Dec. 10, 1996 Dec. 24, 1996

Art Watch Index - Dec. 17, 1996


【「横浜国際写真フェスティバル'96」の出航】
 ………………● 飯沢耕太郎

【西海岸ファイン・アートと
 デストロイ・オール・モンスターズ】
 ………………● 椹木野衣


Art Watch Back Number Index



「横浜国際写真フェスティバル'96」
会場:
横浜・桜木町・関内・石川町駅周辺
会期:
1996年10月19日
 〜12月23日
問い合わせ:
横浜国際写真フェスティバル開催委員会
Tel.045-661-1209
畠山直哉展示会場

今日の作家展《ニュー・ジャパニーズ・フォトグラフィ1990's》
畠山直哉展示会場風景
横浜市民ギャラリー

西川克二

西川克二《静・動・夜》会場風景
STスポット

ハリー・チュリエ

ハリー・チュリエ《RECENT WORKS》会場風景
パストレイズ・フォトギャラリー






国際写真フェスティバル(北海道東川町)
http://www.eolas.co.jp/
photo-fiesta/index.html

PhotoGuide Japan's PhotoOrganizations
http://photojpn.org/
RES/org.html

IMI・GSの講師陣/港千尋
Chihiro MINATO (in Japanese)
http://www.iminet.ac.jp/
imi96/profile/minato.htm

IMI・GSの講師陣/伊藤俊治
http://www.iminet.ac.jp/
imi96/profile/ito.htm

伊奈英次
TAMA VIVANT '90 「あいまいな次元」
http://www.hama-net.or.jp/
tamavivant/90page.htm#ina

今道子
PHOTOGRAPHY IN NEW YORK - INTERNATIONAL
http://www.photography-
guide.com/
photo.index.jkl.html#KON

柴田敏雄
PHOTOGRAPHY IN NEW YORK - INTERNATIONAL
http://www.photography-
guide.com/
photo.index.stu.html#SHIBATA

畠山直哉
TAMA VIVANT '88 「世界の模型」
http://www.hama-net.or.jp/
tamavivant/
88page.htm#hatakeyama

IMI・GSの講師陣/畠山直哉
http://www.iminet.ac.jp/
imi96/profile/hatakeym.htm

横浜美術館
http://www.art-museum.
city.yokohama.jp/index.html

The Classic Camera
http://pweb.aix.or.jp/
~taka-ku/

PhotoGuide Japan's PhotoBulletin
http://photojpn.org/
/bull.html

「横浜国際写真フェスティバル'96」の出航

●飯沢耕太郎



新しい写真のお祭り

96年10月から12月にかけて「横浜国際写真フェスティバル'96」というイベントが開催された。横浜を中心として20余りの写真展、シンポジウム、ワークショップなどが催される写真のお祭りである。
  このような写真を中心とする連続的なイベントは、80年代以降世界各地の都市で開かれるようになった。パリ、アルル、ヒューストン、ロッテルダムなどが有名である。日本でも1985年から北海道・東川町で国際写真フェスティバル(略称、フォトフェスタ)が開催されており、すでに10年以上の歴史を持つ。また昨年からは日本写真協会主催の「東京写真月間」(毎年5〜6月)も産声をあげた。もともと写真は大衆的な表現媒体であり、作家と観客が一体になったこの種の催しには適している。今、全国各地でいろいろなスタイルの映画祭がおこなわれているが、今後はもっと写真のお祭りも増えてくるのではないだろうか。

