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国際展も変わらなきゃ! 村田真

ヴェネツィア・ビエンナーレドクメンタミュンスター彫刻プロジェクト。今年のヨーロッパを彩るこの3つの国際展は歴史も開催方式も企画内容も異なっている。んなこたガッテン承知のうえで、あえて3つを同列に並べ、おまけに採点までしちゃおうってんだからいったいオマエは何様のつもりだ?俺様だ。

採点項目は、企画性、芸術性、地域性、お祭り性の4項目。もっとほかの評価基準もありそうなもんだが、単なる思いつきだから仕方ない。ま、余興だから。企画性は、全体を貫くテーマ設定の妥当性や、キュレーターの企画力を問う。芸術性では、出品作品の質の高低を問う。地域性は、いかに開催地に根ざし、地元と連携できているかを問う。そしてお祭り性では、イベントとしての盛り上がり度を問う。いうまでもないが、盛り上がればいいってもんではない。
ではひとつひとつ見ていこう。

第47回ヴェネツィア・ビエンナーレ

企画に関して今回は最低だと思う。昨年末に急遽開催が決まり、あわててノルマをこなしたって感じ? 統一テーマもないし(あってもないようなもんだが)、企画展の「未来・現在・過去」も有名作家をかき集めただけで、ずさんな印象だ。ただ、これだけの作家を招集できたジェルマーノ・チェラントの力量は認めざるをえないが。 芸術性はパビリオン展示に関しては壊滅的だが、企画展のほうはさすがに力のある作家が入っているので救われた。地域性は100年の歴史がものをいう、いや歴史にあぐらをかいているというべきか。市内各所のパラッツォを展示場に使っているのは○。でも、大半の住民や観光客は無関心だ。お祭りに関しては、ビエンナーレに限らず、なんでもお祭り騒ぎになってしまう祝祭都市の底力か。

ドクメンタ10

経過や結果はともかく(なんじゃそりゃ)、企画性に関して、展覧会の隅々までキュレーターの趣味が貫徹されていたのは○。これまでの総花的ドクメンタに対する痛烈な批判とも読める。記者会見におけるカトリーヌ・ダヴィッドの投げやりでアンニュイな態度も好き好き。。芸術性は、未知の作家が多かったのはうれぴーが、印象に残る作品は少ない。地域性では、地元サービスとしか思えない「100デイズ/100ゲスト」が高得点。だけどいつになく秘密主義が徹底していたので減点。お祭り性は、これをとことんとことんとん拒否しイベントを盛り下げようとするカトリーヌが、ありゃまガリバー人形にされて担ぎ出されたので×。

ミュンスター彫刻プロジェクト1997

今回特に、というわけでもないが、このプロジェクト自体の企画が○。芸術性に関しては、ヴェネツィアやドクメンタに出品するより作家も力を発揮するのでは、と思わせた。ハズレも多いが、アタリも少なくない。やはり地域に根ざした作品に○が 多い。地域といえば、このプロジェクトは地域との連携なくして考えられないし、むしろ地域から発想されたプロジェクトというべきか。でもそのわりに、良くも悪くもお祭り騒ぎの盛り上がりは感じられない。唯一盛り上げたのはダニエル・ビュレンヌの紅白の旗?

ジャーン! それでは発表しまっす。

輝け! 1997年前半期、恐怖の国際展成績表!!!

企画性 芸術性 地域性 お祭り性
ヴェネツィア 不可
ドクメンタ 不可
ミュンスター

総合評価としては、1位 ミュンスター彫刻プロジェクト(優)、2位 ドクメンタ10 (良)、 そしてトホホの最下位は、第47回ヴェネツィア・ビエンナーレ(ぬあんと不可!)の順。

結果的に歴史の長い国際展ほど成績が悪かったわけだが、これは歴史にあぐらをかいているとか組織が硬直しているとか、いろいろ理由は考えられよう。しかし、重要なのは歴史よりも、むしろ開催間隔かもしれない。ミュンスター(10年)、ドクメンタ(5年)に比べて、ヴェネツィア(2年)は短すぎるのではないか。今回ヴェネツィアは、開催を来年に1年延期するはずだったのが、市の要請で早めたと聞く。ヴェネツィアに限らず多くの国際展がビエンナーレ方式を採用しているのは、それが地域振興を兼ねているからだが、そのために美術展としての質が落ちるようでは本末転倒といわざるをえない。

また、これは散々いわれてきたことだが、ヴェネツィアの国別パビリオン展示はどうにかしてほしい。いまや北欧パビリオンから森万里子が出品するご時勢。「ボーダーレス」なんてもはや死語になるくらい昔からいわれてきたんだから。たとえば、あのパビリオンのおっ建ってるジャルディーニを安いペンショーネかアーティスト・イン・レジデンスとして開放し、これまで関連企画展の行われてきた市内各所のパラッツォに展示を分散させるとか。ヴェネツィアだったら、それこそ街を歩き回るだけで十分楽しめるしー、みたいな。

国際展と同じく19世紀に起源を持つ博覧会やオリンピックだって、それなりに変わろうとしてるんだから、国際展も変わらなくちゃ!(文中敬称略)

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