヴェントを展覧会と呼ぶことが的確だとは思えない。会場は、インド系イギリス人の居住区で知られるロンドン市内のオルドゲイトの書店workfortheeyetodo。この書店はとても変わっていて、木・金・土曜日の3日しか営業せず、開いている日でさえ入口には看板も出ておらず、わざわざ呼び鈴を押して入口の鍵を開けてもらわなければいけない。なにやら人の家の応接間に通された感じである。書店には 、スチュアート・ホームをはじめとするメディア・アクティヴィスト、シチュエイショニスト、そして美術関係の本が整然と並んでおり、その壁の一面を使って22枚のA4サイズのホームの作品が展示されている。その作品はすべて、フェルメールの絵画をフォトコピーし、その上にピンクの蛍光塗料で着色したものである。
  スチュアート・ホームスチュアート・ホールという日本語表記すると非常に似た 名前の有名なカルチュラル・スタディーズの学者がいるが、別人である。念のため)は、最近日本でも上野俊哉や小倉利丸らによって紹介されつつある、シチュエイショニストの末裔で、小説家、パフォーマー、アクティヴィストである。彼は、ネオイズム、プレイジャリズム(盗用主義とでも訳すべきか)の提唱者として知られ、1990年〜93年の3年間アートに関する活動を一切やめる(ストする)という活動、アートストライキの中心メンバーの1人でもあった。

アートの概念を解体する

入口の机には展覧会の説明書きがある。それによると、この展覧会は、美術作品の保存・修復とそれに関わる美術史・批評史の資本主義的イデオロギーを批判しつつ、「アート」という概念自体を解体しようというものらしい。
  各作品には値段がついており、1枚£25、2枚で£100、4枚で£400と買えば買うほど比較級数的に作品1枚の単価があがり、全部買うと£10,865,359,993,600(約2000兆円!)になるらしい。この作品は全部で20分間で作られ、かつそれぞれ世界で1点しかなく、さらにイデオロギー的に商品から自律するためにこういう値段が付けられており、これは展覧会の脱構築的な(破壊的な?)意図を反映したものと解説には書かれている。
  展覧会のテキストは圧倒的におもしろい。しかし、これをかつてシチュエーショニストが重要視していたプロパガンダの手段としてみるとどうだろうか? こうした手法自体が再びアートに回収される危険から免れていないのではないか? しかし、こういった問いに対してこの小さな書店の会場だけで判断するのは危険だろう。シチュエーショニストの末裔として、情報の流通に人一倍関心の高いホームは、これをスタンドアローンの旧態依然とした展覧会としては考えていないのかもしれない。本当に小さな展示だけにこれからの情報戦に期待したい。

[もうり よしたか/
カルチュラル・スタディーズ]
mouri@dircon.co.uk

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