フェスティバルの問題点と可能性

さて、「横浜国際写真フェスティバル」だが、まだ第一回目ということで、準備の期間も予算も充分とはいえず、いろいろ問題点も目についた。たとえば、参加会場がかなり広い地域にわたるのは仕方がないにせよ、会期が10月から12月までばらばらで、2、3度足を運ばないと全部の企画をカバーできないのは、特に遠くから来る観客にとっては辛い。メインとなる幾つかの展覧会については、同時期にオープンする工夫が必要だろう。また、写真展やシンポジウムの内容がばらばらで、統一的な視点を欠いているのもなんとかすべきだと思う。もちろん、すべての企画が同じテーマでは逆に堅苦しくなってしまうのだが、幾つかのゆるやかなテーマ群を設定することで、フェスティバル全体が一つのメッセージを発するように感じられればいいと思う。
  とはいえ、全体的に見れば質の高い企画が多く、フェスティバルの今後の可能性は大いに期待できそうである。今回のフェスティバルで事務局の役割を果たしたパストレイズ・フォトギャラリーでの白岡順、春田大作、ハリー・チュリエの連続展、大桟橋の客船ターミナルのホールを利用した港千尋の個展「記憶の桟橋」、伊藤俊治のディレクションによる「ニュー・ジャパニーズ・フォトグラフィ1990's/無意識の共鳴」(横浜市民ギャラリー、出品作家・伊奈英次、猪瀬光、上田義彦、倉田精二、今道子柴田敏雄、高橋恭司、畠山直哉、普後均、古屋誠一、宮本隆司)などは、力の入ったいい展覧会だった。他にも横浜という土地柄にふさわしく、海や港をテーマにした見応えのある展示が多かった。

横浜の文化的背景

横浜は1862(文久2)年に日本最古の肖像写真スタジオが下岡蓮杖によって開設されるなど、日本の写真文化の発祥の地の一つである。また89年には写真の常設展示の施設を持つ横浜美術館がオープンし、94年には横浜市が歴史的な写真器材と写真作品から成る「ネイラー・コレクション」を4億円という費用を投じて購入した。今後、このような歴史的・文化的な観点を踏まえて、さらに大きな規模で国際写真フェスティバルを展開していく条件は、既にかなり整っているといえる。今回のフェスティバルは、まだ準備が整わないうちの慌ただしい出航という印象もあったが、次回はよりスケールの大きなイベントの実現を期待したい。

[いいざわ こうたろう/写真評論家]

toBottom toTop


《マイク・ケリー新作展“ランド・オー・レイクス”》
会場:
ワコウ・ワークス・
オブ・アート
会期:
1996年11月22日
 〜12月27日
問い合わせ:
ワコウ・ワークス・
オブ・アート
Tel.03-3373-2860
《ポール・マッカーシー》展
会場:
小山登美夫ギャラリー
会期:
1996年11月23日
 〜12月22日
問い合わせ:
小山登美夫ギャラリー
Tel.03-3630-2205
《レイモンド・ペティボン》展
会場:
タカ・イシイ・
ギャラリー
会期:
1996年11月26日
 〜12月28日
問い合わせ:
タカ・イシイ・
ギャラリー
Tel.03-3915-7784
《デストロイ・オール・モンスターズ》展
会場:
THE deep
会期:
1996年12月21日まで
問い合わせ:
THE deep
Tel.03-3463-1907
『デストロイ・オール・モンスターズ』ライヴ
会場:
ラフォーレ・ミュージアム原宿
会期:
1996年11月28日
マイク・ケリー/..Sexualized Land-O-Lakes Girl...

マイク・ケリー
Slightly Psychedelic Depiction of the Sexualized Land-O-Lakes Girl (High Priestess)
1996, Mixed media on paper, 129.5 x 144.8cm

ポール・マッカーシー/Masks(Rocky) ポール・マッカーシー/Masks(Olive Oil)
ポール・マッカーシー/Masks(Pig)

ポール・マッカーシー
(上左)Masks(Rocky)
(上右)Masks(Olive Oil)
(下)Masks(Pig)
いずれも
1994, cibachrome print, 182.9 x 121.9cm

レイモンド・ペティボン/無題 レイモンド・ペティボン/無題
レイモンド・ペティボン/無題

レイモンド・ペティボン
(上3点いずれも)無題
1996




JOHN WATERS / MIKE KELLEY
http://www.voyagerco.com/
gs/gs57/waters.html

Paul MaCARTHY
http://www.thing.net/
artpub/mccarthy.html

Raymond Pettibon
http://www.tractor.com/
pettibon.html

Raymond Pettibon
http://www.artcity.com/
artists/picot/
pettibon.html

artbooks by shinro ohtake
http://www.artbooks.de/
ohtake/

Alien8 Recordings: Merzbow
http://www.total.net/
~alien8/Merzbow.html

暴力温泉芸者
The Conversation: Masaya Nakahara Violent Onsen Geisha
http://japan.co.jp/tj/
9607/converse.html

Violent Onsen Geisha Discography
http://www.iamas.ac.jp/
~hrr/noise/viol-e.html

DESTROY ALL MONSTERS
http://www-personal.umd.
umich.edu/~haibachi/
Forklift/Interviews/
dam.html

Destroy All Monsters Japan tour
http://www.blank.net/
DAM/tour.html

西海岸ファイン・アートと
デストロイ・オール・モンスターズ

●椹木野衣



西海岸軍団来日!

