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アート・ラボ特別展“Lovers”古橋悌二/“frost frames”高谷史郎


高谷史郎「frost frames」
Canon ARTLAB Exhibition at Spiral Garden
frost frames
frost frames
(c)高谷史郎 1998
frost frames
カメラのピントグラスを想起させる正方形の両面加工磨りガラスをスクリーンとして、両方向から別のイメージがプロジェクションされている。このガラスの装置によって、プロジェクションが交錯し、観客はそれぞれ反対側から投射されたイメージを見ることになる。また見ているこちら側を観客自身が遮ってもシルエットは見えず、むしろ反対側にシルエットが映しだされる。この両方向プロジェクションという方法はきわめてシンプルでありながら、スクリーンを単なる映像の再現空間にするのではなく、非物質的な皮膜としての存在を浮上させる(たとえばプラトンの「国家」の有名な洞窟の比喩で想定された装置は、光源に背を向けて壁に映り込む我々の影を見る図式だったが、それはこちら側からだけの影が実在世界の隠喩なり、それによってプラトンは映像自体のもつ皮膜性を覆い隠してしまっている)。「frost frames」では、視覚の二重性の装置を設定することによって、互いに見えない他方の世界へのインターフェース(界面)を映像として作りだしているのである。

磨りガラスに投射される高速で展開するイメージは、1/1000秒という電子高速シャッターで撮影したデジタルイメージを1フレーム(1/30秒)で表示したもので、一方のプロジェクションは風景のアップ、もうひとつのプロジェクションは複数の人間の身体のアップ(すべて移動する車や機械に固定されたデジタルビデオで自動撮影されたままのもので、事後的なエフェクトはかけられていない)が映像素材となっている。
阿部一直四方幸子アートラボ

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