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村田vs名古屋対談
ミュンスター 作品ガイド

ミュンスター
名古屋:ミュンスターは、いわゆるパブリック・アートの意味が問い直されていたといえますか?
村田:いや、もともとこれ、1977年から始まっているから、まだ今ほどパブリック・アートとか、そんなにいわれてない時期で……今回3回目で、過去2回にやった作品のうち、残してあるものもあるし、撤去される作品もある。長い目で見れば、恒久的な作品が徐々に増えていくという感じですね。これなんか、最初の回にできた、ドナルド・ジャッドのまあ、子供の遊び場のような……これはカバコフ
名古屋:はぁー。
村田:これはアンテナみたいになってて、ここに字が書いてある。詩になっている。見る人は寝そべって、空を眺めながら字を読むという……。
名古屋:なるほど。
村田:これは面白いなと思った。これまで水平に向いていた視線を垂直に向かわせるわけだから。
名古屋:これ、今回ですか? これは残るでしょうね。
村田:どうかな。物理的に残せるものかどうかですね。
名古屋:ほかに印象に残った作品は?
村田:川俣正
名古屋:船ですね。
村田:船。これが船着き場。これはもともとオランダのアル中とか、ヤク中患者の更生のためのプロジェクトとして造ったもので、まあ、一種の芸術療法ですね。それをミュンスターにもってきた。
名古屋:なんか、でも、そういう取り組み方というのは、少し優等生的で、クサいような気がするんですけれども。
村田:川俣が参加するということが?
名古屋:いや、そういうアル中やヤク中患者の更生のためにアートを使うというやり方が。
村田:うーん。
名古屋:逆に、そういうアル中、ヤク中の人を殺して、その骨で船でも造ったほうが、まだ芸術的ではないかと(笑)……。
村田:なんてこと言うんだ、おめえ(笑)……。まあ、だけど、真面目に考える必要はなくて、一種の笑い話として聞けば、けっこう笑えるじゃない? 実際にこれ、造ったものを持ってきたんだけれども、そのためにわざわざ、オランダからアル中とかヤク中患者を連れてきたんだって。で、この河畔にテントを造って、2週間ぐらいずっとキャンプしてたんだそうで、彼らを絶対外に出さないようにしてたんだって(笑)。そういうのを聞くと、けっこうこれは、おかしいなあと。わざわざオランダから中毒患者を連れてくるっていうのがね。
名古屋:でもなぜ、そういう患者でなければいけなかったのか。普通の美大生のアルバイトだと、違ったものができたのか。そのへんがもうひとつわからない。まあ、それはそれとして……。
村田:これはもともとミュンスターのためにつくったものではないし、ここで発表する意味がどれだけあるのかというと、疑問は残りますが。
名古屋:まあ、プロジェクトとしては面白いかもしれませんが、べつにそういう“いわれ”がなければ、つまらない木の船……
村田:そうですかね。
名古屋:ほかの作品では……。
村田:これは、中国出身のファン・ヨンピン。これはねえ、この奥に教会があるんですけど、その教会に、両腕のないキリスト像というのが飾られているそうなんで、そのキリスト像と、仏教の千手観音とを合わせて、こういうふうなものをつくったそうで。
名古屋:なるほど。そのへんがこういう、公共スペースに置かれた作品の面白さでしょうね。背景がわかれば、ますます面白い、と。
村田:これもだれかの作品なんだろうけども、インフォメーションもなく……これ、オルデンバーグの第1回目の作品が残っているという……。
名古屋:77年が第1回ということですが、その当時はまだ今流のパブリック・アートなんていう概念はなかったかも……いや、あったかもしれませんが、芽生えたばかりの時期で、今はもう、初めにパブリック・アートという概念があって、みんな、それに合わせて作品をつくるでしょう。すると、そういう浅はかなコンセプトをもった作品も出てくることになる。