1996年も年の暮れになって、マイク・ケリーポール・マッカーシーレイモンド・ペティボンという、西海岸のファイン・アートを代表する三者の展覧会が、ここ東京で開催されている。 彼らはいずれも、ニューヨークを中心に展開されてきたファイン・アートをめぐる図式の見直しのなかから80年代になって浮上した作家なので、キャリアは長く、それぞれが70年代より独自の活動を繰り広げてきている。

極東「アングラ」シーンとの接点は?

どちらかといえばヨーロッパとの文化的連続性を強調し、理論的にも展示においてもストイックなニューヨークに対して、サブカルチャーからの影響を隠そうとせず、時に破天荒で作品としてまとまらない西海岸の動向と対比することができそうだが、実際、彼らの作品を東京で受け止めてきた向きも、ファイン・アート寄りというよりは、アンダーグラウンド・シーンとの接点においてであった。
  だからこそ言っておきたいのだが、いまさらながらファイン・アート寄りの人々が、 なにか凄い事が起こっているかのように彼らの作品やパフォーマンスにことさら注目しているのには、どこかで興ざめな思いがするのも正直なところである。
  それならばなぜ、彼らと同様の活動をそれこそ70−80年代から行なっており、今回の来日においてももっとも接点があった、大竹伸朗や山塚アイ、そして秋田昌美、さらには暴力温泉芸者といった者たちの「アングラ」の活動には一瞥も加えなかったのか? いずれにしても依然として、海外で評価が定まったものに性急に飛びつく美術関係者のあたふたとした対応から見えてくるのは、永遠に中途でしかない極東モダニズムの後遺症にほかならない。
  彼らを日本に紹介するというハードルをクリアしたことにおいて最大限の評価を下した上 でこのように言うのも、以上のような事情を含めての上と、ご了解頂きたい。

「伝説のバンド」再結成

さて、今回の「西海岸軍団」の来日の最大の成果は、おそらく、デストロイ・オール・モンスターズ(マイク・ケリー参加)の再結成であろう。会場となったラフォーレ原宿には、暴力温泉芸者やヤマタカEYEも参加するということもあって、ふだん美術とは関係なさそうな若い客層で溢れかえっていた。しかし、空前の消費文化の中でおそろしく耳の肥えた日本のこの手の層に金を取って聞かせるのにはあまりにもおそまつなデストロイの正体が暴露されるにしたがって客が通路に溜まりはじめ、なかにはこれ見よがしにバカにするものまで現われる始末。わたしも、美術が音楽をバカにするのもいいかげんにしろと一度は怒りかけたが、ほとんど全曲全編歌詞カード棒読み、終始壊れたままのキーボード、上手くいかない事に対するマイク・ケリーの怒り炸裂、何をやってるのかほとんどわからないビートルズのカバーなどを聞いているうちに、これはもしかすると無茶苦茶無意味な事が起こっているのかもしれないと思い返し、衿を正したい気分になった。まあ、多分の練習不足と基本的に日本(猿)をナメてかかったこと、そして高齢、あとは受け入れ側があまりに立派な「箱」を用意しすぎたのやらなんやらで偶然、こうなったのだとは思うのだが、それにしても凄惨で壮絶な稀に見るライヴであったことはまちがいない。まさに「伝説のバンド」というほかないだろう。

[さわらぎ のい/美術評論家]

toBottom toTop



Art Watch Back Number Index

Dec. 10, 1996 Dec. 24, 1996


[home]/[Art Information]/[Column]


Copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 1996
Network Museum & Magazine Project / nmp@nt.cio.dnp.co.jp