村田:うん、それはありますね。ただ、やっぱりここは“老舗”って感じがあるから、それなりに考えてやってますね。これはハンス・ハーケで、ここに戦争のモニュメントがあるんだけど、それに対応させてつくったそうです。この中が実は、メリーゴーラウンドになっている。で、音が聞こえてきて、チカチカ光がもれてくるの。だけど、外からはほとんど見えない。モニュメントとの関係もあるんだけれども、それを考えなくても、これだけでも楽しさを封じ込めたような、非常に面白い作品でした。
名古屋:さっきの教会にちなんだ作品もそうでしたけども、ミュンスターという土地にどれだけかかわっているかということ、まあ、それこそ川俣さんの作品なんか、べつに関係ないわけで、その点バラつきがあるんじゃないかと思うんですが……
村田:うーん。ま、基本的にみんなミュンスターに呼んで、場所を選ばせてプランを出させる、ていう形だそうですけどね。
名古屋:それでは、じゃあ、パブリックとアートの相克といいますか、そういうものをみんな共通してもっているのかというと……
村田:そうでもない。いろいろですね。いろんなかたちでかかわっている。単に、空間が面白いからっていうのもあるし、逆に公共性ということだけを考えたものもあるし……。
名古屋:なるほど。
村田:これがフランツ・ヴェスト。
名古屋:ああ、例の……これやっぱり、手で持ったりできるんですか? かなり大きいようですが。
村田:これ、面白かったのは、ここに細長い池があって、で、その一方にこれが置いてあって、もう一方にはこれが置いてあるんだね。
名古屋:この人、観客が手に持って振り回したりする作品が多いもんで、これもそうかと……。
村田:要するにこれとこれとが対比させてあるんですね、池の両側で。で、こっちのほうはまったく、取り付く島もないようなもので、こっちのほうは男子便所みたいなイメージのなんとなく人が寄っていく作品。みんな「何だろう」って寄っていくんだよね。あと、これは塔の中のビデオ・インスタレーション。これはなんか、場所が勝っているという。これは、レベッカ・ホーンなんだよね。前回と同じく牢獄だった所にインスタレーションしている。これはもう、場所を選んだ者が勝ちだった。あ、これフィッシュリ・アンド・ヴァイス。ガーデンを造った。
村田:「彫刻プロジェクト」といっても、彫刻の概念がずいぶん変わってきている。これがトニー・アウスラー。これが面白かったですね。単に面白かっただけなんですけれども、声に合わせて明かりが明滅するという。これはパイク。前回は、池のほとりに仏像とテレビを対面させた作品出していて、それが、シャレがきいてて非常に面白かったんですけれども、今回は物量で迫っちゃったんで、なんかつまんなかった。ちょっとやりすぎ。それから、これはティラヴァニャ。人形劇をやっている。これはパフォーマンスだなあ。後ろ向きにしか走らない自転車。最近のはやりだな。中野渡かな。中野渡に聞いたら、最近オレの真似するやつが多いんだとか言ってた。これは曽根裕だな。駅前の地下通路でビデオを見せている。バースディ・パーティのビデオなんだけど、まあ、実際の作品はビデオですからね。えーと、これはダニエル・ビュレンヌ。これは毎年2月にこの町でフェスティバルがあるそうで、で、その時にこういう旗を並べるんだけれども、今回はこの展覧会に合わせてストライプの旗を出したら、住民が喜んだっていう……「またフェステイバルだ」みたいな。これは、リチャード・セラですね。無垢の鉄の塊。
名古屋:これはマリー=アンジュ・ギルミノですか。
村田:そうですね。エロチックですね、これは。日本の風俗産業みたいですね。風俗産業、僕は行ったことないですけども。
名古屋:あれ、そうですか。
村田:これは、人のうちの庭なんだけれども、これがミュンスター市のちょうど中心に当たる点で、話を聞けばなるほど、と思うんだけども……まあ、こんなとこですね。
名古屋:ああ、やっぱり行かなくてよかったかな(笑)。ここで見られたから……
村田:写真がいいからな(笑)。(文中敬称略)
ヴェネツィア/ ドクメンタ10/ 国際展総括
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